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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「アベンコ特殊空挺部隊 奇襲大作戦(アベンコ空輸軍団)」  評価 ★★★ 生還の見込みのない韓国特殊部隊
AIR COMBAT  /ABENKO GREEN BERETS
1982 韓国 監督:イム・グォンテク
出演:シン・イルヨン、ナムグン・ウォン、ビッ ク・モローほか  
136分 カラー 
 
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 韓国戦争映画の代表作とも言える、朝鮮戦争を題材にした戦争アクション大作。2時間を超える内容は、相変わらず韓国映画にありがちな間延びさはあるもの の、これでも か、これでもかと言わんばかりの悲壮感を漂わせている。もちろん韓国映画の定石「激情」「悲壮感」「おちゃらけ」の3点セットは健在で、これほど馴 染まない3点を盛り込める韓国映画はある意味すごい(笑)。ただ、ほかの韓国戦争映画に比べるとおちゃらけ部分はやや少なめで、悲壮感漂うシーンが大多数 を占める、ヘビーな映画の部類に入るだろう。

 朝鮮戦争は1950年の北朝鮮による韓国侵攻を契機に勃発した戦争だが、わずか数カ月の間に大部分の土地を占領される激戦と化した戦争でもある。その 後、アメリカなど国連軍による巻き返しによって、現在の38度線まで盛り返すのだが、その間北朝鮮に支配された韓国領内では赤化教育や恐怖支配によって大 混乱に陥るのだ。
 本作は北朝鮮侵攻から2ヶ月ほど経過した8月頃から仁川上陸作戦の9月15日頃までの間が舞台となっているようだ。ちょうど、洛東江まで押し込まれ苦戦 する米軍と韓国軍を背景に、北朝鮮支配地内に潜入工作するために組織された韓国軍特殊部隊「アベンコ」が主役となっている。「アベンコ」はオリジナル設定 で、マッカーサー司令部直属で、CIAの指導教育がなされた部隊で、部隊長ア レクサンダー中佐、ベンダブル少佐、高中佐の3名の頭文字を取って付けられたという設定だ。
 内容的にはかなり複雑な特殊作戦が描かれているが、基本的には全てフィクションと思われる。ただ、実際にこうした特殊任務部隊があったことは知られてお り、なんらかの史実が参考にされているのかもしれない。
 戦術的なものについてはあまり信用できないが(笑)、北朝鮮支配地内での恐怖というのもはしっかり描かれているようだ。朝鮮半島特有の気質なのかもしれ ないが、裏切り、密告、成りすましなど、他人を誰も信用できない恐怖の世界が描かれている。こうした恐怖支配については「ホ ワイト・バッジ- ファイナル- 史上最大の作戦(ソ ウ ル奪還大作戦 大反撃)(1974韓国)」や「太 白山脈(1994 韓国)」あたりに詳しく描かれている。また、特殊部隊潜入については「特 命作戦K-27/細菌 兵器を阻止せよ!(1994韓国)」がある。

 かなりの長時間映画だけあって、複数のミッションが盛り込まれている。主役級の人物の死で映画が終わっても十分だったが、さらに後続するエピソードまで 描かれ、正直食傷気味なほどの内容だ。
 また、本作は上層部から見捨てられる捨て駒兵士の悲惨さと、北朝鮮支配地内に残された家族の苦悩などの重いテーマを描いている。特に 戦争によって引き裂かれた家族の苦悩というものは、悲劇的題材としてはこれに勝るものはなく、加えて、共産党支配による密告、裏切り、処刑など朝鮮戦争特 有の憎悪劇が悲壮感を一層際立たせる結果となっている。韓国映画において悲壮感が強いというのは、これに起因しているのだ。
 ク・グォンテク監督は韓国戦争映画の第一人者で、多くの国策映画を手掛けてきている。そのため、国策映画としてのナショナリズム昂揚的要素は多分に感じ る。北朝鮮軍に勝利する原動力として、韓国軍兵士の死を恐れない勇壮さと憎悪から来る激情を過剰なまでに表現しており、映画のインパクトはあるのだが、日 本人が楽しむには理解しがたい部分も多いだろう。特に、エンディングあたりのシーンは韓国軍兵士へのレクイエムといった表現となっており、ナショナリズム 全開なのである。
 こうしたことから、真面目に戦史的な部分やヒューマンドラマを鑑賞しようとすると、日本の映画のような繊細な感情描写はないに等しいので、ちょっとしん どいだろう。だが、韓国戦争映画特有のインパクトは圧倒的なものがあるので、いわゆるハードア クション的な部分を楽しむことは出来る。ハリウッド映画にもない、ヘビーな重苦しさの中でのハードアクションを是非楽しみたいという人にはうってつけだ。
 ちなみに、米兵役で登場のビック・モローは戦争ドラマ「コンバット」に登場する名優。コンバット人気にあやかって出演してもらったのだろうことがミエミ エである。

