「潜水戦隊帰投せず」 評価★★☆ 水中ボートと超小型潜水艦に
よる独軍戦艦肉薄攻撃
ABOVE US THE
WAVES
1955 イギリス 監督:ラルフ・トーマス
出演者:ジョン・ミルズ、ジョン・グレッグソン、ドナルド・シンデン、ジェームズ・ロ
バートソン・ジャスティス
ほか
95分 モノクロ
DVD検索「潜水戦隊帰投せず」を探す(楽天)
第二次世界大戦時のイギリス海軍において、実際に行われた水中ボートや小型潜水艦によるドイツ軍艦攻撃作戦を描いたドキュメンタリー風戦争映画。ジョ
ン・ミルズによる主演で、若干の脚色や仮名等の変更は見られるが、概ね史実に沿った作りとなっているようだ。本作で題材となっているのは、「タイトル作戦
(Operation
Title)」と「ソース作戦(Operation
Source)」の二本で、いずれもイギリス海軍の特殊小型艇を使用した肉薄攻撃作戦である。
タイトル作戦とは1942年10月に実施されたもので、ノルウェーに停泊中のドイツ軍ポケット戦艦テルピッツを攻撃するため、2隻の小型水中ボート
「シャリオット(Human torpedo)」が漁船"Arthur"に括り付けられて出撃したもので、荒天に
より作戦は失敗し、"Arthur"を自沈させ10名のフロッグマンがノルウェー海岸に上陸。うち1名が射殺されるも9名が中立国スウェーデンに逃げ込ん
だ作戦である。
ソース作戦は1943年7月に実施されたもので、超小型の潜水艦X-class
submarine(HMS X5, X6,
X7)の3隻がノルウェーに停泊中のテルピッツを攻撃し、損傷を与えて6ヶ月間戦列を離れさせた作戦である。Xクラス潜水艦は4人乗りで、魚雷攻撃するの
ではなく、時限式機雷を投下して離脱するためのもののようだ。
いずれもかなり特殊な兵器と任務であり、「生
き残った
二人(1955
英)」で描かれるカヌー攻撃も含めて、何とも小賢しいことをやっていたものだと感心する。それだけ、ドイツ海軍の軍艦やUボートに手を焼いたということな
のだろう。
ジョン・ミルズはこの特殊作戦の隊長(中佐)役で、ちょっと男気のある士官として好演技を見せている。このほか大尉、下士官、水兵が登場するが、比較的
淡々と物語が描かれていくので、作戦実行に至るまでの過程や、作戦実施時の緊張感や悲壮感というものは余り伝わってこず、ヒューマンドラマ的要素は薄い印
象。
アクションシーンも水中ボートや超小型潜水艦の現物を使用するなどリアリティはあるものの、爆発や攻撃シーンなどの派手さはほとんどない。戦争アクショ
ンとしては期待はずれの部類か。このほか、超小型潜水艦を曳航する潜水艦やテルピッツ役の水上艦も登場するが、ほとんど全景が映らないので何者かは不明。
全般にレアな題材を扱っているという点では興味深いが、インパクトや盛り上がりという点では今ひとつ。ドキュメンタリー的な雰囲気の強い映画であった。
(参考)
HMS Thrasher (X5; flag
of the operation's commander, Lt. Henty-Creer)
HMS Truculent (X6)
HMS Stubborn (X7)
興奮度★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
イギリスはドイツ軍のUボートや戦艦等による通商破壊破壊活動に手を焼いて
いた。そんな
中、海軍フレイザー中佐は自分の潜水部隊を活用した作戦を提案する。それは二人乗りの小型水中ボートに乗って敵艦の側舷に爆雷を仕掛けるというものであっ
た。部下のアレック・ダーフィ大尉、トム・コーベット大尉をはじめ、スマート、アバクロンビーらは100mもある潜水脱出タンク訓練や、潜水訓練など日々訓練に励む。だが、一向にレイダー提督は作戦実施命令を下さない。そ
こで、フレイ
ザー中佐は極秘裏に水中ボートでレイダー提督の乗る船に爆雷を仕掛ける。何食わぬ顔でレイダー提督と話をしていた時に爆発が起き、その優秀さを知らしめる
のだった。
いよいよ実戦となり、最初の作戦は漁船「INGEBORD」の喫水線下に水中ボートをくくりつけ、ノルウェーのフィヨルド内のドイツ軍戦艦テルピッツを
攻撃するというものだった。ダーフィ大尉以下8名は漁船に乗り込んで出撃するが、悪天候で水中ボートが離脱しかかる。修理中にドイツ軍パトロール艇の査察
を受け、なんとかやり過ごすも次の荒天でついに水中ボートを失ってしまう。大尉は作戦を断念し、漁船を放棄、ノルウェーに上陸する。途中でドイツ軍兵と遭
遇し一名の兵が戦死するが、なんとか中立国スウェーデンに辿り着き、帰国できる。
次の作戦はXクラス超小型潜
水艇を使っての作戦だった。フレイザー中佐らは操作の訓練を実施し、再びノルウェーの戦
艦テルピッツ攻撃に出陣する。3隻の潜水艇x1、x2、x3は潜水艦に曳航され、ノルウェー沖に到達する。まずコーベット大尉ら4名がx3に乗り込む。だ
が目の前に浮遊機雷
が接近し、必死に足で蹴ってそれを遠ざける。続いてx1にフレイザー中佐、x2にダフィ大尉が乗り込んで出撃する。3隻は徐々に湾内に侵入し、防潜網に到
達する。x1のフレイザー中佐は漁船下の防潜網の隙間や防潜網の下を縫って侵入。x3のコーベット艇は潜水夫を外に出して防潜網を切断する。x2のダフィ
艇は着底してしまったうえ、ドイツ軍駆逐艦と接触して潜望鏡から浸水を始める。ダフィ大尉は味方の攻撃が完了するまで着底して待機することを決意する。
戦艦テルピッツに接近したx1は潜望鏡を発
見され、爆雷攻撃を受け再び潜水してテルピッツに接近する。x3は両舷の機雷を切り離して投下。だが、不具合
が生じたために艦を着底させたままコーベット大尉ら4名の乗員は潜水具を装着して浮上し、テルピッツの乗員によって捕虜となる。またフレイザー中佐のx1
も機雷を投下するが機関が故障したためにテルピッツ付近に浮上し、中佐以下4名が捕虜となる。
8名の捕虜はテルピッツの艦上で尋問を受け
るが詳細をはぐらかしあと10分に迫った爆発時刻を待つ。そして、テルピッツがエンジンを発動しようとしたその瞬間機雷が爆発。テルピッツは浸水を始め
る。してやられたテルピッツの艦長はフレイザー少佐に賛辞を送る。
テルピッツから退船させられるフレイザー中
佐らは付近の海上で再び大きな爆発音を聞く。それは浮上できなかったx3の自爆だった。海上に浮上するx3の残骸を見ながらフレイザー中佐らはテルピッツ
を後にする。
(2009/04/23)
|
|