「イルザ アラブ女収容所 悪魔のハーレム」
評価★☆ イルザ・・・アラブのハーレムで鞭をふるう
ILSA, HARLEM
KEEPER OF THE OIL SHEIKS
1976 カナダ 監督:ドン・エドマンズ
出演者:ダイアン・ソーン、ヴィクター・アレクサンダー、マイケ
ル・セイヤー
ほか
93分 カラー
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戦争系エログロ映画「イルザ」シリーズの第二弾。第一弾「イ
ルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験(1974
米・加)」はその異端路線児ぶりにも関わらず、ナチの人体実験を批判的に捉えるなど意外にも「見れる」映画となっていた。本作では女収容所長イルザを引き
継ぎ、舞台をアラブに移してアラブの独裁支配者の王室護衛長(ハーレム管理人?)として描かれる。時代やモデルとなる国名は良く分からない設定となってい
るが、雰囲気から見て戦後しばらくたっての石油産出国のようだ。
イルザ役は御歳44歳となるダイアン・ソーンが続投。監督もドン・エドマンズで変わらないが、出来具合から言うとちょっと期待
外れだった。前作がナチの収容所と言うリアルな設定と裸だけではない政治的メッセージ性があったのに対し、本作は内容のないアラブ設定で内容に重みがない
ため、単なるエログロだけの作品になり下がってしまった。しかも、その裸にしても今一つ美しくない。ダ
イアン・ソーンの爆乳は健在だが、やっぱりいささか歳を取りすぎたか。またアラブ系と思しき二人の
女性部下も陳腐な裸女ブルースリーのようで、美しさは感じられない。それに加え、本作ではイルザが普通に恋愛をしてしまうなど、鬼所長の面影が陰ってし
まった。やはりサドばりばりの鬼畜を通してほしかったところ(笑)。
前作からパワーアップした部分はグロさで、処刑や拷問、人体実験シーンはかなりグロい。首ちょんぱ、目ん玉くりだし、セックスさせながら腹上爆発などは
見るに堪えないほど。他にもネズミ、アリ、毒クモを使った拷問や耳、乳、尻の整形シーンも奇想天外なグロさ炸裂だ。
グロさはかなりパワーアップしたものの、やはりそれはストーリー性などの中味あってこそのもの。結局本作は得体の知れぬエログロさばかりが目立ってしま
い、不快感ばかりが残る後味の悪い作品となってしまった。
登場人物もぱっとしない。イルザ以外ではイルザを恋に落とす米海軍諜報員のアダム・スコット役のマイケル・セイヤーが準主役級だが、一人爽やか系で浮き
まくっている。国王シャリフ役はヴィクター・アレクサンダーでただただ気持ち悪く、国王らしい重厚さも悪辣さも感じない。イルザの女性部下二人組サテンと
ベルベットは先に述べたとおり陳腐な裸女ブルースリー。ヌードになる女性の数もそこそこ多いが、
ヌードになる女優のレベルなどたかが知れていると思わせる程度。
唯一評価できる点はラストシーンで、幽閉から助け出された若い王子が豹変して残虐行為に走る描写。結局誰もが残虐性を持ち合わせているのだということを
示しており、監督が意図的に描いたのならばなかなか奥の深いテーゼだ。所詮人間はエロスやグロの衝動には勝てないのだ。もし、この場面にもっとインパクト
を持たせていれば良作になったかもしれない。
登場する兵器類としてはアエロスパシアル
アルエット系のヘリが1機のみ。あとは小銃、拳銃程度で、アクションシーンそのものも非常に稚拙。思い切りストップ状態からフィルムを回し始めるのがミエ
ミエだし、銃に撃たれるシーンも倒れ方も超B級。せめてアクションだけでもと思ったが、見どころはまるでない。
全体にガッカリな出来だったわけだが、あり得ないような衝撃エログロに興味を持つ変人ならば見るのもありかも。
興奮度★★★★
沈痛度★★
爽快度★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
ア
ラブの国王殿下シャリフでは女性を集めたハーレムが作られている。そこの王室護衛長を務めるのはイルザだ。側近のアラブ人女性二人組サテンとベルベットは
拳法の達人でもある。ハーレムに立ち入った男を素手で勝負し処刑するほどだ。
その殿下のもとに各地で拉致された3名の美
女が送り込まれる。ホリー・アッチャーソンは米チェーンストア王の娘、インガー・リンストロムは映画女優、アメーナ・コルドバは乗馬のヨーロッパチャンピ
オンだ。3名はイルザのもと殿下に奉仕するための教育を受け始める。そして古い女たちは競売用に売りさばかれることに。また、殿下好みのために耳や胸を整
形したり、わざと太らせるものもいる。逃げた娘はバラバラ死体となって帰ってくる。競売では女たちが売られていくが、買ったばかりで歯を抜く買人などもい
る。
シャリフのもとには石油の権益を求めて有力
商人がやってくる。ウマー氏やアメリカからはカイザー博士がアダムを連れてやってくる。実はアダム・スコットは米海軍の諜報員で、事前に女スパイを送り込
んでいた。だが、イルザのもとにはスコットがスパイであることはばれており、さらに女スパイもへそに仕掛けた盗聴器が発覚し、胸を押しつぶしたり眼の玉を
抜くなどの拷問を受ける。
カイザー博士らは到着し歓待を受けるが、
パーティの最中にカイザーらの目の前で罪を犯した使用人の手首を切り、羊の目をカイザーに食べさせる。だが、その眼は羊ではなく女スパイのものだった。
イルザは正体の割れているスコットをわざと
誘惑するが、逆にスコットの男の魅力に踊らされてしまう。一方、カイザー博士は女を拒否したため、少年が送り込まれて困惑する。
また、イルザは新型兵器の開発のため女スパ
イを使って人体実験を行う。ウマーを殺害するためウマー用の女に仕掛けるための実験だ。女スパイの膣内に爆弾を挿入し、オーガズムに達すると爆発するの
だ。実験は成功し女スパイの腹は爆発し、ウマー用の女カイーナの膣に爆弾を仕掛ける。
一方で、イルザは次第にスコットに魅了され
ていく。だがそんなイルザにシャリフ殿下はスコットを早く始末しろと命じる。だが、イルザはなかなか実行できず、業を煮やしたシャリフ自身がスコットを拘
束して毒グモの処刑台にくくりつける。また、イルザはシャリフに罰を与えられ、汚らわしい男の慰みものにされ忠誠を誓わされる。
すっかりシャリフ殿下に嫌気がさしたイルザ
は女たちの反乱を企てる。スコットを助け出し、地下牢に幽閉されていた本来の後継者セリム王子を担ぎ出してシャリフを退位させようとうのだ。スコットも加
わってシャリフ派と女たちの銃撃戦が始まる。サテンとベルベットが死亡し、ようやくスコットはシャリフを追い詰めて捕える。イルザは捕えたシャリフに爆弾
を仕掛けられたカイーナをあてがう。カイーナは快楽に浸りオーガスムに達したときシャリフともども吹っ飛ぶのだった。スコットはカイーナを見殺しにしたこ
とでイルザを叱責する。
イルザは新国王になったセリムに媚び入る
が、セリムはイルザを自分が幽閉されていた地下牢に幽閉し、嬉々として餌を与えるのだった。
(2009/5/13) |
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