 戦闘シーンは、残念ながらB級アクション並で、リアリティに欠ける上、爆薬使用、登場兵器ともにかなりしょぼい。あまり資金を得られなかったようだ。航 空機は輸送機とセスナ風のほか、P80シューティン グスターもしくはF84サンダージェットと思しきものが少し登場するが、模型のようだ。

 なお蛇足だが、朝鮮戦争は敵国でも言葉が通じるので、通訳いらないしある意味便利。映画的にも字幕いらないし(笑)。ただ、南進当初の北朝鮮軍戦車兵は 朝鮮系ロシア人なのでロシア語しか 話せなかったらしいけどね。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 一人の韓国人青年呉が韓国陸軍成少将のもと を訪ねてくる。青年の父の死について将軍に聞くためだ。将軍は昔の朝鮮戦争の 話を始める。
 朝鮮戦争が始まって2ヶ月くらいたった8月 頃から仁川上陸作戦の9月15日頃までの間の話だ。北朝鮮軍に洛東江まで押し込まれ苦戦する米軍と韓国軍だ が、北朝鮮軍内部に潜入工作するための韓国軍特殊部隊「アベンコ」があった。「アベンコ」はマッカーサー司令部直属とされ、CIAの指導のもと、部隊長ア レクサンダー中佐、ベンダブル少佐(モロー)、高中佐の3名の頭文字を取って付けられている。
 アベンコはそれまでに数度の潜入工作を続け ているが、一度も成功せず、部下が犬死にしていくことで韓国人の長である高中佐は心を痛めている。いよいよ、 次の作戦として北朝鮮の補給弾薬庫の爆破が命じられる。編成は下士官と兵卒ばかりの6人。その一人に呉の父親がいた。出撃前の自由行動で呉はバーで働く女 と恋に落ち、出撃前に結婚式を挙げる。そして、輸送機に乗り込んだ6人は北朝鮮領内に降下していく。すぐに北朝鮮兵に発見されてしまい銃撃戦になるが、そ の後は北朝鮮兵になりすまし、米空軍の支援を受けて、敵弾薬庫の爆破に成功する。その際に、爆破専門の兵が命を落とす。すぐに帰還のための集合場所へ移動 するが、司令部からの指令がない。しばらく待機するうちに北出身の兵士の一人が両親を見るために、街へ出かけていく。しかし、共産軍に支配された街はすで に面影もなく、密告と恐怖が支配している。密告により両親が殺されたことを知った兵は、密告者を射殺する。
 司令部からは、続けて北朝鮮軍の作戦参謀将 校を拉致する命令が届く。ほとんど自殺行為に近い命令だが、やむなく残った兵達は作戦を実行する。北朝鮮軍の 将官に化けた一行は敵司令部に潜り込み、作戦参謀の拉致に成功するが、すぐにバレてしまう。しかし、この場も一人の下士官が北に残してきた元妻との再会に より元妻の助けで何とか脱出に成功する。ところが、包囲網脱出のさいにまたもやバレ、激しい銃撃戦になる。もはや脱出は困難と判断した兵士たちは呉に拉致 した将校を連れて逃げることを指示し、残った3人は敵弾に倒れる。
 呉は負傷して集合地に残っていた通信兵のも とへたどり着き、司令部に指示を仰ぐが、司令部からは敵捕虜を海岸部に待機する収容部隊に引き渡した後、その まま北朝鮮内に残れと言う非情な命令が下るのだった。呉は捕虜を引き渡した後、北朝鮮軍の少年兵の弾に倒れる。
 部下を見殺しにするCIAの方針に憤慨する 高中佐に、ベンダブル少佐は「兵士は駒だ。駒の死によって戦争の勝利が近づくのだ」と言い捨てる。新たに CIAはアベンコに将校クラスの北朝鮮潜入作戦を指示する。この作戦こそは、将校をわざと北朝鮮軍に捕らえさせて国連軍が元山上陸を計画していると思わせ る陽動作戦だ。当然の事ながら北の捕虜となることは死を意味する。CIAは高中佐に人選を指示する。高中佐は苦渋のすえ、成中尉(冒頭の少将)を任命する が、その時、テグのCIAから北領内に取り残された高中佐の妻が洛東江を渡ってきたとの報告が入る。高中佐は、成中尉に部隊出発の延期を伝え、さらに成中 尉にテグへ行って妻を確認してくるよう命令する。成中尉がテグへ行っている間、高中佐は輸送機の上にいた。そして北朝鮮領内へ降下するのだった。

(2004/09/02 2010/5/29加筆)