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戦争映画の一方的評論
 
「僕の村は戦場だった 評価★★★★ 少年偵察兵に身を投じた少年
IVANOVO DETSTVO/MY NAME IS IVAN/IVAN'S CHILDHOOD
1962
ソビエト  監督: アンドレイ・タルコフスキー
出演者:コーリャ・ブルリャーエフ、ワレンティン・ズブコフ、ニコライ・ブルリャーエフほか
94分 モノクロ

 ソビエト芸術映画の極みを見た思いがした。繊細な音表現と太陽等の光の演出を主にした明暗の映像美は、映画を見ていると言うよりは一つの芸術絵画を鑑賞しているような気までしてくる。ストーリーから遠く離れた婉曲な事象を映像で取り上げているにも関わらず、ストーリーに直結した精神的な感傷を感じるのは驚きでもあり、恐怖でもある。監督のアンドレイ・タルコフスキーはこれが処女作と言うからさらに驚きだ。
 本作は両親を失ったソビエトの少年が、大人の正規兵に混じってスターリングラード攻防戦の偵察任務につく物語だが、題材の持つ悲壮感溢れる戦争の罪悪を切々と描きつつ、少年の心の中に宿る冒険心と復讐心の葛藤、大人の正規兵の少年に対する情愛と罪悪感のせめぎ合いなどが実にうまくマッチして展開していく。時間的経過、バランスともに映画としては極めて完成度が高いといえよう。ただ、評点が満点に届かないのは、本作があまりに叙情詩的に過ぎること。そういう叙情詩作品ならばそれに徹しても良かったかもしれないが、あくまで戦争映画という観点で見れば、余りに考えさせられるシーンが多すぎるのだ。戦争とはある意味直感的で刹那的なのもであり、視聴する側もそれに対応した心構えで見ている。しかし、本作は婉曲な映像表現から言わんとすることを理解しなければならないし、そうして考えることで戦争行為に対する忌避感が倍増してしまうのだ。反戦映画としては最高の効果なのだろうが・・・。個人的にはあまり好きではないのだ。
 少年イワンを演じるのはニコライ・ブルリャーエフ。撮影当時15歳くらいのようだが見た目は10歳くらい。最近まで俳優を続けていたようだが、端正なマスクに知性と頑固さが同居した名演技。鋭い視線から放たれる悲しみと旺盛な生活力は日本の戦後の浮浪少年たちと繋がるものがある。途中で登場する美女、女性衛生中尉マーシャの存在は今ひとつ意味不明。作品中には余り必要ないキャラだったと思うのだが。
 本作のラストシーンはかなりグロい。ドイツ降伏後のゲッペルス家族などの毒殺、銃自殺、焼死体の映像だ。多分実写だと思う(もし役者だとすればここまでリアルにする必要はないと思う)が、ゲッペルスの幼い娘の死体や少女の銃殺死体は見るに堪えない。さらに、イワンの結末を示すシーンは直接的な映像ではなく、声やイメージシーンの映像だけで構成し、実映像を見るよりもずっと刺激的。これらの衝撃的カットは監督の意図的なものであろうが、このあたりに監督の天才的な感性を感じる。このほか、何回も登場する黒板の落書き「僕たち8人は19歳以下。1時間後に殺される。敵を討って」は何やら意味深なメッセージ性があり、オカルト映画的な雰囲気で不安感を募らせる。やはりこの監督ただ者ではない。
 ミリタリー的にはほとんど兵器は登場しないので見るべきものはないが、唯一興味深かったのは偵察任務についた大尉らの服装など。迷彩ポンチョに身を包み、部下に跳ねてみろと指示する。チャラチャラと音がしないよう「マッチはだめだ置いてゆけ」と言うのだ。なんだかリアルだった。あとは中州に突き刺さったドイツ軍機ぐらい。
 全体にコンパクトにまとめられている割に、訴えかけてくるものが多い映画だった。はっきり言って気分良く見る事が出来る映画ではなかったが、人間の闇の部分を衝いてくるかのように吸い込まれていった。

興奮度★★★
沈痛度★★★★★

爽快度★
感涙度★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください)

  スターリングラードでドイツ軍と対峙するボルガ川沿いのソビエト軍前線。大隊長のガリツェフ上 級中尉のもとに、ずぶ濡れの一人の少年が連れてこられる。初めは名をボンダレフと名乗っているが、そのうち司令部51番にイワンが着たと電話しろと要求し 始める。ガリツェフ上級中尉は信用せず、上官の大尉に伺うが相手にされず、逆に拘束しろと命令される。
 イワンは仕方なく、司令部のホーリン大尉かグリズヤノフ中佐にに電話しろと要求し、ガリツェフ上級中尉が電話したところ、紙と鉛筆を与え丁重に世話をし ろと命じられる。イワンはソビエト軍の少年偵察兵として敵陣地の情報を仕入れてきたのだった。その際に、ドイツ兵と遭遇したため、合流地点で待っていたカ タソーニチ軍曹と会えずに、単身川を渡ってきたのだ。
 迎えに来たホーリン大尉は我が子のようにかわいがるが、グリズヤノフ中佐はイワンを後方の幼年学校に入れることにする。子供が戦う戦争ではないという配 慮だったが、イワンは幼年学校行きに抵抗する。

 ガリツェフ上級中尉の大隊では斥候を出すが、敵に捕まって偵察員のリヤホフ、マロースは晒し首となって対岸に放置される始末。ホーリン大尉は仕方なくイ ワンを使う事を決意し、自らも対岸へ行く準備を進める。ガリツェフ上級中尉はイワンを使う事に反対するが、共に行くことに決断できない。しかし、カター ソーニチ軍曹が敵弾に倒れてしまうと、その代わりとして行く事を決意する。

 ホーリン大尉、ガリツェフ上級中尉、イワンの3名は夜闇に紛れて対岸に向かい、イワンは偵察に出かけていく。ホーリン大尉とガリツェフ上級中尉は晒し首 の偵察兵の死体を回収して戻る。

 ドイツ軍が降伏する。ベルリンではゲッペルス一家が自決する。ホーリン大尉とガリツェフ上級中尉は建物内でドイツ軍の処刑者写真リストを見つける。その 中に、スパイとして処刑されたイワンの姿があった。
 戦前、母親、友人と楽しく遊ぶイワンの姿が浮かんでは消える。

 

(2006/09/11)

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