戦争映画の一方的評論
 
「戦艦大和 評価★★ 戦艦大和乗組員の最期
1953 新東宝 監督:阿部豊 
出演者:和田孝、佐々木孝丸、藤田進、高島忠夫ほか
104分 モノクロ


 戦後まもなく発行された吉田満著「戦艦大和の最期」をもとに製作された、当時としてはスケールの大きい戦記映画。現代の特撮技術から見れば、かなり劣る とはいえ、ミニスケールの戦艦大和模型を用いた戦闘シーンがウリである。吉田満の著はそれまで隠されてきた、戦艦大和の最期をセンセーショナルに知らしめ たものであるが、その後の様々な調査によって若干食い違いも生じているようである。また、吉田氏自身が士官であったため、本作も士官中心の視点によるもの となっている。
 本作は吉村少尉=吉田満氏の視点を中心に作られているのは致し方ないが、短い時間に全てを盛り込むのはやはり困難なようで、大和出撃に至るまでの経緯は 極力省略されているし、戦闘シーンも局所的な描写であり、沈没間際もかなり省略されている。士官の確執等に比重がかけられすぎている感があり、全体的にま とまりが悪い印象がある。
 役者陣は藤田進、高島忠夫など名優を揃えてはいるが、本来主役となるべき面々のインパクトが弱い。もう少し、クセのある骨太の役者を据えれば、映画に強 弱が付いたのではないかと思う。それだけ、のっぺりとした展開となっている。

 先にも述べたが、戦闘シーンはミニチュア大和と模型戦闘機を中心に描かれている。当時としては頑張ったのであろうが、やはり大和の砲塔アップや射撃シー ンは見るに堪えない。ガクガク動く砲塔や、あっちこっちに向かう火花は今ひとつ。艦内のセットも、それなりに作り込んではあるが、今のレベルから見れば簡 素なイメージ。敵機はミニチュアと記録映像のミックスとなっている。
 戦艦大和を取りあげた作品として、メモリアル的映画として高く評価はされるが、内容的にはもう一歩物足りなさが残った。

興奮度★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 昭和20年3月下旬、戦艦大和を中心とした第2艦隊で沖縄に突入する「天一号作戦」の実施が決定された。大和は艦長有賀大佐、副長能村大佐、軍医長山田 少佐以下、若き士官らに吉村少尉、カリフォルニア生まれの中谷少尉、西田少尉、高田少尉、江口中尉らがいた。
 3月28日、呉港を出航するが、艦長は乗船して日の浅い予備士官35名や老兵ら予備役を退艦させることとした。片道燃料の特攻作戦で無駄死にさせること はないという配慮からだった。甲板士官として厳しく接した江口中尉らと予備士官、老兵らは言葉をかわして退艦していく。
 いよいよ、第2艦隊司令長官伊藤中将と草鹿参謀長が乗船し、寄港地を出航する。出撃は大和の他に、巡洋艦矢矧、駆逐艦冬月、涼月、雪風、霞、磯風、浜 風、朝霜、初霜で、大和乗員は3,332名である。まだ平穏なうちに兵らは宴席を持つ。吉村少尉は分隊士として部下と飲むが、その中にはまだ少年のような 兵、山添がいた。酒が飲めないという山添に吉村はキャラメルを与える。軍医長の山田は出撃前に18歳の娘と結婚していたが、出航前の手術で逢う事ができて いなかった。また、片平兵曹も同じく1日違いで妻に会う事ができなかった。そうしたドラマを各々が持ち合わせながら大和は出撃する。
 出撃後まもなく、中谷少尉が米軍の通信を傍受する。大和出撃を察知しているのだ。次第に敵制空圏内に入ると、上空に敵機の爆音が聞こえ始める。4月7 日、雲が低く垂れ込めた対空戦闘には都合の悪い日よりの中、ついに大和の電探が敵大編隊を捉える。
 激しい敵機の雷爆撃で、西田少尉、高田少尉、軍医長、中谷少尉と次々に戦死していく。吉村少尉は山添を伝令に使わすが、山添は敵機銃が怖くて動けない。 それを励まして伝令にやる。
 ついに舵がやられ、注水指揮所もやられて大和は航行不能に陥る。艦長はもはやこれまでと、総員最上甲板にあがれの命令を出す。司令長官は自室に籠もり、 艦長は指揮所に体を縛り付けて艦と共に運命を共にする。副長らは海中に飛び込むが、そこを米軍の機銃掃射が襲う。しかし、それをやっと生き延びた山添らも 次第に海中に没していくのだった。

(2005/10/21)

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