戦争映画の一方的評論
 
「フランキー・ブーチャンのあゝ軍艦旗」 評価★★★ 日本戦争コメディ映画の傑作
1957 日活 監督:春原政久
出演:フランキー堺、市原俊幸、小沢昭一ほか  
113分 モノクロ

 梶野悳三昨で「講談倶楽部」に連載されていた作品を映画化したもの。戦後10年ほど経ち、戦争という題材を娯楽化できるようになった時代を象徴する。コ メディもフランキーとブーチャンのコンビでボケるなど新しい試みで受けた。フランキーは都会的だがちょっとズル賢くて抜けている役、ブーチャンは東北訛の 天然ボケ役という、日本人にとってはわかりやすい配役なのも受けた理由であろう。そこに、小沢昭一扮する上官役が二人の失態のとばっちりを食うというオチ がまたいい。まるで漫画「美味しんぼ」の係長そのものだ。軍隊を馬鹿にした嫌いもなきにしもあらずだが、逆に軍隊の裏側を風刺したものとして楽しめばいい だろう。本作は、フランキー・ブーチャンものの第1作で、海軍新兵教育を部隊にしている。最もオーソドックスに製作されており、ストレートに楽しめるもの だ。

(以下ネタバレ注意)
 江戸っ子の門馬(フランキー)と東北出身の間々田(市原)は海軍に入隊し新兵となる。教班長は秋山兵曹、直属の教官は小粒でうるさい酒巻一水(小沢)。 初日から酒巻一水にこってりと絞られた門馬らは、次から次へと失態を繰り返す。そのたびに、二人は飯抜き、駆け足、精神棒などの懲罰を受けるが、上官の酒 巻一水もそのとばっちりで怒られる始末。
 ある日、懲罰で駆け足中の二人に敵機が来襲。慌てた門馬が偶然機銃乱射で敵機を3機撃墜。功績を認められて門馬は2階級特進で水兵長に(本当は2階級な ら上水のはずなんだが)。いきなり酒巻一水よりも位の高くなった門馬水兵長は艦上勤務で艦長からもらった恩賜のタバコで火薬に火をつけてしまい、営倉入 り。降格されてなんとか釈放された門馬は、間々田と演芸会に出演。門馬に離ればなれの妻おみつの面影を見た間々田は、妻おみつのもとに脱走。門馬らの捜索 と秋山兵曹の計らいでなんとか帰隊する。そして二人はいよいよ監視艇「がっかり丸」の勤務となるのだった。

 いろいろなドタバタ劇が繰り広げられているが、とにかくフランキーとブーチャンの演技が楽しい。ここまでボケれば最高だ。個人的には、酒巻一水の演技が 好き。一見厳しそうな指導にも優しさとボケ具合がうまく溶け込んでいる。思わず応援したくなるようなキャラクターなのである。
 海軍が題材なので、「海軍は連帯責任」ということで二人の責任をほかの分隊士が取らされる場面が何度も出てくる。また、「5分前」の貼り札が至る所に 貼ってある。これを見て、高校時代の海軍出身教師が、チャイムが鳴っても席に着かない我々に対して「海軍には5分前という言葉があーる。5分前には席につ けー」と怒鳴っていたのを思い出した。「ここは海軍じゃねー」と反論していたが、今となっては「5分前」も笑い話のネタにしかならないのだろうかと感じる のだった。

(2004/10/16)

興奮度★★
沈痛度★
爽快度★★★★
感涙度★