戦争映画の一方的評論
 
「熱砂の戦車軍団 評価★★ イタリアン戦争アクション!? 
LA BATTAGLIA DEL DESERTO
1969  イタリア 監督:ミーノ・ロイ
出演:ロベール・オッセン、ジョージ・ヒルトンほか  
90分 カラー

 真面目な戦争映画なのか、おちゃらけた映画なのか理解に苦しむ映画。そもそも、英軍と独軍のアフリカでの戦いをイタリア人が製作するとい う、ちょっとイレギュラーなもので、英軍兵士はイタリア語、ドイツ軍兵士は字幕という時点で結構違和感。全体を通してみれば、戦争の愚かさと人間の浅はか さと拙い友情を描く、ヒューマン仕立てになっているのだが、そこに至るまでの過程に「イタリアーノ魂」が炸裂しまくっているのだ。登場人物は英軍兵士5名 に独軍兵士2名なのだが、全員の過去へフラッシュバックするのはいいが、全て「おねえちゃん」がらみなのだ。無駄なヌードシーンやエッチシーンがごそっと 入ってきて、それまでのリアルな戦争シーンがぶっ壊されること請け合い。それならそうで、おちゃらけムードで最後までイタリアーノとラテンの乗りで終われ ばいいのに。まあ、これがイタリア戦争映画(マカロニウエスタン)と呼ばれる由因な訳ですな。
 戦車は結構な数が登場し、砂漠を疾走するシーンはそれなりの迫力。イタリア軍とリビア軍の協力があったそうだ。ドイツ軍もイギリス軍もほとんどがM24 チャーフィーだが、一部にM36BI(M4シャーマンシャーシにオープントップの90mm砲にしたもの) とM47パットンらしき姿も認められる。
 音楽は、独特のマカロニウエスタン調。妙に耳に付くやや哀愁を帯びた曲である。

(以下ネタバレ注意)
 1942年北アフリカ。ドイツ軍の優勢に押されていたイギリス軍は苦肉の策で、地雷原を展開し、それを避けたドイツ軍をルエイサト山地で待ち伏せし、一 網打尽にしようと言う計画を立てる。十万個の地雷を敷き詰める無謀な任務をブラッドベリー大尉が指揮することに。5人1班で20班が1時間に100個以上 を埋め込む作業を2日間でするのだ。約8割が完了したとき、作戦本部との通信が途絶えた。不審に思ったブラッドベリーは帰隊するが、そこはドイツ軍に壊滅 されていた。
 やむなく、ルエイサトの本隊に合流するしかないと考え、ブラッドベリー大尉は移動を開始するが、ドイツ軍装甲車に攻撃され、ついに大尉以下5人になって しまう。チャーリーが負傷し、ドイツ軍へ投降を決意するが、ドイツ軍装甲車側も車輪を破壊され、ハインツ大尉ら2名のドイツ兵が投降しようとしていた。共 に、孤立した彼らは食料と水を持つドイツ軍とジープを持つ英軍が寄り合うことになる。
 互いに、牽制しあいながらも味方陣地へ向かうが、次第に水が欠乏を始め、負傷したチャーリーの様態が悪化する。水を巡って7人は次第に険悪なムードに。 ついに燃料が切れ、英独2人の大尉が徒歩で救援を求めに向かうことに。負傷したチャーリーは悲観の余りに自殺。残った4人の英独兵卒は水争いをしたあげ く、気がおかしくなった英軍兵卒レッドが独り占めする。一方、ハインツとブラッドベリーだが、恋人を殺された恨みで英人を信用しないハインツが逃亡。それ を追ったブラッドベリーのところに独軍戦車が現れる。さらに、気の狂ったレッドが現れ、ドイツ兵を射殺するもブラッドベリーの手で殺される。ブラッドベ リーを捕虜としたドイツ軍戦車だが、英軍と独軍の戦車戦に巻き込まれる。英軍戦車により被弾した二人は戦車外へなんとか出るが、ブラッドベリーが戦車に押 しつぶされそうになる。それを助けたのはハインツだった。

 なんだか、最後は妙にシリアスになってしまったのだが、全体として後半は水争いのエゴイズムの描写が描かれており、シリアスベース。物語 もめまぐるしく主従関係が展開し、結構複雑で単調ではないので、映画の構成の仕方次第では名作にもなり得たかも知れない。それだけに、前半のあり得ない展 開と、おねえちゃんがらみのフラッシュバックシーンは必要ないだろう。まあ、それをなくしたらイタリア映画じゃなくなっちゃうんだけど。
 戦闘シーンは戦車がそれなりの台数が登場するので、まあまあの迫力。しかし、殆どが改装なしのM24チャーフィなので独英軍の区別もつきにくいし、 ちょっと近代戦ぽすぎるのが難点。

(2004/11/12)

興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★


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