「地獄へ突込め」
評価★★☆ ディエン・ビエン・フーでのフランス軍の奮戦
JUMP INTO HELL
1955
アメリカ 監督:デヴィット・バトラー
出演者:ジャック・セルナス、ペーター・ヴァン・アイク、クルト・カッツナー、パット・ブレイクほか
93分 モノクロ
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1954年、インドシナのディエン・ビエン・フーを巡るベトミンとフランス軍の戦いを描いた戦争アクション映画。当事国ではないアメリカが制作したもの
で、ややヒーローアクション的要素があるものの、比較的シリアスな佳作である。ディエン・ビエン・フーの戦いは植民地支配国であるフランスが大敗を喫した
歴史的な戦闘だが、「ス
カイミッション空挺要塞
DC3(Dien
Bien Phu) (1992仏)」「イ
ンドシナ
激戦史
1954 -要塞ディエン・ビエン(2004越)」など数は決して多くない。前者は著名な作品だが、後者はちょっとピントはずれな作品で
ある。そういう意味でも貴重な作品だが、何と言っても制作年が1955年と実にリアルタイムなのが興味深い。戦闘の考証がまだなされているとは思えない時
期で、ストーリーや設定的にはいささか?な箇所もあるが、それを超越する新鮮さがそこにはある。
ディエン・ビエン・フーの戦いは1954年3月に行われた激戦で、フラン
ス植民地インド
シナ(現ベトナム領内)のフランス軍防衛拠点であるディ
エン・ビエン・フーを巡ってベトミンと
57日間の戦いを行っている。ベトミンはフランス軍の防衛拠点を包囲して補給線を絶ち、フランス軍は危険な空輸に頼らざるを得なくなっていく。基地内には
多くの外人傭兵を含む約16,000名が駐屯し奮戦するが、圧倒的な人海戦術に勝るベトミンの大攻勢により多くが戦死し捕虜となった。その問題点にはフランス軍上層部の無能さと政治的・外交的ミスなど色々あるのだろうが、ディエン・ビエン・フーの戦いでは孤立無援で玉砕覚悟の奮戦が光っている。
この戦闘は自由陣営対共産陣営の戦いでもあり、ベトミンの支援に中国人民軍将校やソヴィエト軍兵器が描かれている。この辺りは朝鮮戦争で苦渋をなめたア
メリカの反共産的な意味合いが強く表れている様な気がする。
ストーリー的にはやや設定が甘い箇所が多いのが気になる。防衛拠点の状況や、追加派遣のシステムや理由がややわかりづらいので、緊迫感にやや欠ける。ま
た、登場する主役級の兵士は4人のフランス人士官で、個々の兵士らの性格付けはなかなか面白い設定ながら、いざ戦場となると心情描写が中途半端になってし
まい、ラストに向けての心情移入がしずらかった。さらに、最前線での緊迫した雰囲気という点では、主たる兵士である外人傭兵が余り登場せず、フランス人士
官との互いの考え方の違いや確執はほとんど描かれていないのが残念。
それに加え、アメリカ映画らしく意味のないラブロマンスを絡めてしまっているために、ストーリーの盛り上がりや起承転結のバランスが悪い。内容的には玉
砕覚悟の鬼気迫る奮戦なだけに、かなりもったいない感じがした。
映像はモノクロでちょっと見にくい箇所もあるが、戦闘シーンは米軍所有と思われる実機が登場するなど迫力はある。記録映像も入っているかも知れないが、
グラマンF8Fベアキャット、C-47スカイトレイン輸送機、C-124グローブマスターII輸送機、シコルスキーH-19ホワールウインドヘリなどの航
空機のほか、M4シャーマン戦車も登場している。このあたりの兵器類は実際にインドシナ戦争で使用されていたようだから、映像的にはかなりリアルなのだと
言えよう。
作品のトータル的な出来具合から言うと、まあまあなのだが、その評価以上に本作はレア性を持ち合わせている。ディエン・ビエン・フーでのフランス軍の大敗を違った角度から見ることが出来る作品なのであった。
Gyaoで視聴
