「激戦地」 評価★★★ イタリア・サレルノに
上陸したテキサス師団の小隊
SALERNO BEACHHEAD A WALK IN THE
SUN
1946
アメリカ 監督:ルイス・マイルストン
出演者:ダナ・アンドリュース、リチャード・コンテ、スターリング・ホロウェイほか
117分 モノクロ
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ハリー・ブラウンの実体験小説「サレルノ・ビーチヘッド」の映画化作品。南イタリアに上陸したアメリカ陸軍テキサス師団(第36歩兵師団)の小隊が指揮
官を失いつつも、目標の農家奪取
までを描いたものである。戦後直後の作品であり、登場人物や兵器類にリアリティを期待したが、本作は全く毛色の違う作品であった。監督は「西部戦線異状な
し」のルイス・マイルストンで、彼らしい独自の映像観となっている。
ルイス・マイルストン監督は、ソヴィエトからアメリカに帰化した人物であり、ソビエト映画の影響を強く受けているのだろう。ソビエト芸術記録映画に見ら
れるような叙情詩的な映像も多く、特に太陽と光を意識的に用いているのが特徴だ。また、戦争アクションはかなり少なく、兵士同
士の
会話や心情吐露が中心となっており、アメリカンジョークも多用したコメディ調ヒューマンドラマといった感じである。ストーリーの全体的な流れから言えば、
シリアスとも取れなくもないが、やはり兵士の多弁に特徴があると言えるだろう。それだけに、戦場のリアリティと言った面ではやや劣り、いかにもテレビドラ
マ「コンバット!」の映画版と言った感じであり、映画「最前線物語」とも似ているかも知れない(もちろん最前線物語の方はシリアスだが)。
さらに、音響効果や暗めで間接的な映像はサスペンス的な雰囲気も醸し出している。特に、冒頭の小隊長の中尉が顔を負傷するシーンが暗くて良く見えない、
つまり「想像しろ」という監督の意図が見えてくる。いわゆるモンタージュ技法なのだとも言えなくもないが、制作費がチープであったことの裏返しとも受け取
れ、海上の艦船や激戦となっている
浜辺の映像シーンは一切登場せずに、黒煙だけで誤魔化している。
本作のメインは兵士間の会話と心情であるが、登場人物それぞれのキャラクターが良く出ており、わかりやすい。特に、機関銃手のリヴェラ一等兵とフリード
マ
ン一等兵の会話は、アメリカンジョーク連発で面白い。牧師の息子や農家出身軍曹の心情吐露も興味深いが、内容がディープすぎるかも知れない。また、戦争映
画として見た場合、重責に潰されて泣き崩れる第3位指揮官のポーター軍曹、その代わりを務めるタイン軍曹などの行動はちょっと脚色が強すぎるような気がす
るし単純すぎる。いかにも、戦場の兵士の心情を描いているようでありながら、小説・映画受けするように、意図的に作り上げたようにも見えるので、ちょっと
興ざめ。
戦闘シーンそのものについてはかなり適当。冒頭に上陸用舟艇シーンがあるが、暗い映像の中で本物かどうかすらわからない。激しい戦闘となっている(は
ず)の艦砲射撃や航空機攻撃、さらには激戦と化している(はず)の浜辺は一切登場せずに、黒煙と爆音だけで描かれるのみ。この映画は兵器が一切登場しない
のか、と落胆させるが、実は数は少ないがきちんと出てくる。ドイツ軍機役としてはP−51ムスタング、米軍機役はP−38ライトニングが登場する。ただ
し、かなり遠方の小さな映像でミニチュアにも見えるが、どうも実機映像らしい。すごい速さで画面を右から左に抜けていくのはリアルだ。ちょっともったいな
い使い方。
AFVではドイツ軍装甲車が1台登場。アメリカ兵の手榴弾攻撃で横転してしまう!のだが、これはどうもアメリカ軍のM3半装軌装甲兵員輸送車の改造と思
われる。フロントグリルはそのままのようだ。この他、撃破されて燃えるII号戦車が登場。しかし、一瞬見える転輪が見たことないようなものであることと、
ただ燃えるシーンだけなので模型ではないかと思われる。
全体として、近年のリアル型戦争映画と比べると、やや冗長であり、ストーリのまとまり具合も余り良くない。ただ、ルイス・マイルストン監督の独自の映像
観と、モンタージュ技法的な一風変わった戦争映画の一スタイルとして見るには興味深
いものがあろう。戦争直後だけにリアルさを求めていない、いかにも昔の作品らしい映画である。
興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
1943年9月11日、南イタリアのサレル
ノ海岸に米第36師団(テキサス師団)が上陸作戦を敢行した。そのうちのある部隊で上陸用舟艇上で小隊長(中
尉)が敵砲弾で顔を損傷。代わりにハルヴァーソン軍曹が小隊を率いる事となり、大尉(大隊長?中隊長?)との連絡にむかう。
それまでの間、上陸地点で塹壕を掘って待機
状態の小隊は完全に孤立し、命令指揮系統が不在であった。
ハルヴァーソン軍曹が帰ってこないため、代
わりに第三位となるエディ・ポーター軍曹が指揮を取る。ポーター軍曹はハルヴァーソン軍曹の帰還を待ち続ける
が、敵戦闘機の攻撃を避けるために森の中へ隠れることにする。ビル・タイン軍曹だけがその場にとどまり、ハルヴァーソンの帰還を待った。そこに海岸で中尉
の看護に当たっていたマクウイリアムズ衛生兵がやってきて、中尉とハルヴァーソン軍曹の死亡を伝える。さらに、戦況を見に行ったマクウイリアムズが敵機の
銃撃で戦死する。
一方、森の中でも敵機の銃撃でホスキンズ軍
曹らが負傷。ポーター軍曹はハルヴァーソン軍曹の戦死を知って、作戦目標である内陸部の農家の占領を決意す
る。第一分隊長にクレイマー伍長、第二分隊長にウォード軍曹、第三分隊長にタイン軍曹とし、アーチムボーとカズンスが斥候兵となった。
小隊は道路上を進んで行くと、敵機の銃撃に
遭遇し、一名が死亡する。負傷したスミスはその場に置いて、こんどは小隊は水路を進んでいく事にする。する
と、向こうからやってくるイタリア兵に遭遇する。ドイツ軍から逃げてきたという。通訳のトラネッラが状況を聞くと、この先にドイツ軍と戦車がいるらしい。
小隊はイタリア兵をその場に置いてさらに進むと、友軍の偵察バイクとジープに出会う。先の偵察を彼らに頼むが戻ってこない。
小隊は休憩を取るが、重責に押しつぶされて
きたポーター軍曹の様子がおかしくなる。もはやポーター軍曹が指揮する事は無理となり、タイン軍曹が指揮を取
る事に。そこに、ドイツ軍の装甲車がやってくる。タイン軍曹は手榴弾で横転させることを計画し、見事装甲車を撃破する。一方、先行に出したバズーカ砲隊は
敵戦車を撃破してくる。
いよいよ目標の農家に到達する。ウォード軍
曹は部下を連れて偵察に向かう。しかし、農家にはドイツ兵が潜んでおり三挺の機関銃射撃で部下が2名死亡す
る。途方にくれたタイン軍曹だったが、ウィンディの進言で川へ回って橋を爆破する作戦を決意する。決死の作戦で多くの死傷者を出しながらもなんとか農家の
占拠に成功する。
(2006/03/06 2009/3/25修正)
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