白い砂

戦争映画の一方的評論

「白い砂」　評価★★　南島の孤島に取り残された海兵隊員とシスター
HEAVEN KNOWS, MR. ALLISON
1957 アメリカ　監督：ジョン・ヒュースト
出演：ロバート・ミッチャム、デボラ・カーほか
１０７分　カラー

　ロバート・ミッチャムとデボラ・カー二人の独壇場映画といったところ。第二次世界大戦の日本軍との戦闘を題材にしてはいるが、南の孤島に流れ着いた海兵隊員と、島に取り残されていたシスターの奇妙な生活ぶりがメインとなっている。男女の話ではあるが、アメリカ映画特有のベタベタは全くなく、意外なほど淡泊。というのも、女性がシスターであるがゆえに、強い倫理観が働いているのだ。木訥とした海兵隊員の、男として生理的な欲求を、宗教という倫理観で最後まで押さえきるのだ。ミッチャムの我慢強さと、カーのお色気ばかりが妙に気になる映画だ。男性なら見終わるまでに、かなりのストレスを感じる事請け合い。一歩間違えば、宣教映画かと間違えるほど。
　
　登場人物は海兵隊員とシスターがメインで、あとは日本兵らがちょびちょび程度。戦闘シーンもほとんどなく、映像的にはかなりチープな出来具合。ただ、感心したのは、登場する日本兵の服装や会話が意外にしっかりしていたこと。在米邦人をエキストラとして使用していると見え、きちんとした日本語が話されている。ただ、日本を離れて久しいのか、動作やアクセント、会話の内容に多少の違和感はある。これがまた面白い。また、日本軍陣地内の物資も「清酒白鹿」など本物の日本製品が並び、箱書きも「横鎮」など小道具考証が妙にしっかりしているのが笑える。碁を指す日本兵のシーンはなんともほのぼのしている。

　登場する兵器はほとんどなく、米軍では上陸用舟艇程度。地上爆撃する航空機も登場するが、記録映像の使い回しのようだ。日本軍側の兵器としては、山砲のような砲が四門出てくるが、詳しくないのでわからない。（映画中では105mmと言っているが、違うような気がする）。
　戦闘シーンはないに等しいが、爆撃シーンはそこそこ出てくる。しかし、着弾も土煙も今ひとつの演出で、リアル感には乏しい。さらに、ミッチャムが日本軍陣地に潜入して破壊工作をするのだが、日本兵の姿が全く見えないのは興ざめ。そういうアクションを期待する映画ではないが、こういうところで手を抜くと、やっぱり２流の匂いがするのだ。
　
興奮度★★
沈痛度★★
爽快度★★★
感涙度★

（以下　あらすじ　ネタバレ注意）

　1944年、南太平洋のとある島。アメリカ海兵隊アリスン伍長は、乗船していた潜水艦から取り残されて漂流し、この島に流れ着いた。島は無人島のように見えたが、残されていた教会に行くとそこにシスターアンジェラがいた。シスターアンジェラは、フィリップ神父とともにこの島にやってきたが、船を盗まれて取り残され、数日前に神父も亡くなっていたのだった。
　たった二人の奇妙な島生活が始まる。ウミガメや木の実を採集して食料を確保し、アリスンの乗ってきたゴムボートに帆をつけて、フィジーまで脱出航海する計画を建てる。
　しかし、日本軍の爆撃隊が島を急襲。ゴムボートも焼失してしまう。さらに、日本軍の小部隊が気象観測機材を持って上陸してくる。アリスンとシスターは丘の上の洞窟に身を潜める。夜になって魚を捕ってくるアリスンだが、火が使えないためシスターは生魚が食べられなかった。そこで、アリスンは密かに日本軍宿営地に潜入し、食料調達を図るのだった。
　ある日、遠い海上で砲撃戦の光が見える。日本軍と米軍が海戦を行っているようだ。その夜、日本軍は資材をそのままに撤収していく。再び、二人きりの生活が始まる。アリスンは意を決して、シスターに求婚する。実は、シスターアンジェラは最後の誓いを立てていないため、シスターを辞めることも可能なのだ。しかし、シスターは断る。
　日本軍の残した日本酒を飲んで酔っぱらったアリスンは、シスターに絡む。泣いて逃げたシスターは雨に打たれて高熱を出す。
　その時、再び日本軍が島に上陸してくる。今度は3,000人規模だ。寒気を訴えるシスターのため、アリスンは再び日本軍宿営地に潜入し、毛布を盗む。しかし、運悪く出くわした日本兵を殺してしまう。シスターは看病の末、意識を取り戻すが、日本軍は敵が隠れている事を悟り、山狩りを開始する。
　いよいよ、アリスンらの洞窟に日本兵がやってきたとき、アメリカ海兵隊の爆撃機が飛来して助かる。アメリカ海兵隊の上陸戦が近いのだ。しかし、日本軍には105mm砲が四門設置されており、上陸参加の海兵隊員の半数は死ぬだろうと予想する。アリスンは神の啓示だと言って、日本軍の砲を機能させない破壊工作に出る。米軍の艦砲射撃の中、日本軍の砲の蓋を取り外したアリスンは、負傷しながらも生きて戻る。二人は、今後離ればなれになろうとも、親友である事を誓い合うのだった。

（2005/05/24)

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