戦争映画の一方的評論
 
「地下水道」 評価★★★ 暗い・・・重すぎてもう一度見る気が起きない
KANAL
1957ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ 
主演:タデウシュ・ヤンチェル、テレサ・イゼウスカほか
96分 モノクロ

 スカパーシネフィルイマジカチャンネルで放送したものを視聴した。1957 カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作品。舞台は第2次世界大戦末期のポーランド(1944年9月頃)。反ナチス(ドイツ)抵 抗運動のために武装蜂起したポーランドレジスタンスたちがドイツ軍の反撃にあう姿を描いている。後に「鷲の指輪」「聖週間」などを製作するワイダ監督の出 世作といわれる。
 蜂起とはいわゆる「ワルシャワ蜂起」である。題名の地下水道とは、下水道のことで、ドイツ軍から逃れるためにワルシャワ市街の下水道に逃げ込んだ様子を 描いていることによる。ちなみに、後半半分は下水道でのシーンだ。
 この映画は、レジスタンス賛美のストーリーではない、ただただ悲惨な結末である。レジスタンスははっきり言って、統制もとれていないし、意志も弱い。全 滅の危機だとい うのにヘラヘラと美少女といちゃついていたりする。地下水 道内での混乱は情けない限りである。こんなポーランドレジスタンスでは勝ち目はない、悪役であるドイツ軍 の方が立派に見えてくる。実はそれが狙いなのかもしれないが。
 と言うのは、この映画が共産主義体制下のポーランドで作成されたという点を理解しておく必要がある。スターリニズムに強く影響(規制)された、自己批判 と自由への否定を色濃く描くこと自体に意義があっ たためと言える。つまり、ソ連支配前のポーランドの存在そのものが否定材料なのだ。この映画を反戦映画だと評する人もいるが、これは決して反戦などではな い。自由を求める愚か者の結末を示唆しているのである。後のワイダ監督作品と比べれば、大分抑圧された作りとなっているのはそのためであろう。とにかく、 暗い題材のうえ、地下水道で暗いし、モノクロで暗い。とにかく暗い。
 この映画で感じたことの一つは、女性は強いということ。地下という極限の中でも気丈で生き延びるためにずうずうしさやしたたかさを持っている。性を売り にしてでも。
 また、どんな戦争でもそうだが、上官が平然と部下を射殺するシーンがあり、階級社会の 傲慢さを感じる。自分のプライドを傷つけられたというだけで、味方である部下を射殺するあたりは、平時であれば想像もできない神経である。絶対に、兵卒に はなりた くないと思うのであった。
 最後に、この映画はビデオ化がなされているが、それに朝日新聞がかかわっているあたり、共産つながりですか?。なるへそと思ってしまうのであった。

 興奮度★★
 沈痛度★★★★★
 爽快度★
 感涙度★

(以下ネタバレ注意)

 第2次世界大戦末期のポーランド(1944年9月頃)。いよいよ連合軍の反撃が近いという噂もあり、反ナチス(ドイツ)抵 抗運動のために、ポーランドレジスタンスたちは武装蜂起する。しかし、連合軍の進撃は未だ来ず、かつソ連軍の支援もない。武器も少なく、統制も取れていな いレジスタンスはドイツ軍の組織的な反撃に会い、次第に劣勢となっていく。
 ポーランドレジスタンスのザドラ中尉の率いる中隊では、すでにドイツ軍に叩かれて、もはや小隊規模しか残っていない。勇敢な兵士がドイツ軍のゴリアテ (有線誘導無人戦車)の有線を決死で切断したりもするが、いよいよ破滅が近づいてくる。
 ついに、司令部からの命令で、レジスタンスに参加した 音楽家、美少女デイジーなどを含め、残ったレジスタンス戦士らは、密かに地下水道を通り、市の中央部に出て再起を図ることとなる。夜になり、ザドラ中尉以 下レジスタンス部隊は美少女デイジーの道案内のもと地下水道(下水道)に入るが、汚泥から発生する有毒ガスと 暗黒に道を失ったうえ、ドイツ軍が毒ガスを注入しているという流言や恐怖による発狂で部隊はバラバラになってしまう。
 恐怖に耐えきれず、不用意にマンホールから這い出たものはドイツ軍に射殺されてしまう。負傷したコラブと彼を導いてきたデイジーはようやく出口を見つ けたものの、河口に注ぐ出口と知り落胆する。また、先頭を進んでいたザドラ中尉らはついに目的の出口を発見するが、ドイツ軍により柵と手榴弾が施されてお り失望する。しかし、一人の勇敢な兵士の犠牲により、中隊長ザドラらはようやく地上に出ることができた。しかし、後ろには誰もついてこなかった。恐怖の余 り、後続がついてきていると嘘をついていた部下をザドラは射殺し、再び地下に潜るのだった。他の中尉も地上に出ることができた ものの捕虜となってしまうのだった。

(2002/12/16、2005/03/14加筆修正)
 

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