戦争映画の一方的評論
 
トップガン」 評価★★★★ F−14トムキャット駆るトップガンたち
TOP GUN
1986 アメリカ  監督:トニー・スコット
出演者:トム・クルーズ、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー、メグ・ライアンほか
110分 カラー

 
 ご存じ、現代軍用機映画の先駆け的ヒット作。スター俳優トム・クルーズのための映画だとか、米軍のプロパガンダ映画だとか、いろいろと酷評もされている が、F−14トムキャット戦闘機がこれほどまでに画面をど迫力で飛び交う映画はそうそうない。航空アクション映画と言っても良いくらい、戦闘機が飛び交 い、ドッグファイトを行う映像が美しくリアルだ。
 ストーリーの内容が薄っぺらいとも言われるが、個人的にはそうでもないと感じる。アメリカ映画お得意の男女のからみはもちろんあるが、すぐにベッドシー ンへということもなく、お互いの意地の張り合い、すれ違いが、ある意味爽やかだ。また、ライバルのアイスマン役ヴァル・キルマーの独特の存在感はストー リーに華を添えているし、同僚を失ったトム・クルーズの苦悩と恐怖もそれなりに伝わってきた。もちろん、トム・クルーズの無意味なほど爽やかな白い歯と笑 顔がそれをぶち壊していることは否めないが。若きメグ・ライアンにも注目。
 本作で最も素晴らしいと感じたのは、空戦シーンのコックピット内の挙動である。マッハにまで至る速力での航空戦は第二次世界大戦のレシプロ機の空戦とは まるで違うと言われる。朝鮮戦争やベトナム戦争の空戦記を読むとわかるが、敵機視認はほんの一瞬の出来事であり、コンマ何秒の間の判断と、野性的な勘と条 件反射の行動が運命を分けると言う。一度すれ違ったらその後を反転して追撃などというのは到底無理なのだという。本作では、その一瞬のすれ違いや判断シー ンが多く登場し、敵確認のためのレーダー員の言動など見所は多い。さすが米海軍の全面協力を得ただけのことはある。ちなみに、空戦シーンのほとんどは現役 トップガンやパイロットの操縦によるものだそうだから、リアルであって当たり前だろう。ミラマー空軍基地で撮影が行われたようだ。
 本作に登場する兵器は、当然F−14トムキャット。画面の中を右へ左へと飛んでいく姿は実に格好良い。空戦中にはプガチョフ・コブラ風の失速回避行動 シーンも見られる。敵国のMig−28役にはFー5EタイガーIIが 赤星マークをつけて登場する。あんまりミグぽくないが、F−14と空戦シーンを撮るにはこれしかなかったのだろう。トップガンでの訓練シーンで、教官が操 縦する仮想敵国機にはA4スカイホーク。F−14と比べるとかなり小型だが、小回りのききそうな感じである。大柄のトムキャットが後手に回っている感じ。 このほか、一瞬だがクルセイダーや空母搭載のヘリコプターRH−53シースタリオンも登場する。また、F−14が離発着する空母はCVN-70カールビンソンのようだ。
 あと、本作で忘れてはならないのが音楽。主題歌「 Take My Breath Awayは アカデミー賞の主題歌賞を受賞しており、その他のサントラも耳に残る名曲ばかり。これほど、映画の映像にマッチした音楽というのもそうはないだろう。

興奮度★★★★★
沈痛度★

爽快度★★★★
感涙度★★

(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 1969年3月、アメリカ海軍は空戦実技の向上のためにトップパイロットのエリート学校トップガンを設立した。
 インド洋上の空母艦載戦闘機隊に所属するマーベリック(トム・クルーズ)大尉、レーダー員グース中尉の搭乗するF−14トムキャット戦闘機は、警戒任務 の際に敵国戦闘機Mig-28に遭遇。列機のクーガー大尉はMigに背後を取られてショックを受ける。マーベリック大尉は無謀な行動ながらも天性の勘で Migの裏を取ることができる。双方とも実弾発射の気はなかったが、これが敵新鋭機との初めての空戦となった。
 マーベリックは、カリフォルニアのミラマー海軍航空基地に転属となり、トップガン教育に選ばれる。トップガンの最高責任者で最高パイロットはマトロフ中 佐、別名バイパーで、同期には冷静沈着なライバル、アイスマン大尉もいた。
 基地のバーでマーベリック大尉は美女に出会い、誘惑するがあえなく断られる。翌日の教科でその女性が現れる。民間人の航空物理の専門家でトップガンの教 官チャーリーだったのだ。
 実機訓練でマーベリックは教官のバイパーに勝つ。しかし、アイスマンはルール違反を指摘し、マーベリックの行動は味方にも危険であると忠告するのだっ た。マーベリックは天才パイロットではあったが、僚機を顧みず、危険を冒して直感だけで行動するきらいがあった。
 チャーリーがマーベリックを自宅に招待する。すっかりその気になっていたマーベリックは、チャーリーがミグとの交戦のことを聞きたいだけだと知り失望す る。さらに、チャーリーはマーベリックの空中戦行動がミスであると指摘し、マーベリックはチャーリーかを避けるようになる。しかし、チャーリーはマーベ リックに恋したことを告白し、二人の中は急速に発展していく。
 そんな矢先、功をあせったマーベリック機はアイスマン機のジェット後流に巻き込まれてコントロールを失って墜落。脱出の際に後部座席のグースがキャノ ピーに激突して死亡してしまう。親友だったグースを失ったショックで、マーベリックは空戦にも精彩を欠く。軍法会議ではマーベリックに責任はないと結論が 下されるが、マーベリックはトップガンを去ることを決意する。それを諭して勇気づけるチャーリーだったが、マーベリックには届かず、チャーリーは栄転でワ シントンへ去っていく。
 トップガンの卒業式の日、トップガンはアイスマンだった。マーベリックは気を取り直して卒業式に参加した。その時、緊急事態が発生し、トップガンに出動 命令が下される。
 インド洋警戒中の情報収集艦が操鑑不能となり、警戒のためにアイスマン、ハリウッド、マーベリックの3機が出動を命じられた。マーベリックは援護機とし て空母上で待機していたが、アイスマンらは敵機を確認。当初2機と思われていたが、遭遇すると5機と判明し、ハリウッド機は撃墜されてしまう。アイスマン 機も5機に囲まれて苦況に追い込まれ、マーベリック機の緊急援護が要請された。現場に到着したマーベリックだったが、一瞬グースのことが頭をよぎり、戦域 を離脱しかける。しかし、思い直して敵ミグとの空中戦に挑み、見事に敵機ミグを4機撃墜するのだった。
 マーベリックの功績は新聞にも大きく取り上げられ、マーベリックはトップガンの教官を希望して赴任する。そこにチャーリーも再び勤務を希望し、二人は再 会を果たすのだった。 

(2006/01/08)

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