「レニングラード大攻防1941」 評価★★★ 包囲されたレニングラードへの火薬調達
GUNPOWDER
1985 ソ連 監督：ヴィクトル・アリストフ
出演：ユーリ・ベリャーエフ
ほか
８８分 カラー
とにかく、毎度のことだが邦題が良くない。なんでそんなに大仰なタイトルにしちゃうかな。英題のまま「火薬」という題にしておけばいいのに。というよう
に、ドイツ軍に包囲されたレニングラードを舞台にしながらも、ある特定の日における出来事を描いているだけである。完全に包囲されたレニングラードは食料
の補給のみならず、弾薬の補給もままならず、ほとんどが自給自足を強いられている。そんな中、弾はあれども火薬がないという事態に瀕し、決死の火薬の調達
を行うという話だ。
この映画はいわゆる記録映画の範疇には入らないと思われるが、それでもソビエトの誇る「芸術的記録映画」の系譜を色濃く引いている。長回しのロングシー
ン。会話を用いず表情で表現する。遠景を多用する叙情的な映像。異常に多い登場人物などである。従って、ストーリーものとしてはやや取っつきにくい印象が
あるのは否めないのだが、今作はしっかりと主人公が定められている点きちんと帰結する。とはいえ、会話が少なすぎて何が起こっているのかわからないことも
多いのだが。
それまでのソビエト映画はあまり砕けたソビエト兵士を描くことは多くなかったのだが、本作では結構ふざけた兵士が登場する。また、不倫をストレートに取
り上げるなど、ソ連崩壊、ペレストロイカ間近の時期を感じさせる。
戦闘シーンは実写と模型を用いた迫力あるシーンが良い。特に、ドイツ軍機による空襲シーンは模型との組み合わせもなかなか秀逸で、機銃掃射も実にリア
ル。だが、航空機が何なのかはわからなかった。艦船シーンはもう少し迫力があってもいいかなという感じ。部分的に実際の艦船らしき映像も入ってくるのだ
が、映像的な迫力には乏しい。
映像的にも内容的にも優れたという程ではないが、レニングラード包囲の中で行われていた一幕を垣間見るという点では斬新な内容ではないだろうか。
興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★
（以下あらすじ ネタバレ注意）
1941年秋、ドイツ軍のレニングラード包囲が始まってから２１日目。国家安全局の役人ニコノフは、レニングラードの共産党地区委員長ジダーノフから、
特命を受ける。レニングラード守備隊は砲弾はあるのだが、火薬が足りない。レニングラード沖合のコトリン島クロンシュタット海軍基地まで行き、海軍が使用
しない火薬を貰い受けてくる役割だ。航空権はドイツ軍が握っているほか、基地への海上沿岸もドイツ軍の支配下となっており、火薬輸送は危険な任務だ。
ニコノフの実家では不倫で別れた元女房が娘を連れてきていた。夫が戦死したので働きに出るためにしばらく娘を預かってくれと言うのだ。身勝手な女房に怒
りを覚えつつも、娘は二度と渡さないと言い放つ。
ニコノフは命令により、旧学友の火薬研究者クリューエフ、大学教授のゲデワノフ、砲兵隊軍事物資支給班長のペトラコフ大尉、元は優秀な研究者だったアン
チポフ中尉、輸送ボートの操縦者ガニチェフ、世話係のガジベコフ軍曹らとともに、クロンシュタット海軍基地に向かう。案の定、上陸間近にドイツ軍の空襲に
あい、混乱の中なんとか海軍司令部にたどり着く。
しかし、混乱で案内人とあえなかった一行は、身元不明者として収監されてしまう。ようやく、解放された一行は病院に宿の割り当てを貰う。そこは、毎日の
ドイツ軍空襲による負傷者で一杯だった。
ゲデワノフ教授の指導で工業用火薬などを選別し、輸送船に運ぶこととするが、海軍の全面的な協力にも関わらず、度重なるドイツ軍の空襲で中断を余儀なく
されるのだった。勇敢な海軍兵も次第に犠牲者を出し、なんとか送り出した第一便もドイツ軍によって撃沈されてしまう。
増すばかりの疲弊と犠牲に、クリューエフは中止を言い出すが、ニコノフは頑として実行し続ける。さらに、ニコノフの案で対岸に偽の荷運びをさせて、ドイ
ツ軍の目を向け、その隙に火薬運びを成功させた。その代わり、対岸では死体の山が出来上がる。
最終便でニコノフとクリューエフは、積み込んだ火薬と共にレニングラードへ戻る。しかし、途中で霧が晴れ、沿岸のドイツ軍に発見されてしまう。激しい銃
撃、迫り来るドイツ軍ボート。老船長も撃たれ、若い少年が舵を取らざるを得ないはめに。もはやこれまでかと思われた時、ソ連海軍が救援にかけつけた。
なんとか、任務を成功させたニコノフは家に戻る。そこには、元女房が居座っていた。ニコノフの姿を見てあわてて家から出ようとする女房に、ニコノフは家
に居れば良いという。厳しい火薬輸送任務ですっかり考え方もかわっていたのだ。
（2005/03/23)
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