戦争映画の一方的評論
 
「二世部隊 評価★★★★ アメリカ軍日系人部隊の活躍 
GO FOR BROKE!
  1951 アメリカ 監督:ロバート・ピロッシュ
出演:ヴァン・ジョンソン、レイン・中野、ジョージ・三木ほか  
92分 モノクロ 

 第二次世界大戦時、日本の真珠湾奇襲攻撃により、アメリカの日系人への不当な人種差別が行われたことは有名だが、その陰で日本人二世の部隊が米軍として 多くの血を流したことは余り知られていない。この映画は、その日系人志願兵部隊第442歩兵連隊と、ハワイ日系人部隊第100歩兵大隊のヨーロッパ戦線で の活躍を描いた秀作である。
 出演は本物の442連隊の生き残り日系人で、映画中の会話も正確な日本語を用いている。後のアメリカ映画でのいい加減な日本語とは訳が違う。実にリアル な日本人部隊であり、音声を消してみれば日本軍と見まがう程である。内容もかなりの部分が史実に合っているのも高評価。
 442連隊は日系人の志願兵であり、将校に日本人はほとんどいない。従って、将校は皆白人となるわけだが、当然の事ながら話の展開は、白人将校の日本人 蔑視が中心となる。勇敢に活躍する日本人に、徐々に認めざるを得なくなってくるわけだが、差別とはいえ、決して暗いイメージではない。それも、ハワイ出身 の日系人が多く、陽気で明るい雰囲気があるからだろう。ユーモラスな展開と言っても良い。日系人が話す「バカタレ」は傑作だ。捕まえたブタをかわいがる小 柄のマサミの存在もホットだ。
 中国人がカンフー使いと思われるのと同様に、日本人は柔道の達人とされているようだ。映画中で上官や敵兵を柔道技で投げ飛ばすシーンはなかなか爽快だ。
 歩兵連隊のため登場する兵器は銃がメイン。戦車がほんの一部登場するだけだ。戦闘シーンはまあまあの出来。素晴らしくリアルというわけではないが、貧相 でもない。ただ、かなりの長期に渡る期間を映像化しているため、カットが飛びすぎて史実を追いにくいのが難点。もう少し、個別の事象に掘り込んでいると面 白いだろうと思った。また、数人の日系人兵にターゲットを絞って話が展開しているが、やはり主役は白人将校で日系人は脇役かなって思わせるところはちょっ と残念。

(以下ネタバレ注意) 
 日米開戦後、日系人は強制収容所に隔離され、人種差別を受けていたが、1943年に日系人二世の志願制度が可能となる。この部隊は本土の日系人二世を中 心に第442歩兵連隊として組織され、すでにハワイの日系人現役兵を中心として組織されていた第100歩兵大隊とともに初の日本人アメリカ軍となった。彼 らは「ブッダ・ヘッド(仏頭)」とも呼ばれていた。
 しかし、敵国である日本人であるうえ、背の低い黄色人に対する偏見は強く、実戦に歓迎されることはなくミシシッピ州で訓練に明け暮れるのだった。当然、 志願兵ばかりの日系人部隊に日系人士官はほとんどおらず、結果白人の士官が任官せざるを得なかった。オハラ軍曹以下の小隊にはテキサス出身のグレーソン少 尉が小隊長となった。グレーソン少尉はすぐさま他部隊への転任
を申し出るが、却下される。不満感と日系人への侮蔑を込めながらも日系人に厳しい訓練を課す。
 日系人は腹が立つと「バカタレ」と言うが、少尉にはその意味がわからず、ほめ言葉だと嘘を教わる。また、格闘術の訓練では逆に柔道技で投げられてしまう など、日本人がなかなか理解できない。
 そんな中、第442連隊は1944年6月ついにヨーロッパ戦線へ参加することとなる。最初の戦闘地はイタリアの激戦地アンツィオであった。先にアフリカ 戦線に派遣され、勇猛果敢さを絶賛されていた第100大隊とも合流し、第5軍第34歩兵師団に編入される。間もなく、ドイツ軍との実戦に入り、戦死者を出 していく。ある街で小休止をしている際に少尉は地元イタリア女の家に上がり込む。しかし、部隊は急な移動で少尉を呼ぶのを忘れてしまう。あやうく、無断離 隊で軍法会議に処されるところだった。しかし、この一件以降徐々に少尉と日系人部下の絆は深まっていく。
 第442連隊は先鋒としてドイツ軍を追撃していくが、その勇猛さの引き替えに多大な犠牲者を出す。部隊がフランスに転戦したとき、連隊はテキサス師団 (第36歩兵師団)へ所属替えとなる。もとよりテキサス師団への転任を希望していた少尉は晴れて司令部付きとなるが、その時には日系人部下と深い絆ができ ており、テキサスの友人であった軍曹が日系人を「ジャップ」呼ばわりした際に殴り飛ばす程であった。グレーソン少尉の後任は軍曹から昇格したオハラ少尉と なる。
 第36歩兵師団はフランスのボージュ山地に陣取るドイツ軍と対峙するが、司令部付き砲兵指揮官として参加したグレーソン少尉を含む部隊がドイツ軍に囲ま れて孤立してしまう。その救援に指名されたのが第442連隊のオハラ少尉らであった。勇猛果敢に前進するオハラ少尉は敵砲弾に倒れる。代わってサム軍曹が 指揮を取る。また、ドイツ兵に電話線を傍受された際に、日系人通信兵が「日本語で話をしろ」と機転をきかせるシーンもある。日系人部隊は、多大な死傷者を 出しながらも、ついにグレーソン少尉らと合流し、テキサス師団兵を救出する。
 この後も第442連隊は莫大な死傷者を出しながらも、群を抜いた戦績を残し、米軍中最も多くの感状と勲章を授与されている。
 
(2005/02/17)

興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★★★★★
感涙度★★★

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非常に参考になるHP
二世物語物語Hawkeye大尉の野戰病院さんHP)