「連
合艦隊司令長官 山本五十六」 評価★★ 円谷特撮の終末期作品
1968 東宝 監督:丸山
誠治
出演:三船敏郎、稲葉義男、藤田進、黒沢年男ほか
128分 カラー
DVD検索「連合艦隊司令長官 山本五十六」を探す(楽天)
大日本帝国海軍連合艦隊司令長官、山本五十六元帥の半生を描いた伝記的ドラマ。山本元帥を題材に
した映画は、「軍神山本元帥と
連合艦隊(1956)」、「連合艦隊(1981)」など結構あり、特に「軍神山本
元帥と連合艦隊」とは内容的にかなりかぶる所がある。これらと比較して本作は特に傑出した出来ではない。しかし、艦船攻撃シーンや空中戦シーンで円谷特
撮が取り入れられており、飛行できるレシプロ実機をすでに持たない日本映画としては、迫力を出そうと奮闘した映画ではある。
内容構成的には、史実に忠実に素直に作り上げられており、長官の結末がわかっているが故に、見ていてちょっとつらいし、物足りない。三船敏郎扮する山本
長
官の演技力はさすがで、威厳と優しさと苦悩を実にうまく演じている。他の役者もなかなかはまっており、そういう意味では完成度は決して低くはない。個人的
には、石山
健二郎演ずるガダルカナル島守備隊の百武司令官が好きで、泣き入りそうな演技が実にリアルなのだ。反対に南雲中将役の藤田進はちょっと今ひとつかな。
話の展開は今更書くまでもないだろうが、日独伊三国同盟締結の反対、日米開戦回避の努力を経て、真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、第二次ソロモン海海戦、
南太平洋海戦、ガダルカナル島撤退作戦、ラバウル司令部移動、一式陸攻での撃墜死までを淡々と描いている。この中で、ミッドウェイ海戦での混乱や、最後に
長官
搭乗の一式陸攻が地上激突炎上するシーンなどで、史実と若干異なっている所もあるようだ。こうした戦史的な逸話のほかに、山本長官の長岡帰省シーンで
船頭の船での逆立ちや、長官の後押しで士官になれた爆撃機搭乗員(黒沢年男)との対面など、有名な逸話が挿入されて全体のバランスをとっている。
円谷による特撮だが、真珠湾攻撃シーンの多くは「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(1960)」の流用のようだ。ハワイの谷間を攻撃隊が通過する
シーンで樹
木が揺れるなどの特撮効果が有名だ。米艦隊への航空機攻撃シーンや艦船攻撃シーンで一部新たに撮影されてはいるようだが、若干おそまつな印象は拭えない。
また、ミッドウェー海戦シーンでは「太平洋の翼(1963)」からの流用シーンも用いられている。山本長官機撃墜の一
式陸攻対ライトニングの空戦シーンは、リアルとまでは言えないがそこそこの出来。
全般に、東宝が取りあえず戦争物を作ったと言う程度のものでしかなく、山本五十六元帥モノならば「連合艦隊」の方をお勧めするし、円谷特撮としてもかな
り物足りない出来具合の作品であった。
興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意)
(2004/06/16 2009/2/16修正)
|
|