戦争映画の一方的評論
 
「誰がために鐘は鳴る 評価★★★ スペイン共和国政府を支援する米国人 
FOR WHOM THE BELL TOLLS
1943 アメリカ 監督:サム・ウッド
出演:ゲイリー・クーパー、イングリッド・バーグマンほか  
165分(デジタル・ニューマスター版) カラー 

 1943年のアカデミー賞候補作品。あのヘミングウェイの小説を映画化したもので、フランコ軍と共和国政府軍のスペイン内戦を題材にした腐朽の名作と言 われる。主演はゲーリー・クーパー。お腹を壊したときの代名詞としても有名になった人。今となってはちょっと臭いラブロマンスなわけだが、それでもそれほ ど違和感を感じさせない作りはさすがだ。とはいえ、若き2人の恋物語とするには、ゲーリー・クーパーが年取りすぎ。バーグマン相手におじさんと娘といった 風にしか見えない。
 戦争映画というよりは、メインがラブロマンス映画なので、いちゃいちゃシーンが結構多く、前半から中盤は結構だらけた感じがする。後半のクライマックス はアク ションシーンが登場し一気に盛り上がるのだが。ロマンスの方は、二人が出会ってからたった4日間で大熱愛に発展するものの、ラストの別れ際は意外と冷めて いる。 明日への希望が混沌としている当時と、現代との価値観が微妙にずれているという実感を感じるシーンだ。それにしても、強烈なベッドシーンはないものの、デ レデレとしているクーパーと盲目な愛に没頭するバーグマンは見ていて、こちらが赤面するほどだ。感動的で、理想的なラブシーンというよりは、何も知らない 小娘を言いようにたぶらかしているおじさんと言う風にも見えるのだ。
 ゲーリー・クーパー以外は、スペイン人らしさが炸裂している。ちょっと田舎ものっぽくて、情熱的な「濃い」顔立ちは印象的だ。特に、女頭領役は「かかあ 天下」を彷彿とさせる強烈なインパクト。頼れるおっかちゃんに好感と恐怖?!を覚える。男どもは、楽天的でいてかつ臆病。スペイン人てのはこういう印象な のだろうか。
 登場する兵器はフランコ軍兵器として、ドイツ軍航空機と戦車が登場する。航空機は複葉の爆撃機。戦車は3種類ほど見られるが、ルノーFTタイプ、アメリ カ軍のM1戦闘車、M2戦闘車ぽいものだ。ただ、いずれも微妙にオリジナルとは異なっており、なにを狙って製作しているのかは不明。
 戦闘シーンはラストだけだが、共和国ゲリラ側は基本的に小銃のみなので、派手なアクションは少なめ。フランコ軍側の戦車も登場はするが、ただ車列を組ん でいるのみで派手さはない。印象的なのは、戦車破壊に固執する男が地雷で戦車を爆破するシーン。なんだか、悲しくなってくる。

(以下ネタバレ注意)
 1937年スペイン。共和国政府に反乱を起こしたフランコ軍はドイツの支援を受け、共和国政府軍はソ連やアメリカの支援を受け、激しい内戦が勃発してい た。熱心な共和党支援者のアメリカ人ロベルト(ゲーリー)は、共和国のゲリラ活動を支援するために、列車爆破等の活動に従事していた。次なる任務は、共和 国政府軍の空爆とともに山間部の重要な橋を爆破することとなった。道案内の老人とともに爆薬を背負って山を登っていくと、そこには協力者である共和国政府 側ゲリラのパブロらがいた。パブロはもとは勇敢な戦士だったが、最近は命を惜しんで弱気になっている。代わりに豪快な女房のピラーが指揮を取っていた。ま た、パブロらに命を救われた少女マリア(バーグマン)もいた。マリアは市長の娘で群衆に乱暴され、心の傷を負っていた。
 ロベルトとマリアはすぐさま恋に落ちていった。パブロはそれを苦々しく思っていたが、ピラーはそれを暖かく見守っていた。パブロは、橋の爆破は危険であ り、逃げるための馬が足りないと任務に反対した。しかし、ピラーや仲間に臆病をなじられ四面楚歌に。ロベルトは馬の調達をエルドラドに頼む。しかし、馬の 足跡をドイツ兵につけられたエルドラドらは、奮戦むなしく敵爆撃機の犠牲となってしまう。
 町からやってきた仲間が、共和国政府軍空爆の噂を持ってきた。フランコ軍に情報が漏れているのだ。ロベルトは共和国政府軍の将軍に攻撃を中止するよう伝 令を出した。間に合わなければ橋の爆破は決行せざるを得ない。
 伝令はなんとか将軍の所へ到達するが、一歩遅かった。空爆が始まり、ロベルトらの橋爆破も開始された。待ちかまえていたフランコ軍の戦車に対峙しながら も、なんとか橋の爆破に成功。ロベルトはマリアやピラーらとともに、脱出を図るが負傷。「僕は君の心にずっと一緒にいる」とマリアに逃げろと言い渡し、単 身ドイツ軍の追撃を阻止するのだった。
 そして追悼の鐘が鳴る。

(2005/01/31)

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★★

DVD検索「誰がために鐘は鳴る」(楽天)