戦争映画の一方的評論
 
「深く静かに潜航せよ 評価★★ 米潜の日本駆逐艦秋風との対決
RUN SILENT, RUN DEEP
1958 アメリカ 監督:ロバート・ワイズ
出演:バート・ランカスター、クラーク・ゲイブルほか
93分 モノクロ


 豊後水道を舞台として、アメリカ海軍潜水艦の日本海軍駆逐艦秋風や潜水艦との死闘を描いた作品。監督は「砂 漠の鼠」「砲 艦サンパブロ」のロバート・ワイズ監督で、心情描写を得意とするが、本作も潜水艦艦長と部下の心情の動きを主眼に据えている。しかし、私個人的に はワイズ監督の心情描写手法は、ベタすぎるためにストーリーにドラマチックさが欠けるのであまり好きではない。どうしても間延びした展開になりがちなの だ。
 主演は「地上より永遠に」「大 列車作戦」のバート・ランカスター。かなり個性の強い(顔立ちも)役者のため、本作のような心情描写を主眼とする作品の場合はちょっときつい感じ がする。艦長役がすっかり食われており、将校同志の確執の理由が見えずらい。関係ないけど、ランカスター顔でかいんだよね。気になって仕方なかった。
 ストーリーはそれなりの内容があるのだが、描写は今ひとつ。潜水艦内部や操作に関する部分は力が入っているのだが、海戦シーンはいささか心許ない。潜水 艦戦には詳しくないので、良くわからないのだが、駆逐艦に対しての正面魚雷攻撃や平底船を潜っての魚雷攻撃など、本当にありなんだろうか。また、日本軍の 描写が最高に萎える。片言の日本語はとても変だぞ。まあ、駆逐艦秋風や潜水艦がそこそこ頑張るから許せるけど。さらに、後の潜水艦映画にありがちな、爆雷 攻撃等に対する海中沈黙で耐えるシーンはあまりないため、潜水艦の緊迫感をさほど感じる事がなかったのが残念。
 登場する潜水艦は「ナーカ号」と呼ばれており、計画中止ではあったがバラオ型として実名の艦である。映画に用いられたのもバラオ型の潜水艦でSS- 395レッドフィッシュらしい。出航、航海シーンでは実映像として登場し、やはり実際の艦は迫力がある。海戦シーンや日本軍の駆逐艦、潜水艦、輸送船は全 てミニチュア模型。そんなにチープでもないけど、臨場感はほとんどない。
 日本海軍の駆逐艦は秋風、桃が登場するが、秋風は高速駆逐艦として活躍したが、ほとんどをラバウル方面で活動し、44年11月にルソン島沖で潜水艦ビン タードに撃沈されているので本作は史実とは異なる。桃の方は44年3月進水、12月にルソン島沖で潜水艦ホークビルに撃沈という事なので、これもまた架空 の話。
 ということで、ストーリー設定や映像にリアル感が欠けているので、本作は潜水艦映画と言うよりは、むしろアメリカ海軍士官の確執ストーリーとして見た方 がいいのかもしれない。

興奮度★★★
沈痛度★★

爽快度★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 1942年リチャードソン中佐の潜水艦が、四国と九州の間にある豊後水道で日本海軍の駆逐艦秋風に撃沈される。
 1年後の1943年、陸上勤務となっていたリチャードソン中佐は、入港した潜水艦ナーカ号の艦長が病気で退艦したとの情報を聞きつけ、豊後水道で駆逐艦 秋風と対決するために、無理矢理ナーカ号の艦長に就任する。
 ナーカ号の副長だったブレッドソー大尉は次の艦長と目されていたが、リチャードソン中佐に奪われて不快感をあらわす。しかも、最も危険とされる第7海域 が任務地と聞き新艦長に不信感を抱く。
 ナーカ号の派遣先は第7海域だが、最も危険な豊後水道は回避するよう命令が出ていた。出航後、リチャードソン中佐は、浮上航行から急速潜航後魚雷発射と いう厳しい訓練を課す。45秒かかるところを33秒でこなせというのだ。その訓練の最中に日本軍の潜水艦と遭遇する。しかし、艦長は敵に後ろを向いて戦闘 を回避した。これで、ますます部下達は艦長が臆病者ではないかと不信感を募らせる。
 しかし、次に出会ったのは駆逐艦桃と輸送船団だった。艦長は輸送船に魚雷攻撃を行って駆逐艦の注意を引いた後、駆逐艦正面に向かって浮上航行。 1,500ヤードの場所で急速潜航して魚雷発射する。見事桃の艦首に魚雷が当たって桃は撃沈。つまり、艦長は対駆逐艦戦法の訓練をしていたのだった。
 艦長は命令に背いて豊後水道に入る。そしていよいよ秋風との対決となった。しかし、秋風への正面攻撃の際に日本軍航空機の攻撃を受けた上、魚雷が不発で あった。秋風の爆雷攻撃にさらされたナーカ号は、魚雷発射管からゴミと戦死者の死体を発射し、撃沈したと思わせる苦肉の策に出る。まんまと日本軍は騙され るが、ブレッドソー大尉ら部下は、この危険な任務に不満を漏らす。
 リチャードソン中佐は先の爆雷攻撃を受けた際に頭を強打し、危険な状態にあった。ついに、ブラッドソー大尉が軍法に則って艦長職を奪う。修理完了後、真 珠湾に帰投する事とする。しかし、先の秋風との対決が、捨てたゴミから居場所が割れており、待ち伏せされていたと知ったブラッドソー大尉は、次第に秋風と の対決に心が傾いていく。
 部下も秋風との対決に納得し、再度決戦となる。今度はブラッドソー大尉の指揮の下見事秋風を撃沈する。ところが、背後に日本軍の潜水艦が迫る。日本潜水 艦の魚雷をかわしたナーカ号は海中で機関停止する。そして、一気に浮上したナーカ号は平底船の陰に隠れた日本潜水艦を撃沈するのだった。
 そして、リチャードソン中佐は息を引き取り、ブラッドソー大尉ら部下は敬意を示すのであった。
 
 (2005/06/13)

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