「荒鷲の砦」 評価★★★ パルチザン航空隊の活躍
PARTISAN SQUADRON /
PARTIZANSKA ESKADRILA
1979
ユーゴスラビア 監督:ハイルディン・クルヴァヴァック
出演者:ベッキム・フェーミュ、Rados Bajic、Velimir 'Bata'
Zivojinovic、Radko Polic、Suada Avdicほか
93分 カラー
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旧ユーゴスラビアでは、結構多くの戦争映画が作られている。マカロニコンバットの系譜と評されるものが多いが、ほとんど見ることが出来ないものばかりで
あるのが残念。本作は1980年代に日本でテレビ放映されたこともあるもので、マカロニコンバットの雰囲気もありつつ、もうちょっとシリアス調の航空アク
ション、パルチザンもの。
ユーゴスラビアは第二次大戦中はドイツの占領下にあり、戦後は共産主義者チトー大統領のもと社会主義国家を樹立する。しかし、ソビエトとの対立が表面化
すると1950年代前半はむしろ西側諸国と接近する。その後ソビエトとの関係修復がなされ、1980年のチトー死去以降は激しい内戦に発展することは言う
までも
ない。本作はチトー死去直前の製作であり、最後のユーゴ戦争映画と言ってもいいだろう。お国柄、東西両陣営の兵器類が登場し、本作が作られた政治的、国際
的背景も考慮してみると興味深い。
先にも書いたが、マカロニコンバット系なのでアクションはオーバーだし、設定等はかなりいい加減。本作はパルチザン航空隊を結成し、占領ドイツ軍に対抗
するという話だが、史実にどれだけ沿っているのかさえわからない。英軍に支援されたチトー派がハリケーンを運用していたことは知られるが。
とはいえ、意外にも本作はストーリー的にも映像的にもなかなか見応えがあるのだ。単純明快な英雄的ストーリーは実にわかりやすく爽快だし、ドイツ、ユー
ゴどちらかに肩入れすることなく見ることができるのもいい。やや死亡率が高くて悲壮感が漂う傾向はあるが、女性とのベタベタ具合も少なく話を阻害しない。
欠点をあげれば、地理的関係が良くわからないのと、敵側の作戦情報が手に取るようにわかるのはいかがなものか。また、全くのど素人があっという間に戦闘機
パイロットになって空戦をしてしまうところも変だろう。
映像的にはやはり航空機シーンが見物だ。空中戦シーンこそはミニチュアを用いたりとたいしたことはないが、単純な飛行シーンや爆撃シーンは実機を用いて
おり、なかなかの迫力がある。火薬使用量も決して少なくはなく、カメラワークや編集もアメリカ映画にひけをとらない。
登場する航空機の実機はかなりの数にのぼり、多分ユーゴスラビア空軍の協力によるものと思われる。パルチザンが用いる戦闘爆撃機は、ボーイングステアー
マンPT-17ケイデットとそっくり。少なくとも3機以上が登場し、軽快な離着陸や宙返りを見せてくれるが、ケイデットそのものなのかユーゴオリジナルか
もしれない。ドイツ軍側の偵察機としてはセスナL-19そっくりのユーゴオリジナル、UTVA-66。ドイツ軍側の戦闘機としては鈎十字をマークされた
10機以上の航空機が登場するが、見たことのない機体で判断に苦しんだ。
一
見米軍のSBDドーントレスやAT-6Aテキサンにも似ているし、キャノピー形状や質感からするとソビエトのYak-11にも似ているなどと延々と調べて
みるとSOKO-522という機体であった。もう一つ、後半から
ドイツ軍にもパルチザン側にも運用される脚出し型の軽飛行機も10機以上登場するが、これまた見たことない機体で、調べた結果、SOKO-
J20Kraguj(p2)という機体。いずれもユーゴスラビア生産の機体で、SOKO-522は160機、SOKO-J20は43機が生産されているよ
うだ。ちなみに、SOKO-522は1977年に全機退役しており、地上で炎上するシーンはもしかもすると実機?かもしれない。これだけ訳のわからない航
空機があるのもユーゴ
スラビアならではの風景と言える。このほか、遠目で良くわからなかったがJu-52も出ているかも知れない。
地上兵器としては一瞬だがT34/85戦車が列をなしている。秀逸なのはドイツ軍の四連装対空機関銃。防盾に鈎十字が書いてあったりはするが、結構リア
ルに撃っていたりするのがいい。
(Gyaoで視聴)
SOKO-522
UTVA-66
SOKO-J20Kraguj
PT-17?
(参考)
Aviation photo(Yugoslavia) Aviation photo(soko522) Serbia and
Montenegro Air and Air Defence Force
Serbia Air Force Air
Museum Belgrade ユーゴスラビア航空博物館
興奮度★★★★
沈痛度★★★
爽快度★★★
感涙度★