戦争映画の一方的評論
 
「封鎖作戦 評価★★★ オンボロ駆逐艦の軍港封鎖作戦 
THE GIFT HORSE
1952 イギリス 監督:コンプトン・ベネット
出演:トレヴァー・ハワード、リチャード・アッテンボローほか  
100分 モノクロ

 第二次世界大戦中、イギリスの輸送船団がドイツのUボートに悩まされていたイギリスに、アメリカ軍が駆逐艦を供与した史実を背景にした映画。まだアメリ カが直接参戦せず、武器供与のみを行っていた時代だ。海戦シーンも実写を交えて迫力があるが、オンボロ中古駆逐艦の艦長になった真面目な男とその部下たち の心情の変化というものがメインとなっている。戦後間もない頃の製作でもあり、軽々しい作りではなく、かなりシリアスな内容となっている。後半は、特命作 戦の遂行を決行するなどのアクション性も楽しめる。イギリス映画にありがちな説明苦しさもあまりなく、全体として良くまとまっている佳作。
 艦長は堅物で規則に厳しいが、責任感も強い。若い士官は段々と自らの責任を認識し、鍛えられていく。不満いっぱいの下士官、兵らは徐々に一致団結してい く。という後世海軍もの映画のお決まりパターンの走りとも言えるが、逆に海軍ではこうした出来事が一般的であり、かつ重要なことであったとも伺える。
 登場する艦船は4本煙突の防盾型単砲の駆逐艦。この時期ならば現物がまだ健在であったと思われる。対空戦シーンはかなりリアルなので、実写記録も交えて いるのではないかと思われる。
 なお、この映画は英海軍ものなので、登場人物の階級がややこしい。以下のHPを参考にしてして記載しました。
登場人物一覧(by IMDb)
海軍の階級呼称あれこれ(ぜ に坊さんHP)
 ところで気になるのですが、ドイツ軍港封鎖に向かう途中、英軍駆逐艦がドイツ鈎十字旗を掲げて偽装しているのだが、こういう偽装はジュネーブ条約上まず いんじゃないのかなあ。それに、ドイツ軍捕虜になったあとに、ちょっとこづかれて英兵が「ジュネーブ条約上捕虜の扱いを守れ」とか言うのだが、偽装してき たのだからスパイ扱いで正統な捕虜として扱う必要はないのではないかとも思ったのだった。どうなんでしょ。


(以下ネタバレ注意)
 1940年、アメリカから旧式の駆逐艦50隻がイギリス海軍に譲与された。引き渡し港、カナダ、ノバースコティア州ハリファクス港で、「ウイッティア 号」にフレーザー艦長(少佐)以下100名のイギリス兵が乗船した。艦長は8年ぶりの乗船。100名のうち士官は4名、下士官は14名という経験不足の感 は否めないメンバーだ。その一人フラナガン三等水兵はアメリカ人だが志願兵であり、艦長の従兵となった。オンボロ駆逐艦は水兵から「ギフト・ホース」と呼 称され、迷惑な贈り物として不平を漏らされる。そのとおり、エンジン故障などの不具合が続出するのだった。
 フレーザー艦長は規律に厳しく、服装、清掃が乱れていると上陸禁止を命じるなど、部下は不満一杯。加えて、護衛輸送船を見失ったり、防潜網を破ったりと ミスも重なって無能艦長呼ばわりされる。
 実はフレーザー艦長は8年前に僚艦と衝突事故を起こしており、一方的にその責任をとらされて退役していた。しかも、その僚艦の艦長だった男は現在の艦隊 司令官(大佐)となっていることも遠因であった。副官=ナンバーワンのジェニングス大尉は、艦長がなかなか自分を認めてくれようとしないことに苛立ちを覚 えながらも 艦長を補佐する。
 フラナガン三等水兵は寄港先のロンドンデリー港で港の女と結婚する。また、元組合活動家のダニエル水兵は母親の病気で一時帰国したりと水兵の間でも悲喜 こもごも の出来事がある。
 ある哨戒任務の際に、航海士グラント大尉のミスで海底の難破船に激突破損してしまう。原因調査を受けるが、フレーザー艦長は言い訳をせず、大尉の責任を 全部自分がかぶる。結局、フレーザー艦長は軍法会議にかけられることに。しかし、軍法会議は無罪となり、部下達は艦長への信頼を深めていく。
 ある出撃でギフト・ホースはUボートを撃沈する。フレーザー艦長は功績により中佐への昇進と新鋭艦への栄転を司令官に勧められるが、断る。一方、ジェニ ングス大尉は提督の娘と結婚する。その結婚式の最中、フレーザー艦長の息子の戦死公報が届く。しかし、艦長はそれを誰にも知られないよう耐えるのだった。 また、フラナガン三等水兵もまた、結婚したばかりの妻と子を空襲で失っていた。
 いよいよ、ギフト・ホースの最期の出撃がやってきた。ドイツ軍港の封鎖作戦に捨て身の攻撃をかけるのだ。水雷艇18隻を従え、夜霧に紛れて軍港に突入す る。激しい応戦を受けるが、見事にドックに突入した。生き残ったフリーザー艦長らは、撤収用の水雷艇が皆沈没してしまったため、やむなく上陸しドイツ軍の 捕虜となる。しかし、3時間後に仕掛けた駆逐艦艦首の爆薬が大爆発し、作戦は成功したのだった。

(2005/01/06)

興奮度★★★ 
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★★


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