興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
1954年になりインドシナを占有しているフランス軍にベトミンが徐々に攻勢を強め
てくる。前線でフランス軍のダーブレイ大尉は捕虜を捕らえてハノイの司令部に送る。尋問の結果、うち一名がベトミン第17対空連隊付の中国人民軍の中尉で
あることが判明する。彼はベトミンのザップ将軍ら4万人が囲んでいることを語り、フランス軍の内部についての情報も持っており、内通者がいることがわか
る。内通者はアジア系の傭兵タック中尉で、タック中尉は「腐ったリンゴ作戦」として空中から敵陣に落下傘効果させられる。
いよいよ大攻勢が迫っていることがわかり、兵員増派のためディエン・ビエン・フー最前線の指揮官クリスチャン・デ・カストル大佐はボネ少佐に命じて、4
名の士官を写真持参で呼ぶように命じる。フランス軍の前線防衛拠点はそれぞれ女性の名前が付けられていたのだ。
フランス本国で事務についていたガイ・ベルトラン大尉は、第二次世界大戦の復員兵だったが、ドイツでの捕虜生活を2年送っただけだった。インドシナ派遣
の情報を聞き、自ら志願する。ハノイには恋人のジゼルがいたのだった。
ベルトラン大尉は米軍機に乗りハノイに向かうが、途中で小太りで美しい妻のために志願したジャン・カロ大尉、モロッコで軍隊経験があり恋人のジャクリー
ヌを置いてきたハインリッヒ・ヘルマン中尉、全くの未経験だが共産主義に怒りを覚えるアンドレ・モーパン中尉が合流する。
ハノイでは敵の攻撃により着陸時に炎上。危険なために荷物だけが先に前線のディエン・ビエン・フーに降りる。そこで開けられた荷物の中から妻のジゼルの
写真が出てきてボネ少佐は驚く。
ハノイ司令部では増派部隊の落下傘降下を決定。4人も迷わず志願する。その晩ベルトラン大尉はジゼルと会うのだった。
落下傘降下では敵の攻撃を受け、カロ大尉が肩に軽い負傷を負う。ベルトラン大尉はモネ少佐と面会し、口論となる。モネ少佐は妻を愛していないのに離婚せ
ずにいるのだ。
カロ大尉は救護所で瀕死の負傷兵リゴールを見て、自分の怪我が恥ずかしくなる。モーパン中尉は早速孤立した拠点マドレーヌへ救援に行くことに。モーパン
中尉は拠点に着くもマドレーヌのダーブレイ大尉は重傷を負っていた。モーパン中尉は機転をきかせてなんとか脱出に成功する。
敵の大攻勢を前に運よくモンスーンが来る。しばらくの間時間を稼ぐことが出来るのだ。この奮戦により大佐以下の12,000名に戦功十字章が与えられ、
大佐にチャーチルやアイゼンハワーから電話が入り、准将に昇進する。お祝いに空輸でシャンパンを届けさせるが、敵陣に落ち、なんとか取り戻す。
准将のいる基地内にフランス兵に化けた偽物のベトナム人が潜入。爆弾を仕掛け銃撃してくるが、ヘルマン中尉が身を張って爆弾を処理し、准将は助かる。ヘ
ルマン中尉はレジオン・ド・ヌール勲章を得る。また、献身的な軍医リロイ大尉にも名誉勲章が与えられる。
基地内の水不足が顕著になり、基地の外に水を確保する任務にカロ大尉が志願する。カロ大尉の妻シモーヌは浮気をしており、それを知ったカロ大尉は死亡保
険の受取人を妻から、死んだ兵士リゴールの6歳の娘の名義に変えようとする。それが昇任されるためには書類が無事に基地からハノイに届くことが必要であっ
た。カロ大尉は水を汲みに行くが撃たれて死亡する。死に際に書類を乗せたヘリが飛び立っていくのを確認する。
ボネ少佐の隊は孤立し、ボネ少佐は降伏しようとする。しかし、敵に撃たれて負傷。ベルトラン大尉がそれを救出するが、基地に着いたときには事切れてい
た。
いよいよベトミンの大攻勢がはじまり、掘られたトンネルから次々に出てくる。拠点は次々に陥落し、最後の抵抗を続けるのだった。
(2008/12/05) |
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