戦争映画の一方的評論
 
「誰が祖国を売ったか? 評価★★ ドイツ国防軍情報部カナリスの運命 
Canaris
1955 西ドイツ 監督:アルフレッド・ワイデンマン
出演:O・Eハッセほか  
112分 モノクロ

 ドイツ国防軍情報部のカナリス提督といえば、敏腕の情報屋で知られていたが、1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件(ヴァルキューレ作戦)の罪で 処刑された人物としても有名である。この映画はそのカナリスの半生をサスペンス調に描いたものである。

 そもそも、ドイツの諜報機関としてはカナリスの属する国防軍情報部と、ナチSSに属する国家保安本部(RSHA)があり、カナリスの国防軍は主に諸外国 の情報を扱っ ている。国家保安本部とは、「SS保安諜報部」「ゲシュタポ」「一般警察」を統括する機関で、ドイツ国民の指導と取り締まり、ユダヤ人対策、占領地住民や 反ナチス抵抗運動などを受け持った。
 カナリスは人情派であり、冷徹な国家保安本部の長官ハイトリッヒ(ハイドリヒ)とは仲が悪かった。カナリスがハイトリッヒの手が伸びた友人を国外に逃が してやろ うとしてたことがわかると、ハイトリッヒは逮捕した男の娘イレーネを使ってカナリスの失態を探ろうとする。カナリスはそれを知りながらイレーネを雇い保護 するのだった。
 1938年、参謀本部のベック将軍がヒトラーに解任されたのを機に、反ヒトラー派がクーデターを試みた。クーデターには積極的ではないカナリスも、戦争 を回避する手 段として参加するが、クーデター直前にヒトラーとイギリス首相チェンバレンとの会談によってミュンヘン条約が締結され、イギリス側の支援が得られなくなっ たクーデターは中止される。次第に、カナリスは戦争をなんとかして終結させなければならないという思いを 強くする。
 そ んなある時、カナリスの副官ホル大佐の旧友が持ち込んだ最新起爆装置がハイトリッヒに知れ、カナリスらは逮捕されそうになるが、運良くハイトリッヒがチェ コで暗殺さ れて難を逃れる。
 そして、1944年7月20日、有名なヒトラー爆弾暗殺未遂事件、ヴァルキューレ作戦が行われ、ヒトラー暗殺は失敗に終わる。カナリスもその一翼に荷担 した罪で逮捕状が出る。1945年4 月9日、連合軍が到着する直前にフロッセンビュルク強制収容所で処刑された。

 ストーリーそのものはカナリスの半生記ということで、さほど盛り上がるものではないが、カナリス提督を扱った映画や書籍はそう多くないので、人物像を知 る上では貴重な映画である。また、映像面で特筆すべきは、随所に織り込まれた記録映像が当時の実写フィルムであること。ヒトラー広場での群衆や、オースト リア併合のヒトラーの謁見シーン。はたまた爆撃機スツーカの飛行シーンもほんのちょっとではあるが見物である。
個人的ではあるが、主役のカナリス役のハッセはちょっと個性が強すぎて、本当のカナリス人物像がわからないのが難点。ハッセが演ずると、みんなハッセに なってしまうのだ。

ちなみにヴァルキューレ作戦を扱った映画としては「ヒト ラー暗殺」がある。チェコのラインハルト・ハイトリッヒ(ハイドリヒ)暗殺事件を扱ったものに「暁の7人」「死刑執行人もまた死 す」がある。

(2004/08/16)

興奮度★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★

 
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