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戦争映画の一方的評論
 
「大通りの店 評価★★★ ユダヤ人商店の管理人となっ た凡庸な大工の葛藤
OBCHOD NA KORZE /THE SHOP ON MAIN STREET
1965 チェコスロバキア  監督:ヤン・カダール、エルマール・クロス
出演者:
イダ・カミンスカ、ヨーゼフ・クロネル、ハナ・スリフコワ ほ か
128分 モノクロ 

 

 1965年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作。監督のヤン・カダールは親族をアウシュヴィッツ収容所で失った経験のあるチェコスロ バキア人。共産主義政権下のチェコスロバキア共和国で製作された作品である。
 チェコスロバキアはチェコ人とスロバキア人で構成される国家であったが、隣国ドイツ、ポーランドなどの外圧に常に苛まれ、1939年にはついにチェコが ドイツに併合、スロバキアがドイツ管理下として独立するはめになる。本作はドイツ管理下のスロバキアにおけるユダヤ人迫害問題を、ユダヤ人商店主の老婆と その 管理を任された平凡なスロバキア人大工の男の物語である。序盤は明るく、ジョークも交えたテンポで進むが、段々と東欧映画独特の陰気で惰性的な雰囲気が色 濃く漂ってくる。というのも、題材がやはりユダヤ人迫害であり、権力と富に翻弄され揺れ動く庶民の葛藤というものが主題になっているからである。本作に は、監督の深く沈痛な想いが込められているのを感じる。ユダヤ人問題を扱った幾多のドキュメンタリーよりも、物語調である本作は心に重く響いてくるし、ま してや冒頭の妙な明るさが後半に思い切り反動として返ってくるのがつらい。

 ただ、チェコスロバキアという国民性はまるで知らないのだが、本作に登場するスロバキア人の男とユダヤ人の老婆の性格、思考にはかなり違和感を感じた。 考え方や物事に対する接し方がかなりの部分で日本人である私と異なるため、映画の登場人物に対する感情移入という点ではほとんどできなかった。愚かしさを 感じたり呆れる事はあっても同情には至らない。それだけ、文化の違いもあるのだろうし、第二次世界大戦時のヨーロッパで起きた事象に対する知識的隔離があ るのだと感じた。残念ながら、それだけ心に響いてくるものが無かった点に、私の本作に対する評価が低い事由がある。ヨーロッパ人やしかるべき人が観れば高 い評価なのかもしれないが、あくまで私の評価という事でご理解願いたい。
 とはいえ、ユダヤ人老婆ラウトマン役を演じるイダ・カミンスカの演技は白眉もの。ユダヤ人の敬虔さや生真面目さがありありと伝わってくる反面、老獪さと いうのも垣間見えて来るのが凄い。また、凡庸な大工トーノ役のヨーゼフ・クロネルも本当に木訥とした小市民を好演している。決して善人でも聖人でもない彼 が権力と富と恐怖政治に翻弄されていく様は名演技である。この他、トーノの妻エベリーナ役のハナ・スリフコワは強欲で権力志向の典型例だが、最も人間らし い姿とも言える。

 本作は若干の叙情的、芸術的な雰囲気を持った作品でもあり、ニヒリズムも感じさせる。登場人物や時代背景についてはあまり解説をはさまない。衝撃的なエ ンディングシーンにしても多くを語らずに、視聴者に理解させようと言う意図が見える。この題材において、こうした手法は敬虔な西欧宗教的な心を持った人に なら受け入れられるであろうが、私にはどうしても受け入れがたいものがあった。そう言う意味で、なんとも微妙な評価になってしまうのだ。ちなみに、アメリ カの映画データベースIMdbで は8点を超すなど相当の高評価となっている。高評価のレビューを見る限りは、やはり宗教的な葛藤や感情に深い感銘を受けている様子が窺われる。また、厳し い共産主義下の検閲のもと、覆い隠された人道的な怒りをも見いだしてもいる。そう言う意味では、同じ社会主義国家のもとで名画「地下水道(1956)」「灰とダイヤモンド (1957)」「鷲 と指輪(1992)」「聖 週間(1995)」などを制作したポーランド人監督のアンジェイ・ワイダと良く似た雰囲気がするのも当然のことなのだろう。
 本作を見てどのような感想を持つだろうか。色々な人の意見を聞いてみたい作品である。
 

興奮度★★
沈痛度★★★★★

爽快度★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1939年スロバキアはドイツの管理下としてチェコスロバキアから独立する。1942年になりド イツからの命令でアーリア法に基づく、ユダヤ人隔離政策が行われようとしていた。
 アントニン・ブルトコ(通称トーノ)はごくごく普通の大工で、恐妻のエベリーナの説教にまいっていた。義兄のマルクス・コルコツキーはファシスト党の地 方支部長であり、広場に記念碑バビロンの塔を建設させていた。妻のエベリーナは義兄に頼んで塔の建設に参加させて貰うよう頼めと言うのだ。愛犬エッセンス を連れて広場に行くトーノだが、どうも義兄コルコツキーが好きになれない。
 ある日、突然コルコツキー夫婦が酒やご馳走を持参してトーノの家にやってくる。トーノにユダヤ人商店街の店の管理をやらせようというのだ。タダで店が手 に入ると聞いてエベリーナは大喜びするが、トーノは気に入らない。それでも、次第にコルコツキーにおだてられてその気になっていく。
 翌朝、指定されたユダヤ人ラウトマンのボタン屋へ出かける。そこには老婆の主人ラウトマンがいるが、耳が遠く、さらには世情に疎いため、トーノが新しい 管理人であると言う事を理解できない。挙げ句の果てには使用人と勘違いする始末だ。そこにやってきたユダヤ人に理解のあるイムロ・クハールの機転で、対外 的には管理人でありながら、実態は使用人として働き、ユダヤ人協会から給金を貰うということにする。妻には管理人であると嘘をつきながらの奇妙な関係が始 まる。
 しばらくはうまく立ち回っていたトーノだったが、次第にユダヤ人の強制収容所行きの話が持ち上がってくる。トーノはラウトマンを守らなければと言う気に なってくる。そんな矢先ユダヤ人を助けた罪でイムロが逮捕され拷問を受ける。ドイツにもファシスト党にも嫌気が差したトーノは、家で妻エベリーナがユダヤ 人を蔑視する発言を聞き怒って殴りつける。その足でラウトマンの所へ行き、隠れるよう示唆するが、ラウトマンは全く理解できず夫婦喧嘩してきたのだと勘違 いする始末。
 翌朝、広場にはユダヤ人が集められる。義兄コルコツキーの配慮なのか、ラウトマンの名前は呼ばれなかった。冷や冷やしながらラウトマンを匿っていたトー ノだったが、次第に逮捕されたイムロのことを思い出す。このままでは自分の身が危ないと思ったトーノは、ラウトマンに荷物をまとめて広場に行けと強要す る。驚いたラウトマンは抵抗し、初めて広場を見て事態を把握する。嘆き悲しむラウトマンの姿を見て、トーノは再び考えを改める。
 店の窓にコルコツキーが近づいたのを見て、トーノはラウトマンを慌てて小部屋に押し込む。コルコツキーが去ってラウトマンを呼ぶが返答がない。見てみる とラウトマンは頭を打って死んでいた。愕然とするトーノは、ラウトマンと手を取り合って広場を駆けていく夢を見ながら首を吊るのだった。


(2007/01/15)

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