「連合艦隊」 評価★★★ 大日本帝国海軍への総決算的レクイエム
1981 東宝 監督:松林宗恵
出演:永島敏行、金田賢一、古手川祐子、中井貴一、丹波哲郎、財津一郎ほか
146分 カラー
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第二次世界大戦における日本海軍連合艦隊の活躍から最期までを背景に、二組の海軍一家の織りなす家族愛を描いたヒューマンドラマ。当時としては破格の10
億円を投じた超大作であり、主題歌の谷村新司「群青」とともに大ヒットした。また、日本では初めてのドルビーステレオを採用し、映像のみならず音響におい
てもスケール感の大きい映画となった。
連合艦隊を題材にした映画は、それまでに「軍
神山本元帥と連合艦
隊(1956新東宝)」や「連
合艦隊司令長官山本五十六(1968東宝)」などいくつも製作されているが、本作品は1940年から45年まで、幅広く多くのエピソード
を盛り込んだ内容となっているのが特徴で、いわば総決算的なニュアンスが強い。
松林監督は、それまでの戦記的映画でなく、一般国民にも焦点を・・・という思いがあったのだそうで、本作では一般国民や兵の人間関係エピソードをうまく盛
り込み、物語として良く仕上げられている。ただ、全般にボリュームがありすぎて、ひとつのエピソードに深く思い入れできないうえに、時間経過が早く、頭の
中が混乱する嫌いがないとは言えな いが。
ストーリーは、山本五十六長官の逸話から始まる。日米開戦の回避、そしてやむなく開戦に至った昭和16年12月8日の真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、ヘ
ンダーソン基地砲撃、ガダルカナル島、い号作戦、山本長官の戦死、レイテ沖海戦、戦艦大和の沖縄特攻までを漏れなく描く。
本作ではこれらの戦史に、二組の海軍関係家族の物語
を折り込むことで視聴者の心を掴むことに成功している。一組は本郷大尉(永島)とその妻(古手川)及び弟の海軍少尉(金田)。兄の大尉は、爆撃隊パイロットとしてレイテ沖で戦死。弟の少尉も未亡人となった兄嫁を妻にもらうが、最期は戦艦大和で沖縄に突入する。
もう一組は、父親の小田切兵曹長(財津)と息子の海軍中尉(中井)で、父の兵曹長は大和水上特攻に参
加、息子は特攻機パイロットとして上空から大和突入を見守るのだ。
いずれも連合艦隊に深く関わり、連語艦隊に死すのだが、こうした家族愛の話がバランス良く盛り込まれているので、映画としては比較的スムーズに入り込むことができる。
もちろん、随所に見られるお涙シーンも、過度すぎずちょうど良い。何と言っても著名なシーンは空母から発進する新米パイロットが「我々は発艦することは
できても、着艦することはできません。 ・・・一度発艦したら二度と帰ってきません。・・・
折角整備していただいた零戦を壊してしまいますが許して下さい。」と話すシーンだろう。いたいけな若者の真剣な表情に思わずホロリと来る。また、父親が乗
船する大和上空を旋回する特攻隊零戦パイロットの息子が「お父さん、父親よりもほんの僅かだけ長く生きてることが、
わたしのせめてもの親孝行です」というのもジーンと来る。
主役級の二家族以外で特に目を引いたのが、丹波哲郎演ずる小沢長官、高橋幸治演ずる宇垣参謀長。個性ある人物像をなかなかの好人物に演じていたのが印象的だ。
撮影面では、円谷特撮の意志を継承して力が入っている。ハワイでの日本軍爆撃隊が谷間を通過するシーンなどでは、過去の円谷特撮映像を流用しているよう
だが、今作では戦艦大和や空母瑞鶴の模型を製作してミッドウェイ作戦や大和水上特攻作戦等の特撮を行っている。特に戦艦大和は石川島播磨重工業による
1/20スケール模型で、何と小型漁船用のディーゼルエンジン搭載で3人が乗船可能だったのだ。空母瑞鶴も同様だったらしい。主砲も稼働しており、CGの
ない時代としてはなかなか壮観な映像だったに違いない。
全般に良くできた映画ではあるが、ちょっと詰め込みすぎの感もあってやや消化不良気味の印象。まあ、程よく涙しながら日本海軍を偲ぶには良い作品だとは思う。
興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
(2004/06/22 2009/3/2修正) |