戦争映画の一方的評論
 
「あゝ零戦 評価★★★ 日本の誇る零戦の栄枯盛衰 
1965 大映 監督:村山三男
出演:本郷功次郎、長谷川明男、小柳徹ほか  
87分 モノクロ

 零戦もの、特攻ものの基本的映画。零戦の大活躍した時期から、時代遅れとなり特攻に使用されるようになるまでを、零戦を中心に描いている。従って、話の 展開がやや早めで説明的な物となっている嫌いはある。飛行シーン等はミニチュア特撮だが、当時としては画期的であったろうが、今見るとやはりおもちゃレベ ルでしかないのは致し方ない。
 主演は長谷川明男で、舌足らずのボンボン俳優本郷功次郎が隊長役。当時の映画全般にそうだが、全体に舞台芝居のような臭いセリフ、演技が展開されるのは やや違和感が伴う。しかし、臭い演技の中にも、本作は零戦にかけるパイロットの思いや、特攻に向かうパイロットの心情をしっかりと描いており、日本映画特 有の悲劇的なエンディングを迎えるのである。後日作の娯楽的零戦映画にありがちな、女性との絡みシーンがほとんどないのも好印象である。日本が誇る零戦 と、零戦に搭乗したパイロットへの鎮魂を込めて視聴したい真面目な映画である。

(以下ネタバレ注意)
 昭和17年、南方ラエ基地において海軍零戦は向かうところ敵なしの大活躍であった。指揮官は梶大尉(本郷)で、英軍スピットファイア相手に大戦果をあげ 続ける。そこに、夏堀中尉(長谷川)と峰岸二飛曹(小柳)が着任する。夏堀中尉は血気盛んな跳ねっ返りで、峰岸二飛曹はまだまだ子供だ。歴戦の勇士である 先任下士、徳永兵曹は二人の世話役としてつくことになった。
 連合軍の戦闘機性能向上と物量から、戦局は次第に零戦絶対有利ではなくなってきた。司令部は能力的に陰りが見え始めた零戦を爆装させ、戦闘攻撃機として 用いる方針を固める。これに反対する梶大尉は自ら爆装零戦の実験飛行に搭乗するが、事故により戦死してしまう。さらに、敵の空襲により峰岸二飛曹をかばっ た徳永兵曹も戦死する。
 梶大尉の思いもむなしく、零戦は爆装しての飛行を余儀なくされる。昭和19年9月、セブ島に大尉として着任した夏堀は、そこで同期である小関大尉と再会 する。しかし、その小関大尉も翌日の戦闘攻撃により戦死する。もはや零戦は不利に陥っていた。
 米軍のグラマン戦闘機の登場で、ついに零戦は絶対不利の状況に陥る。司令部はついに、敵艦体当たり攻撃「特攻」作戦を開始する。零戦、零戦パイロットも その例外ではなかった。
 昭和20年4月、南九州笠原基地に夏堀大尉は隊長として着任する。そこには峰岸一飛曹がいた。再会も束の間、峰岸一飛曹らは神風特攻隊として出撃するこ とに。司令部は夏堀大尉は後進の指導のために出撃からはずし、教育隊への転勤を命ずる。死に向かい峰岸は夏堀に思いを託した。「死ぬことは構わぬ。零戦だ けは最後の1機でも残して欲しい」。かつて徳永兵曹から叩き込まれた、零戦への愛だ。
 出撃隊員の一飛曹が、特攻への恐怖と緊張から混乱をきたす。刀を振りかざして、生き残る夏堀大尉に刃を向けるが、夏堀もまた部下を見殺しに出来ずに特攻 に参加することを聞き、ようやく心の整理がつく。
 ついに、米軍艦隊に向かって夏堀大尉、峰岸一飛曹らは爆装零戦で特攻に向かうのであった。

 最後は、お決まりだが、米軍撮影の特攻実写映像で締めくくられる。命つきた零戦と、零戦を愛したパイロットの最期。実に、もの悲しいエンディングではあ る。映画の物語性はもはやどうでもいい境地であり、零戦、そして日本海軍パイロットの冥福を祈らざるを得ないのであった。

(2004/11/25)

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★★★

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