戦争映画の一方的評論
 
「砲艦サンパブロ 評価★★☆ 外国人排斥運動に巻き込まれる砲艦サンパブロ
THE SAND PEBBLES
1966 アメリカ 監督:ロバート・ワイズ
出演:
スティーブ・マックィーン、リチャード・クレンナ、リチャード・アッテンボロー、マコ ほか  
195分 カラー

 
 1960年代のハリウッド映画の特徴でもある、本編の前に音楽編があり、途中休憩ありの3時間以上にもわたる超大作。1942年のベストセラー小説「サ ンパブロ号の乗組員」の映画化である。
 1926年頃の中国を舞台にしており、撮影は台湾と香港で行われている。中国の植民地支配を目論む英米独仏等の列強に対して、中国国民党、共産党が内戦 を絡めながらも外国人排斥を繰り広げていく時代である。その歴史の流れに翻弄されるアメリカ海軍のオンボロ砲艦の乗組員の葛藤を描いたヒューマンドラマと なっている。内容的には、さほど多くのエピソードが盛り込まれているわけではなく、3時間という長さはかなり冗長な印象が強い。確かに、当時の中国におけ る時間の流れの遅さを思えば、うまく表現できているのかもしれないが、映画としてはちとつらい。60年代だからこそ許されたとも言える。

 主人公のマックィーンは寡黙で屈折した水兵を演じる。彼本来の性格そのままの適役であろうかと思うが、私個人的には好きになれないタイプである。その 分、どうしても思い入れが薄くなってしまった。この他、中国人労役夫役を在米日本人のマコが演じている。マコは助演男優賞候補にもなり、最近では「パー ル・ ハーバー」にも出演した演技派である。さらに、同僚役アッテンボロー、艦長役クレンナほか実に個性的な役者が揃っているのも特徴だ。冗長となりがちな中、 役者の演技力が光 る映画であり、その演技力は十分堪能できる。いわゆるリアルさを追求するのではなく、ヒーロー(スター)存在型のヒューマンドラマとしての楽しみ方となろ う。ただ、マックィーンと艦長役クレンナの心の葛藤については良く理解できない部分も多かった。

 登場する砲艦は、映画のために製作したもので、蒸気機関エンジンは別写しだが本物を用いている。CGや合成ではないリアルさがそこにはある。また、ワイ ズ監督のこだわりで撮影には相当力を入れており、天候や背景などは完璧である。上海を想定した人々の入り乱れるセットは見事である。アクション(戦闘) シーンは多少あるが、残念ながらこちらは期待できないレベル。
 ストーリーや視点に特別特筆すべきものはないが、現代の映画では再現できないような壮大な作風を堪能することが出来る貴重な映画であることは間違いな い。

興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★


(以下あらすじ ネタバレ注意)
 
 1926年中国。米英独仏などの列強が中国に駐留している最中、中国の自立を目指すため国民党、中国共産党が内乱をしながらも外国人排斥運動 を高めていた。
 アメリカ海軍の一等兵曹ホルマン(マックィーン)は、揚子江の小都市長沙に駐留する砲艦サンパブロの機関長として赴任する。屈折した幼少時代を過ごした ホルマンは、対人 関係を好まず、機関室でボスとなれる小規模艦の勤務を好んでいた。 
 ホルマンは砲艦に乗艦するが、二等兵曹のフレンチー(アッテンボロー)以外とは親しくならなかった。しかも、サンパブロでは艦長の意向により、甲板、機 関、食事その他全て を現地の中国人に任せており、機関室においてもチェンという男が実権を握っていた。ホルマンは、チェンを無視して自ら機関を操作するが、チェンの怒りを 買ったうえ、艦長コリンズ大尉からもたしなめられるのであった。
 しかし、ホルマンは、機関のベアリングとクランクに疲弊が生じていることを発見する。中国人ではまともなオーバーホールが出来ていないのだ。機関を停止 して修理を行うが、その過程でチェンが事故で圧死してしまう。中国人らはホルマンが魔力で殺したと不満を抱く。自ら操作したいと申し出るホルマンに、コリ ンズ艦長はチェンの後継者を育成するように指示を出す。ホルマンは仕方なく、若い中国人ポーハン(マコ)を養成し始める。

 まだ、中国人の外国人排斥が顕著でない長沙では、砲艦の任務は実に暇であった。上陸した酒屋でフレンチーは借金でホステスになった中国人女メイリーに一 目惚れする。しかし、身請けするには200ドルが必要だった。同じくメイリーを抱きたいスキーは、ホルマンが目をかけるポーハンに因縁をつけ、ひょんな事 からスキーとポーハンが決闘することとなった。フレンチーはポーハンに有り金を賭け、200ドルを得ようと試みる。
酒に酔ったスキーにポーハンはなんとか勝つ。しかし、その時緊急招集がかかる。ついに、中国共産党と英軍が衝突したのだ。

 砲艦サンパブロは揚子江を上り、保山へアメリカ人伝道団の保護に向かうこととなり、伝道士のジェームソンと若い女性シャーリーを保護する。しかし、艦に 乗船したところで中国共産軍がポーハンを捕らえて処刑を始める。ホルマンに不満を抱く中国人がポーハンを上陸させたために捕まったのだ。中国人との交戦を 避けるため、艦長は身代金を提案するが共産軍は聞き入れない。刀で切り刻まれ苦痛にうめくポーハンをホルマンは銃で撃ち殺してやる。

 長沙に戻ったサンパブロだったが、長沙はすでに国民党に支配されていた。活動を制限された乗員達だったが、フレンチーは200ドルを払ってメイリーを身 請けし、禁じられていた中国人との結婚をする。夜闇に紛れて無理に泳いでメイリーのもとに通うフレンチーだったが、ついに病気で死んでしまう。後には身ご もったメイリーが残された。ホルマンは伝道所のジェームソンに身を預けようとするが、押し入った中国人にメイリーは殺されてしまう。
 さらに、国民党はホルマンを殺人者に仕立て上げ、艦長に引き渡しを要求する。アメリカ軍との交戦の口実を作るためだ。ホルマンに不満を抱く船員らはホル マンに自首するように詰め寄るが、艦長は自首させない。艦長自身もホルマンを問題視してはいるが、軍人として部下を渡すわけにはいかない葛藤があったの だ。

 そして、ついに南京で国民党がアメリカ人を殺害。上海にアメリカ海兵隊が上陸する。砲艦サンパブロにも上海に向かう命令が出るが、艦長はホルマンの不祥 事を闇に葬るため、あえて命令を無視して上流へ伝道団保護に向かうこととする。
 上流には中国国民党が小舟を繋いだ封鎖線を設けていた。砲艦サンパブロは交戦突破を図る。砲撃戦、銃撃戦、白兵戦を繰り広げ、複数の死者を出しながらも 突破。伝道所には艦長以下ホルマンら4名が救出に向かうことに。ところが、伝道所のジェームソンは避難を拒否する。アメリカ国籍離脱をしたので身は安全だ と言い張る。しかし、追撃してきた国民党兵士にジェームソンは射殺されてしまう。残ったシャーリーをサンパブロに安全に護送するため、艦長自らが身を挺し て敵を食い止める役を買って出る。しかし、艦長はあえなく戦死。次にホルマンがその役を買って出るのだった。ホルマンの身を案じながらシャーリーはサンパ ブロに向かった。ホルマンはたった一人で国民党兵士と戦うのだった。

(2005/03/18)

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