「キャッチ22」 評価★★★ ブラック・コメディタッチの
戦争の狂気
CATCH-22
1970 アメリカ 監督:マイク・ニコルズ
出演:アラン・アーキン、マーティン・バルサム、マーティン・シーンほか
120分 カラー
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マイク・ニコルズ監督が手がけた、第二次世界大戦の在イタリア米軍爆撃基地を舞台とした、「反戦的要素の強いブラック・コメディ」・・・とよく映画評に
は載っている。確かに、映画の当初は、不思議な登場人物が次々登場し、トラブルで爆発炎上する部下の爆撃機に見向きもせずに立ち去る部隊長など、何が起
こっているのかわからないほどのブラックコメディタッチ。
うーん、ストーリー展開やブラック・コメディの意図するところが全然見えてこないなあ、と眉をしかめているうちに、映画はなんだかシリアスなストーリー
展開になっていくのだ。
正直言って一度見ただけでは、何だかわからない(汗)。私が視聴したDVDには、監督の解説つきバージョンが付いており、これを見て初めて何を意図して
いるのかがわかった。それだけ、映画の意図と、シチュエーション設定の意味が難解なのだ。まあ、監督も相当悩んだようではあるが(笑)。
実はこの映画、原作がある。ジョーゼフ・ヘラーという、実際にイタリア戦線に航空士として参加した人の「キャッチ-22」という小説が原作で、邦訳版と
して出版もされている。このわかりにくい展開はマイク・ニコルズ監督の手法かと思いきや、実はこの原作からして混乱した内容なのだそうだ。回想的なエピ
ソードが、時系列を無視して幾度も繰り返されたり、登場人物が皆狂気の沙汰だったり。なるほど、監督はこれを表現したかったのだなとようやく理解できた。
とはいえ、全く時系列やストーリー無視かと言えばそうでもなく、しっかりとエンディングまであるのが更に混乱を増す。
話は大戦末期のイタリア降伏後のイタリア。ピアノーサ島にある米軍B-25ミッチェル爆撃隊基地が舞台となっている。当時の爆撃任務はドイツ本土爆撃が
主たる目的で、極めて危険な任務であった。生きて本国に帰るには、規定の爆撃任務回数をクリアするか、狂気で病院送りになるかしかないのだ。
ところが、この基地ではキャッチ22という裏規律に縛られている。キャッチ22とは「「出撃免除を申し出る者は正気である。本当に狂気のものは出撃免除
を申し出ない」というもので、狂気を装って出撃免除をしようとしても出来ない仕組みなのだ。さらに、部隊長は通常25回の出撃上限を勝手に80回まで伸ば
してしまうのだ。
こうしたハチャメチャな基地において、無謀な上官、私欲を肥やす者、何故か撃墜されても生還できる兵など多彩な人物が登場してくる。
正直、複雑怪奇なストーリーはうまく表現しきれないのだが、きちんとエンディングはある。見終わるまでは何が何だかわからないのだが、終わりにはある程
度理解ができるような仕組みだ。また、フラッシュバックやモンタージュと言う手法を多様しており、映画自体はかなり奥が深いというか、詰め込んである感じ
がする。これを十分に理解するためには、是非DVDの特典解説をご覧いただきたい。映画製作の裏が良くわかって愉しいのだ。
兵器的にはB−25ミッチェル爆撃機がふんだんに出てくるなど大がかり。ロケ地メキシコに実機を持ち込んだようだ。飛行シーンも実写が多く、編隊離陸
シーンは密集しすぎてかなり危険だったようだ。また、機内のシーンなどはプロジェクション(背景を別写しする)という手法を取り入れている。
このほか、ローマ市内に出てくる戦車はプラスティック製だとか。一人で持ち上がるそうだ(笑)。
相当難解な映画であることは確かだが、見応えがあるというのも事実。ブラック・コメディで十分に笑うことも出来るが、それ以上に戦争の狂気というものも
感じさせられ、見終わった後はやや憔悴気味かも。
蛇足だが、キャッチ=落とし穴という訳になっている。マーティン・シーンはチャーリー・シーンの父。
興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
第二次大戦末期のイタリア降伏後。イタリアのピアノーサ島にある米軍B-25ミッチェル爆撃隊基地が舞台。爆撃手のヨサリアン大尉は死の恐怖から狂気を
装って出撃免除を試みるが、ここには「出撃免除を申し出る者は正気である。本当に狂気のものは出撃免除を申し出ない」という軍の裏規律「キャッチ22」に
支配されており、認められない。
さらに、部隊長の大佐、副官の中佐は自分たちの名誉のためだけに25回の規定出撃数を50回、80回と勝手に伸ばし、隊員
達の不評を買っている。軍物資を横流しして会社を組織して利益をあげることに執着するマイロー中尉。このほか、墜落するがいつも生還するオア大尉。自分の
ことしか考えない軍医大尉。変わり者の牧師大尉など、出てくる人物が何らかの欺瞞と狂気に満ちている。また、映画の中では狂気のエピソードが満ちている。
裸で勲章授与を受けるヨサリアン。商売のため敵国ドイツと契約して自軍を爆撃させる大佐とマイローなど枚挙にいとまがない。こうした中で、ヨサリアンの友
人オア大尉がついに撃墜死する。他の友人たちも死んでいく。失意の中でヨサリアンは大佐と取引し本国送還に妥協するが、死んだ友人の恋人に逆恨みされて刺
されてしまう・・・・
(2004/05/15)
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