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戦争映画の一方的評論
 
「明治大帝と乃木将軍 評価★★★ 日本の歴史観を再考する良作 品
1959 新東宝 監督:小森白
出演:嵐寛寿郎、高倉みゆき、林寛、片岡彦三郎ほか  
104分 カラー


 新東宝が製作した天皇3部作の第3弾。第2弾の「天皇・皇后と日清戦争」が かなりの駄作であったのに対してこちらはテーマが乃木将軍とはっきりしているので、そう悪くはない。といっても、素晴らしいというほどのものではない。天 皇を扱っているが故に、若干奥歯にものがはさまったような歯切れの悪さやテンポの悪さがあるので、全体には104分が長くだらけて感じるのは否めない。
 しかし、明治天皇(聖上天皇)と乃木希典の生涯を描いた作品として、日本の歴史映画を代表する作品であることには間違いない。特に、天皇陛下の言動や考 え方を主眼に置いて作られた作品としてはこれ以前、以降はほぼ見あたらないと言ってもよいだろう。乃木将軍については、旅順攻略、いわゆる二〇三高地がメ イン事件となるわけで、こちらを扱った作品は二〇三高地などがある。乃木将軍の評価としては、戦前は「軍神」、戦後は司馬史観などによって「無能」者扱い されてきているが、近年再考する動きもあるようだ。この映画の中では、旅順攻略中から内部批判や国民の無能、冷血批判が描かれており、すでに乃木将軍の評 価が割れていることがよくわかる。とはいえ、乃木将軍も子どもを二人戦死で失い、帰国後も戦死した兵士の遺族を見舞うなどのエピソードも描かれており、微 妙な作りとなっている点が見所でもある。
 話は、ほとんどが旅順攻略の前から攻略後、明治天皇崩御に際しての殉死までを描いており、筋はしっかり通っている。戦後間もない頃の歴史観に基づくもの であり、現代の歴史観とは若干違和感はあるものの、そういったことを踏まえて日本の歴史を再考するには価値のあるできばえといえる。今の価値観では理解で きないこと(人の行動や作戦も含めて)がこの作品を通すと見えてくるものがある。また、逆にこの作品製作から4,50年でこんなにも価値観が変わったのか ということを再認識させてもくれる。今となっては、変に、良心に固執した(欧米的)現代史観やグローバル性、平和、人間性、モラルなどに毒されていない純 な日本人的感覚を思い起こさせてくれる民族的映画とも言えるのではないだろうか。
(2004/04/28)

興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★★

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