「激戦地(特攻ノルマンディ)」 評価★★★ ノルマンディ作戦前、後方攪乱に上陸したコマンドー
LA LEGIONE DEI DANNATI/BATTLE OF THE COMMANDOS/LEGION OF THE DAMNED
1969
イタリア 監督:ウンベルト・レンツィ
出演者:ジャック・パランス、クルト・ユルゲンス、トム・ハンター、ウォルフガング・プライスほか
74分 カラー
本来は94分ということだが、テレビ用に74分に短縮された日本語字幕版をGyaoで見た。英米連合軍のノルマンディ上陸作戦に先んじて、英軍コマンド部隊が先行して上陸しドイツ軍の列車砲を爆破する任務を描いたものだが、英米連合軍対独軍の戦いなのにイタリア製作。バリバリのマカロニコンバットで、主演のジャック・パランスはコメディチックでもあり渋くもある。最近は重めのヒューマンドラマ系を多く見ていたためもあり、軽快でハチャメチャのアクションは爽快だった。そのため、ちょっと評価も高めかも(汗)。
マカロニコンバット系は結構明るく軽快な展開でありながらも、最後はドーンと暗く落ち込むことになるのが多いのだが、本作も内容自体は結構シリアス。特に、ラストシーンは戦争とは何かを考えさせるオチがある。それまでの軽く脳天気な展開と登場人物の性格付けは何だったのか、というアンバランスこそがマカロニコンバットの真骨頂でもあるのだ。
画像はかなり粗めで時代を感じさせるものだったが、音楽は明るく楽しいテンポ。画面からの迫力や美しさを追求するものでなく、ノリとテンポを楽しむものなのだろう。従って、銃撃戦や格闘戦は二流アクション映画並み。腰だめ射撃こそはなかったが、ドンドンバリバリとドイツ兵をなぎ倒していく。その割に味方兵もやられてはいるのだが・・。
意外にも秀逸だったのは潜水艦内部とドイツ軍列車砲。戦車などの戦闘車両はM3?装甲車?とパットン戦車らしきものがほんの一瞬だけで、金かけてないのがわかるが、潜水艦は実物実写で、特に艦内の映像がリアル(本物だからね)。この潜水艦はイタリア海軍「レオナルド・ダ・ヴィンチ(S-510)」で米軍のガトー級潜水艦「デイス」が1954年に供与されたものらしい。皮肉にも、デイスは太平洋艦隊に属し、多くの日本軍輸送船を撃沈したほか1944年に重巡摩耶を撃沈した潜水艦でもある。また、ドイツ軍列車砲は実物大のものが実際に線路上を動いている。長大な砲がかなりリアルに出来ている。この辺りは妙に凝っているなあという印象。このほか、ドイツ軍水雷艇の機関砲の発射シーンが音といい動きといいリアルでいい。
マクファーソン大佐役ジャック・パランスはボクシングの竹原似の独特な風合い。今ひとつ凄みはないが、陰のありそうな渋みがよく出ている。米軍大尉役のトム・ハンターは特に印象的ではないが、チャラチャラしつつやる時はやるというのが米国人のイメージなのだということが良くわかる設定。その他のごろつき隊員たちは折角の性格設定がある割に、活かされていなかったのは残念。もしかもすると、カットされた場所にそう言うシーンがあったのかもしれない。ドイツ軍アッカーマン大佐役のウォルフガング・プライスは「ロンメル軍団を叩け(1970)」ではロンメル将軍役。堅物のイメージが強く、本作では無能な上官に反抗する律儀な男に描かれている。マクファーソン大佐とは仇敵という設定で、最後の両者の対決までが一つのテーマになっている。ただ、このテーマ性が逆に本作の戦争映画のバランスを崩している要因でもあるのだが。
この他、興味深かったのは地元フランス女性を用いて英独軍がニセ情報戦をしかけるところ。実際の戦闘でもこうした情報戦は数多くあったそうだが、情報の信憑性をいかに素早く判断するかという技能が戦時にはいかに重要かがわかる。
マクファーソン大佐の副官にはハビンダ軍曹がいるが、彼はターバンを巻いたインド兵。インド兵は英軍とともに、アフリカ、イタリア戦線で戦っており、マクファーソン大佐の前任部隊はアフリカ戦線で壊滅したことになっているので、その時からの部下という設定なのだろう。
ストーリーや映像を考えると、どうってことのない作品だが、気負うことなく見る事が出来、見終わった後の爽快感。これぞ戦争映画って印象を得た作品であった。
(左)M3?装甲車? (中)潜水艦「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 (右)列車砲
興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★★★
感涙度★