戦争映画の一方的評論
 
「五人の突撃隊」 評価★★★  ミャンマー戦線からの決死の撤退支援
1961 大映 監督: 井上梅次
出演:本郷功次郎、藤巻潤、川口浩ほか  
119分 モノクロ

 典型的な戦後の戦争映画で、メンタル重視系の映画。だが、よくありがちなチープな作りではなく、しっかりと練られた脚本でいくつものエピソードが折り重 なったものとなっているので、見応えはある。ただし、映像技術的にはかなり劣っているので戦闘シーンなどではややチープさは感じてしまう。配役は、舌足ら ずの坊ちゃん役が多い本郷の他、藤巻、川崎、大辻、川口といった当時のスターを揃えており、豪華メンバー。また、映画編集上では主役5人の回想シーンとし てフラッシュバックを多用しているのが特徴。
 本作は昭和19年5月が舞台となっており、史実では当時日本陸軍はインドから中国への補給路を断ち切る「断作戦」のためミャンマーで戦線を張っており、 それに対して米中軍は空輸作戦で戦力を増強、日本第18師団歩兵第114連隊(福岡)の守るミイトキーナを攻撃。2ヶ月後に増援の第56師団の水上少将が 自決、2千数百名が戦死。連隊長は生き残りを率いてイラワジ川を越えて撤退している。本作は多分このミイトキーナの悲劇をネタに構成されているものと思わ れる。

 (以下ネタバレ注意)
 昭和19年5月、ミャンマー前線を守備する野上大隊(野上中佐)は、連合軍の攻撃で疲弊しもはや持ちこたえられないことを上層部に進言し、撤退を求めて いた。しかし、上層部の第33軍司令官(中将)、師団長らは精神力での攻勢を求め、てこ入れのため、野上中佐のもとに旅団長(連隊長?)の曾根少将を送り こむ。
 曽根少将は野上中佐のもとに赴く際に野上中佐の息子、野上少尉を副官として連れていく。曾根少将は野上中佐の考え方に一定の理解を示しており、親子の対 面を配慮しての ことだ。しかし、曽根にしても上層部の命令には逆らえない。敵連合軍は着々と空輸で準備を進めており、斥候の報告により攻撃が近いことを悟る。
 曽根少将は思案したあげく、敵陣急襲部隊を送り込みながらその隙に大隊を撤退させることを決意する。敵陣急襲部隊が帰還次第に、敵の追撃を阻止しつつイ ラワジ川にかかる橋を爆破する計画であった。問題は敵戦車の攻撃であり、これに対抗するため、5人の戦車兵が最後の守備兵兼橋の爆破兵として前線に残され た。5人は野上少尉、士官学校に入隊しながら兵役忌避で兵卒降格の一等兵、落語家志望の上等兵、ヤクザで懲役経験のある上等兵、新婚初夜で徴兵された兵卒 の5名。5名は敵から奪った戦車を地中に埋め、敵の攻勢に待機した。
 大隊本体と傷病兵が撤退をし、最後の敵陣急襲部隊が帰還したとき、遂に連合軍の戦車部隊が向かってきた。最初は5台の敵戦車を戦車砲と地雷、手榴弾で撃 破するも、続々と後続が現れ、ついに敵弾に倒れる兵が出る。野上少尉らは橋の爆破に踏み切る。しかし、導火線の不良から爆発しない。兵役忌避の一等兵が爆 薬を 抱いて突撃する・・・
 一方、撤退を完了した村では曽根少将が撤退の責任をとって自決している。荼毘に伏す野上少尉にもまた敵弾が・・・

 なんだか、あまり後味のいい終わり方ではないのですが、史実上ミャンマーの悲劇と呼ばれた戦線を描いたものですから致し方ないでしょう。これに娯楽性を 持たせるために個性豊かな5人の兵士を作り出している。特に、野上少尉については、父親である大隊長との確執が次第に溶け、最後は「戦争が終わったら一緒 に暮らそう」という言葉を交わしつつ、その願いは報われないと言うもの悲しい結果となる。他の兵士にしてもフラッシュバックで入隊以前のエピソードが盛り 込まれており、なかなか面白い。
 この映画は戦記物という部分は強く出していないので、時代背景や戦線の状況はかなりわかりづらい。また、敵戦車から逃げる際にジグザクで逃げ回るなど、 アクション娯楽性が強い部分もある。もう少し、リアル感を持たせてもよかったのではないかな。なお、映画に登場する敵戦車はM24チャーフィー軽戦車。 1944年末に戦役にデビューした戦車で、戦後自衛隊も使っていた戦車。多分、自衛隊から借りて撮影したのではないでしょうか。

(2004/09/12)

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★★

五人の突撃隊 【DABY-17】 =>20%OFF!《発売日:01/06/27》五人の突撃隊 【DABY-17】 =>20%OFF!《発売日:01/06/27》