「日出づる國」 評価★☆ 欧米列強に負けるな、文部省教
化映画
1929
文部省 監督:長倉祐孝 総指揮:池永浩久
19分 モノクロ
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文部省の教化映画として製作された一つで、皇国史観に基づく建国、神話、元寇襲来、黒船襲来、日清戦争、日露戦争、昭和の産業化までを歴史映画的に仕立
て上げている。たかだが19分で日本の歴史を示せるわけもないが、外敵の排除という要所を押さえる事によってコンパクトに仕立て上げている。何よりも、今
となって見れば、皇国史観というものが何なのかを知る上で、実に新鮮でわかりやすいものとなっている。
映画の教化主眼は、「(明治)維新後、日本は積極的に外国文化を取り入れ、産業発展に尽くし、世界に名だたる国となったが、それでもなお欧米列強には
劣っている。これまで外敵を排除し、皇国を作り上げてきた日本国民の意地で更に精進しよう」といったところか。
冒頭の建国シーンはさげ美豆良(みずら)を結った弥生〜古代人の姿で登場。なるほど、この時点ではようやく縄文式土器が弥生式土器より古いことがわかり
かけてきた時期であり、さすがに狩猟生活の縄文人で描く事はできなかったのだろう。また、鳥見の土豪ナガスネヒコを悪者に仕立て、天皇家が征伐するのも必
須シーンだ。当然だが、橿原宮に遷宮して皇紀元年としている(もちろん実年代は違うけど)。
元寇襲来では神風を亀山上皇が祈願して吹かせたとする。面白いのは、黒船がやってきて開国した事を「姑息なりし鎖国、徳川幕府三百年軽ちょう浮葉の風巷
に満ちて」と徳川幕府の施政と鎖国を痛烈に批判しているところだ。皇国史観としては幕府体制は悪政の極みと言ったところなのだろう。
日本の近代化シーンでは、川崎八七式重爆撃機のエンジン部分、中島甲式四型戦闘機(ニューポール29)が登場する。欧米列強シーンでは飛行船、ビルディ
ング、パリ凱旋門、ロンドン二階バスが象徴として紹介されている。
なお、総指揮の池永は日活の京都撮影所長だったそうだ。
興奮度★★
沈痛度★
爽快度★
感涙度★
(2005/08/02)
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