「レッド・バロン」 評価★★★ 複葉戦闘機の大空中戦
VON RICHTHOFEN AND BROWN THE RED BARON
1971 アメリカ 監督：ロジャー・コーマン
出演：ジョン・フィリップ・ロー、ドン・ストラウドほか
９６分 カラー（日本語版 ７２分）
第一次世界大戦におけるドイツ軍の紳士的パイロット、マンフレッド・フォン・リヒトホーフェンの
話。その紳士的姿勢と撃墜数、彼の乗機であった深紅のフォッカーDr.Iから「レッド・バロン（赤い男爵）」と称され、ドイツでは称えられ、英国からは恐 れられた。
しかし、時代と共に紳士的な戦闘は次第に非人間的な戦闘に移行していき、彼の立場も次第に悪くなっていく。派手な複葉機戦闘機の空中戦とともに、人間性 を失っていく英独空軍の内部も描いている、テーマとしては決して軽くない映画だ。
第一次世界大戦のことはほとんど知識がないので、詳しいことはわからないのだが、リヒトホーフェンの生涯戦歴についてはほぼ史実通りに作られているよ うだ。ただし、最期の撃墜死については異論もあるようである。
一騎打ちの騎士道的な空戦が、徐々に編隊戦、囮作戦、奇襲作戦と変化していく様が良くわかる。目には目をという報復心が戦争を泥沼化、悲惨化させていく といういい例である。本作では、イギリス空軍のブラウン中尉とドイツ空軍のゲーリングがその引き金として描かれている。
最も残酷な空中戦は第一次大戦の複葉機戦である、と言われるように執拗な空中機動と射撃によって人体の直接損傷が著しい空中戦は勇壮さとともに悲壮感 も 漂う。低予算映画で知られるコーマン監督だが、本作も低予算ながらも、実に多彩な複葉機実機が登場する。どうも、映画「ブ ルー・マックス」「暁の出撃」で使用された航空機を借用することで安くあげたとか。さらに、撮影方法にも工夫を凝らし、高い塔とヘリ、低速航空機 を駆使した撮影は見事だ。空中戦シーンも実写だし、機内のパイロット越しの映像も全て空中の映像だとか。もちろん撮影用の機は復座で前に操縦士、後ろに俳 優で、間にカメラが入る。操縦はアイルランド空軍とアメリカ人元パイロットだそうだ。
実機で登場する航空機はドイツ軍ではアルバトロスD1〜D5？、フォッカーD.7もしくは ファルツD.12？、後退翼のフォッカーD.5、三葉機のフォッカーDr.1。イギリス軍機ではデ・ハビラントSE5、ソッピース・パップ？だ。複葉機は 良くわからないので違うかも知れないのでご容赦を。ＣＧではない、めまぐるしい飛行映像はそれだけでも必見。特にカラフルで多彩な機種のドイツ軍機の編隊 シーンは見物。ちなみに、映画中飛行・空中戦のシー ンは約半分近くもある。
（以下 ネタバレ注意）
第一次世界大戦最中の1916年9月、ドイツ軍パイロット、リヒトホーフェン少尉（ロー）は、ベルケ少佐率いる中隊に配属となる。新人のリヒトホーフェ ンはベルケ少佐に操縦技術を教わり、徐々に撃墜マークを増やしていく。同僚の中には、後に第二次世界大戦でドイツ空軍を率いるゲーリングがいた。
一方、対するイギリス軍は「騎士道精神」を重んじる空軍であったが、現実的なカナダ人のブラウン中尉（ストラウド）が着任すると徐々に変化が見え始め る。
ある日の空戦で、ベルケ少佐はイギリス軍の隊長ホーカー少佐機に追撃された際、助けようとしたゲーリング機に引っかけられて墜落死。怒ったリヒトホー フェンはホーカー少佐を撃墜する。
これを機会に、リヒトホーフェン大尉はブルー勲章を授与され、ベルケ少佐の代わりに第１１戦闘隊中隊長になる。さらに司令部の迷彩塗装をしろとの命令に 従わず、かえって派手で目立つカラー塗装を施すのだった。リヒトホーフェンの機も深紅に塗り「レッド・バロン」の異名を取るのだった。
リヒトホーフェンは空戦で負傷し、療養のため戦線離脱している間に、戦局はドイツ軍劣勢となっていく。
イギリス軍内部では、ブラウン中尉の現実的な意見が主流を占めていく。もはや騎士道の時代ではないとし、囮作戦、夕食時の奇襲、病院への攻撃を厭わない 非人道的な攻撃を仕掛ける。
リヒトホーフェンは反撃を行うが、ゲーリングが戦列を離れて病院を攻撃したことに激怒する。しかし、ドイツ軍司令部は劣勢の空軍をより強力にするため、 紳士的なリヒトホーフェンのやり方に不満を持ち始める。引退を勧められるが聞かないリヒトホーフェンは、1918年4月、ついにブラウン中尉との空戦で命 を落とすのだった。
(2004/12/06)
興奮度★★★★
沈痛度★★★
爽快度★★★
感涙度★
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