戦争映画の一方的評論
 
富士に誓ふ−少年戦車兵訓練の記録− 評価★★★ チハの操縦訓練風景 
1943 日本映画社 監修:陸軍機甲本部
出演:記録映画  
58分 モノクロ

 戦記映画復刻版シリーズ第7弾の戦争記録映画。富士にある陸軍少年戦車兵学校の訓練の記録である。陸軍少年戦車兵学校は昭和17年8月に静岡県富士郡上 井出 村に開校し、少年戦車兵は14歳から19歳の少年が2年間の訓練を行う。少年戦車兵そのものは千葉の戦車学校時代から始まり、1期から7期生までおり、1 期生は150名だが、最も多い5期生は900名もいる。保有戦車は全盛期で80両余りあったらしい。

 入学したばかりの1年兵は基礎体力訓練ばかりやらされる。教官からは「そんなんではいつまでたっても2年生のように戦車に乗れないぞ」と罵倒される。座 学では、「物理学教室」で戦車のエンジン原理について学習している(でもそれって物理学?)。
 一定の期間を経ると、いよいよ実車の乗車になる。最初は2年生の操縦する九七式中戦車(チハ)に同乗することから始まる。教官の「どうだった」の問に、 「すごい騒音にただただ驚くばかりでありました!」の返答。この映画の時期(二期か三期生くらいと思われる)は操縦、射撃などの分科にはなっていないよう で、射撃訓練ではレール上に設置された砲塔射撃装置上を同級生が押しながら射撃の的に小銃で射撃して訓練している。操縦訓練はトラックの運転から。トラッ クの運転ができれば戦車の操縦も簡単であるとか言ってるけど、そんなことはないでしょう。また、整備訓練ではエンジン音を聞き分けて不具合の箇所を学習し ている。
 いよいよ実車での基礎操縦訓練となる。課目は1発進停止、2直行進、3方向転換。最初のうちは直行も難しいが、次第にジグザク行進など高度な操縦を取得 していく。ジグザク上に設置されたポールをキャタピラにからませて怒られる生徒の姿もある。「大きく操作するからいかんのだ。もっと小刻みに操作しなけれ ばならない!」
 チハ戦車のエンジン音は「グオン、グオン、グオン」といった感じで大型トレーラーのようである。この音を聞けるだけでこの映画の評価は高い。
 正月休暇は約一週間。親元に帰った一生徒を追跡取材。弟や家族に自慢する生徒の声や話しぶりはまだまだ子供である。
 いよいよ応用操縦訓練となる。起伏地面や対戦車壕の乗り越え、隊列行進などである。車内の操縦窓から見た起伏地面の登坂場面はなかなか見物である。生徒 の最後の仕上げは、富士演習上での総合戦闘訓練である。南軍(静岡側)と北軍(甲府側)に分かれての実戦訓練である。対戦車砲、敵戦車との遭遇戦に登場す る戦車数十台はなかなか見物だ。数少ない発射シーンもある。これまで登場する戦車はみな九七式中戦車である。
 あと、最後に講評を述べる大佐(校長かな?)の鼻髭がすごいね。上にカールしちゃってるのはさすがに日本陸軍ですな。

 実戦シーンはないものの、戦車という迫力ある対象物のためなかなか見応えがある。また、戦車兵訓練の様子を映像で見ることができる貴重なフィルムという 点でも価値は高いだろう。

 ちなみに学校卒業の3期生以降は「兵長」として下士官候補として戦場に送られたそうだ。昭和20年4月バギオにおけるイリサン戦車特攻作戦の戦車乗務員 の半数が少年戦車兵であったことは有名である。
(2004/09/27)

興奮度★★★
沈痛度★
爽快度★★★
感涙度★

富士に誓ふ 少年戦車兵訓練の記録富士に誓ふ 少年戦車兵訓練の記録 DVD

関連図書 

少年戦車兵物語
著者:西田進二
出版社:近代文芸社
本体価格:1,553円

関連HP
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