戦争映画の一方的評論
 
「ジョニーは戦場へ行った 評価★★ 意識だけの肉塊となった負傷兵
JOHNNY GOT HIS GUN
1971 アメリカ 監督:ダルトン・トランボ
出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ジェイソン・ロバーズほか 
112分 モノクロ・カラー

 第一次世界大戦で延髄と性器を除いて全ての器官を損傷し、何も見えず、何も聞こえず、何も話せなくなったアメリカ兵の感情と葛藤を描いた異色作品。監督 は1947年のハリウッド赤狩りで追放されたダルトン・トランボの復帰後監督第一作。それだけに、反戦映画としても知られているが、私としてはそうは思え ない。こうした植物人間状態は何も戦争だけが原因でなるわけでもなく、交通事故でも病気でもあり得る話である。そう言う意味で反戦的メッセージは顕著に見 えてこない。では、軍部批判かといえば、確かに軍は植物人間となった彼を人体実験としている設定なのだが、それもまた強烈なものではない。実は、この映画 は実際に第一次大戦で四肢と感覚器を失った英軍将校がいたという実話をネタにしており、多分に興味本位的な要素がある。人間の欲望、生きる権利、生への執 着など命の尊厳という観点が強く出されているものだ。反戦という観点で見ても面白くはない。
 映像は現在の植物状態をモノクロ、はつらつと生きていた過去をカラーで表現している。通常なら反対にするのだが、つらく暗頓とした現状をモノクロで表す 事で効果的であると言える。ただし、現在と過去のシーンがかなり頻繁に入れ替わる上、過去の回想シーンは叙情的、象徴的なものが多く少しわかりづらいかも 知れない。従って、盛り上がりもなくだらけた映画となってしまっている。
 題材や映像手法が斬新なだけに評価は大きく二分されそうな感じである。私個人的には好きになれない映画ではある。触れてはいけないタブーに踏み込んでい るような気がするのである。安楽死や尊厳死などに通じる、結論のない深淵な深みにはまっていきそうだ。本作が好きな人も嫌いな人もすべからく重い気持ちに させること請け合いである。
 戦闘シーンとしては、瀕死を負った原因の砲弾弾着シーンや塹壕内の映像がある程度。

興奮度★
沈痛度★★★★★
爽快度★
感涙度★

(以下あらすじ ネタバレ注意)

 アメリカコロラド州の青年ジョーは第一次世界大戦出征のため徴兵された。しかし、敵国の砲弾によってジョーは瀕死の傷を負い、姓 名不詳の兵として軍病院に運び込まれる。延髄と性器以外は全て損傷し植物人間状態だった。しかし、意識だけははっきりしており、ジョーは出征前の恋人カ リーンとの一夜を思い出していた。
 軍医は死者と同様、意識もないジョーを生かしておくのは他の患者を救うための実験であると言い放つ。ガクガクと定期的に動くのは条件反射だとも言う。
 ジョーは次第に両腕も両足もないことに気づく。さらに目も、歯も舌もないことに愕然とする。意識はあるが、外界で何が起こっているのかもわからず、意志 を伝えることもできない。人が歩く振動によって誰かが来た事がわかる程度だ。
 看護婦の一人が窓を開放する。日差しが差し込みジョーの顔に当たる。温かい。日射しだ!太陽を感じでジョーはかつての楽しい日々を思い出した。さらに、 爆撃を受けた瞬間も思い出した。英軍の隣にいて、ドイツ軍の遺体処理を命じられて塹壕外に出たところを直撃されたのだ。
 クリスマスの日、ジョーの面倒を見る看護婦がジョーの胸を拭きながら、MERYと文字をなぞる。ジョーは今日がメリークリスマスだと理解できた。今日か ら日付もわかるようになったのだ。しかし、意志の伝達ができない。そこでジョニーはモールス信号を送る事を思いつく。
 ジョーは僅かにうごく頭の動きでS.O.Sを送り続ける。それを見た看護婦が軍医らを呼ぶ。将校はモールス信号である事に気づいた。将校は何を求めてい るかを尋ねる。すると、ジョーは「外に出たい。自分に唯一出来る事は見せ物として自分の姿を見せる事だ」と答える。将校は軍の体面上できないと言う。 ジョーは「さもなくば殺してくれ」と言う。しかし、将校は窓を閉め、看護婦らにも一切の他言を禁じる。それを見た神父はあきれかえり、看護婦も密かに生命 維持装置をはずそうと試みるが、将校に見つかり退室を言い渡される。再びジョーに暗闇の世界が訪れる。
  
(2005/08/30)

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