戦争映画の一方的評論
 
「君死に給うことなかれ 評価★ 被爆という悲劇を乗り越えるメロドラマ
1954 東宝 監督:丸山誠治 
出演:池部良、司葉子ほか 
99分 モノクロ

 戦争映画かと思って視聴したが、思いっきりメロドラマであった。しかも、もう見るに堪えないほどのベタベタ純愛ものときた。加えて、この時代の演出や演 技、恋愛観は、今とは全く違うのだというカルチャーショックをひどく受けた。主演の青年、亘役の池部良は後の石原裕次郎や小林旭につながるような男っぽい というか、今で言えば傲慢でデリカシーのないタイプ。一つ間違えばセクハラ、女性差別とも取れるような言動は見ているこちらもハラハラするほど。一方、マ ドンナ久美子役の司葉子はこの作品がスクリーンデビューなんだそうだが、頑なでイジイジしていて男に尽くすようなタイプ。なかなかうまく交際が進まず、ま るで今のドロドロ昼ドラを見ているような感じがする。
 一応戦時中から戦後までを舞台にしており、亘は徴兵で戦地に行くし、久美子は広島で原爆に被爆する設定だが、そのあたりの映像は一切出てこない。政治的 な背景もまったく感じられないし、本当に純粋な恋愛映画なのだ。唯一陸軍中尉役で登場する友人の軍服姿と、空襲待避シーンが戦時下であることを示してい る。
 それにしても、亘はいつも久美子のもとへうろちょろとやってきて、仕事をしている雰囲気はないし、結構突っ込み所もあるのだが、こういう作品を作らせる 時代背景というものを感じながら見るのも一興かもしれない。あと、池部の走り方ちょっと変。
 

興奮度★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★

(以下あらすじ ネタバレ注意)
 
 第二次世界大戦末期の東京。大学の研究者(学生?)の藤森亘(わたる)(池部)は母親が入院している病院を見舞う。そこで母親の介護をしている看護婦の 堀久美子(司)と出会い、次第に二人は恋心を抱いていく。
 亘の親友である陸軍中尉の小島は前線勤務を前にたった一人の妹礼子の身を心配しており、亘に嫁に貰ってくれるよう頼み込む。それを知った傷心の久美子は 故郷の広島へ帰る事を決意する。
 久美子の帰郷する列車に飛び乗った亘は、強引に久美子に求婚し、結婚の約束をする。しかし、亘招集の電報で別れなければならなかった。
 それから5年の歳月がたち、久美子は広島で被爆。顔にケロイドを負い、体の具合も良くなかったため、人目を避けて密かに乳児院で働いていた。院長の勧め で久美子は東京の病院で被爆治療を受ける事を決意する。検査の結果、脾臓が腫れており白血病の恐れがある事を知ってしまう。さらに、病院で雑誌取材をして いた礼子と遭遇し、礼子と亘が婚約していることも知る。
 亘は戦後ずっと久美子を捜していたが、行方がわからなかったのだ。礼子は亘の心が自分にないのを知っていたため、亘に久美子の居場所を教える。しかし、 久美子は再び行方をくらませてしまう。亘が訪れた乳児院の院長は、そってしておいてやれと行き先を教えなかったが、亘の熱情についに折れ、久美子が信州の 病院にいることを教える。
 信州の久美子のもとを訪れた亘に、久美子は動揺を隠しきれない。傷跡の残る顔と被爆症の身では亘の愛情を受け入れられなかったのだ。一旦は亘の愛を受け 入れた久美子だが、夜中に湖で入水自殺を図る。間一髪のところを救った亘の愛に、ようやく久美子は生きる希望を見いだすのだった。
 
(2005/09/02)

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