戦争映画の一方的評論
 
「海軍戦記 評価★☆ 昭和17年の海軍戦果記録 
1943 日本映画社 監修:海軍省
出演:記録映画  
48分 モノクロ

 昭和18年の海軍記念日に公開された、戦意昂揚プロパガンダ映画。1942年製作の「帝国海 軍勝利の記録」の続編だが、陸軍省製作のものに比べて総じて出来が悪い。特に、本作はすでにミッドウェー海戦で空母四隻を失い、さらにソロモン海 戦等で一定の戦果をあげつつも、旗色が悪い事を軍当局は知っている時期であり、誇大な戦果報告と、虚偽の映像づくりに奔走しているのがわかる。従って、戦 記物として見た場合、映像と史実の一致度合いは劣っており、なおかつ、史実を追っているかのようなストーリーも支離滅裂となっているため、戦記的価値は低 いと言わざるを得ない。
  取り上げられている戦闘は、昭和17年に入ってから夏過ぎまでの、海軍陸戦隊によるラウル島占領、ニコバル諸島占領、海軍落下傘部隊のセレベス島降 下、オーストラリアポートダーウィン爆撃、潜水艦による米本土爆撃、アリューシャン列島キスカ島上陸、ソロモン諸島ツラギ上陸、ナウル島占領、ソロモン海 戦となっている。当然の事ながら、ミッドウェー海戦は全く触れられていない。陸軍以上に海軍の検閲は厳しかったようで、これだけ事実を覆い隠すと、ストー リーなどあったものではないことは頷ける。
 戦記物の楽しみでもある、登場兵器類だが、私は艦船類の知識に乏しいため、艦船については艦名識別できなかった。それ相応に、金剛級戦艦の類と重巡、駆 逐艦が登場する。特に、金剛級戦艦の主砲発射シーンが度々登場するのだが、どうも実戦と言うよりは演習風景のような気がする。空母がほとんど登場しないの は、ミッドウェーで失っているので当然か。この他、潜水艦が少々登場する。
 航空機の類では、一式陸攻が多く登場する。ポートダーウィン空爆シーンでも多く登場するのだが、尾翼の部隊識別マークを見ると、相当数の部隊が混在して いる。どうも、あり合わせの一式陸攻の映像をかき集めたように思える。ちなみに、識別できたマークでは「W2(752空)」「F(四空.702空)」「T (高雄空,753空)」「K(鹿屋空.751空)」のほか、記号なしの機番のみ(705空など)、無マークなどがある。W2については昭和18年に入って から使われたのではないかと思うのだが、新しい映像を突っ込ん だのかもしれない。なお、後半の映像で、一式陸攻内からの英軍戦闘機との空中戦シーンがあるのは特筆物だ。
 零戦等の戦闘機類映像はほとんどない。零式水上偵察機が射出されるシーンがある程度。意外なものとしては、キスカ島上陸作戦の映像として二式大艇が出て くる。尾翼には「O-31」のマークが見える。また、九九式艦爆も登場する。尾翼マークは「BI-235」と読めるので蒼龍搭載機か。
 本作のエンディングには昭和一七年までの戦果が報告される。対連合軍艦船の撃沈戦果について、戦艦11隻、空母11隻、巡洋艦46隻、駆逐艦48隻、潜 水艦他141隻、輸送船等船舶416隻、航空機3793機以上。そして、日本軍の被害については触れられない。
  
興奮度★
沈痛度★★
爽快度★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ一応注意)

特になし

(2005/05/02)
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