戦争映画の一方的評論
 
「与太郎戦記 評価★★★ 落語家出身兵卒のドタバタ劇
1969 大映 監督:弓削太郎
出演:
フランキー堺、春風亭柳橋、露口茂、柳家金語楼、梅津栄、菅井キンほか 
80分 カラー

 春風亭柳昇の実体験原作をもとに製作されたコメディ映画。落語家の原作だけに、春風亭一門の落語家が大御所から若手まで勢揃いし て出演。フランキー堺のコメディタッチな演技とともに、全編に笑いがあふれている。この与太郎戦記シリーズは、「続与太郎戦記」「新与太郎戦記」「与太郎 戦記女は幾万ありとても」の4本が製作されている。
 基本的なストーリーは、童貞の主人公が、軍隊に入って如何様に童貞を捨てようかと試行錯誤するものなのだが、単にスケベな展開になるのではなく、様々な エピソードをからめて、ストーリーも演出もなかなか良く練られている。ただ、本作の終わり方はいきなりスパッと終わってしまうので、次作「続与太郎戦記」 とセットで見ないと、消化不良かもしれない。
 演技という点では、フランキー堺の演技力が突出している反面、落語家面々の演技は、棒読み、落語調などガクッとくるものがある。特に、師匠役の春風亭柳 橋などに至っては、完全なる落語調。まあ、これも落語家勢揃いという、ご愛敬と思えば許せる。そんな中、キラリと光るのが露口茂の渋い演技。男気があっ て、超格好いい役柄なのだ。梅津栄のオカマ役も見逃せない。菅井キンの雄叫びもすごい。
 コメディ映画なので、登場する兵器類には期待できない。だが、体験手記だけに、軍隊内部の上下関係など、逸話が多々登場するので、なかなか興味深いの だ。


興奮度★★
沈痛度★
爽快度★★★★
感涙度★

(以下 あらすじ ネタバレ一応注意)

 駆け出しの落語家秋元与太郎は、徴兵検査で甲種合格を果たして、陸軍に入隊する。しかし、生来おっちょこちょいの与太郎は、様々な騒動を巻き起こすの だった。
 陸軍の新兵と古参兵とでは行って帰ってくるほどの差がある。服が合わないと言えば、体を服に合わせろ言われる始末。
 そんな中、新兵与太郎は、古年次兵(2年兵)の世話を命じられる。その2年兵は伊藤一等兵(露口)といい、無口で強面だが、何かと与太郎の面倒を見てく れるのだった。ある時、風呂の帰りに兵内靴が見あたらなくなった与太郎に、そこにあった靴を一つつかんで履いていけと言ったのも伊藤だった。しかし、その 靴は週番上等兵のもので、怒られそうになった与太郎の代わりに伊藤一等兵は殴られるのだった。
 そんな与太郎だが、落語家だったこともあり、中隊長以下様々なところで落語を演じさせられる羽目に。全く笑わない中隊長に、笑いすぎる古参兵。
 ある時、火薬工場に分遣隊として派遣されることとなった。近藤兵長と二名一斑で民泊するが、そこで若い娘千恵子に一目惚れする。夢の中で夜ばいをかけて 童貞喪失を試みる有様だった。
 分遣勤務から戻り、与太郎も一等兵になったが、伊藤一等兵は戦地に赴いていった。さらに、補充兵の新兵が入り、与太郎も世話を受ける身になった。与太郎 は調子に乗って、態度のでかい田熊二等兵を叱りつけるが、彼は懲罰で二等兵格下げになった六年兵だった。平謝りの与太郎だったが、実は田熊二等兵はオカマ だった。
 与太郎はある時、脱柵した二等兵の捜索のため、准尉とともに遊郭に出かける。そこで、遊女につかまって、准尉は事を済ませることとする。持ち金のない与 太郎は、落語を演じて代金の代わりにしてもらうことで、童貞喪失の機会を得るが、先に済ませた准尉の帰りに間に合わず、また童貞を捨てる事が出来なかっ た。
 また、与太郎は歩哨任務の際に、近所の若夫婦の情事を目撃。覗きに行ったが、逆に捕まって営巣入りになる。
 ところが、営巣入り一日で釈放される。というのも、連隊が中国戦線へ出動したのだ。前線には慰安所があり、与太郎も筆おろしするために列に並ぶ。しか し、次の番というところで、斥候・地雷除去任務を言い渡される。
 部下を連れ、夜闇に紛れて敵地雷の除去を図る。途中の部落でラーメンを食べて戻るが、ラーメン屋の密告で中国軍と戦闘状態にはいる。与太郎は腕を撃たれ るが、なんとか敵を撃退。与太郎は野戦病院に入院する。
 病院には美人看護婦がいた。看護婦にちょっかいを出す与太郎だが、なかなか相手にされない。しかも、看護婦に出した求愛の手紙が、不手際で中年婦長(菅 井キン)に渡ってしまう。与太郎の求愛に燃えた婦長に貞操の危機を感じた与太郎は、原隊復帰を熱望して前線に戻っていくのであった。

(2005/05/06)

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与太郎戦記 与太郎戦記

著者:春風亭柳昇
出版社:筑摩書房
本体価格:780円
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