戦争映画の一方的評論
 
続兵隊やくざ」 評価★★★ やくざ者兵卒とインテリ戦友活劇の第2弾
1965 大映 監督:田中徳三
出演者:勝新太郎、田村高廣、小山明子ほか
92分 モノクロ

 やくざ上がりの大宮一等兵とインテリの有田上等兵の織りなす、娯楽アクションシリーズの第2弾。前作は、軍隊から機関車を奪って の逃亡シーンで終わっていたが、まさにその続きである。せっかく逃げた二人だが、ゲリラの爆破攻撃で負傷。再び軍隊に戻されてしまうのだ。監督は何故か変 わっているが、内容的にも視覚的にも違和感はない。
 相変わらず、暴力シーンは満載で、大宮のみならず有田までもがボコボコに殴られる。前作以上に軍隊批判傾向は強く、中隊長や班長などの上官は汚く、犯罪 人扱いとなっている。特に、捕らえた中国人民間人の老人を初年兵教育と称して銃剣で刺し殺せと命令したり、中国人娘を強姦しようとするなど、いよいよ日本 に芽生え始めた自虐史観を垣間見たような気がする。それでも、まだこの時代(製作時)だからこそ、娯楽ものとして許されたのだと思う。
 本シリーズは、軍隊を上官命令絶対の無法地帯と捉えている。体罰、横流し、不正などが当たり前のように横行する軍隊で、生き延びるという絶対信念のもと に、正義をふりかざす主人公二人組の勧善懲悪的行動が受けるのであろう。良く考えてみれば、生きるために逃げたり、盗んだりと主人公側にも非がかなりあり そうな気もするのだが、そこは単純に楽しまなくてはならない。
 今作の見所は、大宮が惚れた看護婦緒方恭子の存在感と、上官の乙幹出身八木曹長と岩波曹長の確執であろう。大宮のドロドロした女を見る目は危険を感じる (笑)。また、両曹長の確執は軍隊内の下士官という中間管理職の立場を良く表している。このほか、芦屋雁之助、小雁の軍曹コンビも良い味を出している。
 蛇足だが、有田上等兵の大宮を見る目は相変わらず、ヤバい。

興奮度★★
沈痛度★★
爽快度★★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

  機関車を奪って脱走した大宮喜三郎一等兵と有田上等兵だったが、ゲリラの転覆爆破に会って負傷し、陸軍病院に収容される。憲兵の尋問にも会うが、有田の機 転で軍法会議を逃れる。また、大宮はそこで看護に当たった看護婦の緒方恭子に一目惚れ。
 傷も癒え、内地送還かと期待を寄せていた二人だったが、北支派遣軍4242部隊への配属が言い渡される。大宮は緒方恭子から下の毛をお守りとして貰って いく。
 4242部隊は野戦の実戦部隊であり、古参兵がゴロゴロいた。案の定、大宮は上官の制裁を受けるが、例のごとく相手の拳を痛めるだけ。さらに、一番風呂 で第3中隊の軍曹(芦屋)らが勝手に上官と勘違い。大宮はこの件で第3中隊からつけねらわれることになる。
 有田上等兵は、班長の乙幹出身八木曹長に、大宮を当番兵にしてくれるように頼む。当番兵ならば第3中隊に手出しされる事もないからだ。当番兵となった大 宮は、八木、岩波曹長の身の回りの世話をする。岩波曹長は売春婦染子を宿舎に連れてくるが、実は八木曹長は染子に惚れていた。岩波曹長の留守中に染子を上 げるが、そこに岩波が帰ってきて、八木と岩波の確執が勃発する。
 八路軍討伐に出向いた中隊は、もぬけとなった村で病気の老人と娘を捕らえる。岩波曹長は初年兵に初年兵訓練のために、老人を銃剣で刺し殺すよう命令す る。有田上等兵はこれに異論。大宮ら初年兵も背を向けたため、処刑は中止となる。しかし、中隊長多久島中尉、岩波曹長らは黒住兵長らに命じて、有田に制裁 を加える。怒った大宮だったが、これ以上やると有田が軍法会議行きになると聞き我慢することに。しかし、エロ中隊長が捕虜の娘に手を出そうとするのを察知 して、大宮は密かに逃がしてやるのだった。
 突如八路軍の襲撃がある。乱戦に紛れて岩波曹長は八木曹長を背後から射殺。この死を訝しく思った有田は、密かに岩波の拳銃弾を入手して調べることに。
 そこに、野戦配置となった緒方恭子がやってくる。緒方は中隊にいる弟と面会を申し出るが、中隊長はこれを餌に緒方を強姦しようと企む。間一髪のところで 大宮が助けに入り、大宮は中隊長を殴り倒す。岩波曹長は、この一件を軍法会議に処すといきり立つが、有田らは逆に八木曹長を貫いた拳銃弾の弾が岩波曹長の 拳銃と一致した事を逆手に、岩波曹長に詰め寄る。そして、有田と大宮はトラックを奪い、中隊を脱走するのだった。

(2005/12/28)

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