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「コレヒドール総攻撃」 評価★★ 比島の米軍要塞攻略記録
1942 監修：陸軍省 制作：比島派遣軍報道部
出演：記録映画
３４分 モノクロ
戦記映画復刻版シリーズ（１０）。本来はもっと長い映画だったのだろうか、DVDで発売されているのは３０分たらずの短編である。残りはコレヒドールト ンネルの記録映像が特典として収められている。映画としてはやや中抜けな感じで、核となる部分がない。戦闘シーンは少なく、フィリピンの風景や陸軍の後方 活動の様子などがメインの戦記と言うよりは紀行といった風合いが強い。
さて、コレヒドール攻略戦は日本軍が行った比島作戦のうち、パターン半島をほとんど攻略し、最後に残った米軍のコレヒドール島要塞を攻め落とした作戦で ある。地下発電所を持つなど強固に固められたコレヒドール島陣地と砲台は約13000人の米軍将兵がいた。対する日本軍は本間中将の陸軍第１４軍配下の第 ４師団が参加した。作戦は1942年の5月3日から7日にかけて陸軍の砲撃、爆撃、敵前上陸によって行われた。この結果コレヒドール要塞に立てこもってい た米軍司令官ウェーンライト中将が降伏して作戦は終結した。なお、ウェーンライト中将の前任マッカーサー大将は事前に家族とオーストラリアに逃亡していた ことで有名である。
冒頭は環境ＤＶＤかと思わせるようなのどかな出だし。フィリピン人女性や市民の姿が見える。フィリピンの人々と景色、たまに日本軍兵士を写しながら、地 図上で南方軍第１４軍の進撃工程を示していく。サンフェルナット→バランガ→デナルピアン、オロンガポ。デナルピアンでは「山本部隊内科病棟」、オロンガ ポでは「長谷川部隊山田隊」の文字が見える。続いてモロンからは船を使っての移動となる。マヤガオ桟橋では兵士の陸揚げ作業が写る。
興味深いことに現地民の居住区が出てくる。「土民居住区。土民居住指定地区ナルニ付・・・軍隊ノ出入ヲ禁ス 昭和一七年二月二八日 垣部隊参謀長」なる 看板が立つ。垣部隊とは第１６師団のことである。
パターン半島を進軍する兵士達の様々な活動が紹介される。前進基地には戦車隊と砲兵隊が陣取っている。通信隊は電柱を架設し電話線を引いている。輜重隊 は弾薬をトラックや人力で運び、工兵隊は木を伐採して道路を作る。また、食糧や水の運搬補給、馬の世話、郵便の送受も出る。郵便の画面では「第３２６移動 野戦郵便所」の看板が見える。
この紹介映像中にいくつもの兵器が登場している。まず、前進基地の戦車は八九式中戦車。カムフラージュされていて良く見えないが、九八式中戦車のキュー ポラら しきものも見える。砲は加農砲（兵器を知らないもので判別できません）らしい砲がいくつも設置されている。通信隊が電柱等の機材を運搬するのには八九式軽 装甲車が用いられている。上空には九七式軽爆撃機や九七式重爆撃機が飛んでいる。
５月３日、いよいよコレヒドール総攻撃が近づく。「主力は淀部隊長」と出る。淀とは第４師団のことである。配 下に第８、３７、６１連隊がいる。
５月５日、男の節句。まずは砲兵隊の一斉射撃が口火を切る。コレヒドール島が徐々に黒煙を上げていく様が写されている。続いて空から九七式軽爆撃機、九 七 式重爆撃機の爆撃が行われる。軽爆は尾翼に二本線の飛行第１６戦隊、重爆は尾翼に太い１本線の飛行第６０戦隊のようだ。いずれも迷彩が施されている。これ らは司令部偵察機からの映像であることが分かる。
敵前上陸を敢行する第四師団はリマイ・ラマオ基地に集結し、23:00の夜間上陸を待つ。上陸用舟艇に乗り込み進んでいく歩兵。22:40援護砲撃が始 まる。
いよいよ戦闘シーンかと期待させておきながら、映像はいきなり破壊されたコレヒドール島砲台に変わる。もう占領してしまったらしい。捕らえられた米軍捕 虜が「捕虜収容所」に入れられている。でも、米兵も海水浴をしたりと楽しそうだ。
実は冒頭からそうなのだが、いかにも後付されたような妙に明るい音楽が流れている。画面の状況とは全く合わないものだ。映画当初からそうなのか、どっか の段階で手をいれたものか。これほど合わない音楽はないだろうに。
ＤＶＤには特典映像としてコレヒドール島要塞の地下施設「マリンタトンネル」の映像が入っている。これは米軍の撮影かな？地下で活動する様子が写されて いる。シャワー設備、ベッド、タイプライター、医療所、女性看護兵。どれも日本軍よりはるかに完備された厚生設備だ。さすが米軍といった感じ。
(2004/10/06)
興奮度★★
沈痛度★★
爽快度★★
感涙度★
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