戦争映画の一方的評論
 
「バット★21/バット21 評価★★★ 情報将校の北ベトナム救出作戦
BAT 21
1988 アメリカ 監督:ピーター・マークル 
出演者:ジーン・ハックマン、ダニー・グローヴァー、ジェリー・リードほか
105分 カラー


 ベトナム戦争における救出作戦を題材にしたよくあるパターンだが、ストーリー構成、カメラワーク、アクション、役者ともに平均値以上の出来。主人公は米 空軍の情報将校ハンブルトン中佐で、実話をもとに作られているだけあって、ストーリーに無駄がない。戦闘シーンに派手さはないが、航空機の飛行シーンや爆 撃シーンはなかなか見物だ。時折、「ランボー」のようなドラマティックな映像が入るのがやや気になるのと、肉薄する北ベトナム軍兵士との戦闘シーンが作り 事ぽい(距離や着弾にリアル感が欠ける)のがもったいない。実話ならば実話らしくした方が映画に入り込みやすいのだが。
 分類から言えば、アクションだが、北爆開始までのタイムリミット内に脱出できるかどうかというサスペンス的要素、それにハンブルトン中佐と救出に当たる 黒人大尉の人間模様といったヒューマン的要素も入っている。ただ、ハンブルトン中佐の厭戦感と黒人大尉の厭戦感的感情が中途半端に表現されており、いささ か興ざめ。実話(実名)であるが故に難しいところだったのだろう。ちなみに、ハンブルトン中佐はシルバースター章、空軍殊勲賞を受賞している。バット21 とはハンブルトン中佐のコードネーム。
 本作の楽しみは登場する航空機にもある。というよりは航空機映画といった方がいいかもしれない。冒頭シーンには模型だがEB-66デストロイアが登場す る。中佐が搭乗して撃墜される機体でる。続いてヘリコプターとして、シコルスキーシーキングの空軍仕様HH-3EとベルイロコイUH-1が登場し、幾度も 飛行と対地攻撃を披露する。大尉が15年ぶりに操縦するイロコイの乱れ飛行?もまた見物だ。また、空軍救難部隊に属する大尉が本来操縦するのは、セスナO -2。プロペラ機といえども、その機動性の高さから遭難者捜索のほか、対地攻撃のマーキング任務も果たし、さらには主翼下に取り付けられたロケット弾で対 地攻撃もできる。映画中でもその能力を遺憾なく発揮し、夜間飛行、対地攻撃、マーキングなどの任務を行っている。最も登場頻度が高い航空機でもある。
 この他、対地攻撃でノースロップF-5Aフリーダムファイターが2機登場する。ただし、映画用に飛行してもらっただけのようで、対地攻撃シーンはない。 それに対してノースアメリカンF-100Dスーパーセイバーの映像は明らかにベトナム戦争時の記録映像で、対地ナパーム?の発射シーンが出てくる。
 総じて、地上シーンはどうってことないが、航空機シーンはなかなか力の入った作品だと言える。これにこぎみの良いテンポで展開される救出劇とヒューマン ドラマが加わって、大作とは言えないが比較的大人向けの落ち着いたベトナムものということができようか。役者はややマイナーどころだが、派手さはないが落 ち着きのある演技で作品に手堅さを感じる所以でもある。

興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 アメリカ空軍ミサイル専門の情報将校、アイシール・E・ハンブルトン中佐は北ベトナムのミサイル基地爆撃作戦に先立って、自ら偵察任務に出る。しかし、 中佐の搭乗した電子偵察機EB-66が北ベトナム軍のミサイルに撃墜されてしまう。ただ一人脱出できた中佐のみが北ベトナムのジャングルに降り立つ。ハン ブルトン中佐は53歳という高齢に加え、実戦経験がなかった。
 空軍救難部隊のクラーク大尉はセスナO−2を飛行させて中佐の居場所を特定し、中佐と交信を行う。夜間にも中佐の安全確認のために飛んだクラーク大尉 は、翌朝の飛行で地上のハンブルトン中佐から北ベトナム軍のミサイル車両、戦車発見の報を受ける。すぐさま、対地攻撃機の攻撃をかけるが、これによって中 佐の救出は見送られた。中佐は、クラーク大尉に不可思議な暗号を教えて姿をくらます。
 空軍本部ではダグラス大佐がハンブルトン中佐の暗号を解読。ゴルフ好きの中佐は空軍ゴルフ場のホールに例えていたのだ。移動中の中佐は途中で敵意のある 民間人と遭遇し、殺害してしまう。さらに足を負傷してしまう。
 ハンブルトンはようやく暗号の回収地点に到達する。しかし、そこには村があった。ヒューイを操縦するウォーカー大佐、0−2のクラーク大尉が偵察するが 人気がない。しかし、救出用のシーキングが上空に来ると、村から北ベトナム軍兵士が射撃を開始した。シーキングは被弾し、不時着。搭乗員は殺害され、ク ラーク大尉の戦友のパイロットも地雷原を歩かされたあげくに射殺される。一部始終を目撃した中佐は自暴自棄に陥るが、クラーク大尉がそれを押しとどめる。
 再びジャングルに戻った中佐は、雨中でベトナム人少年と出会う。少年は中佐に罠の在処を教えてくれた。心温まる交流の一瞬だった。
 空軍では北爆開始が決定された。中佐は見殺しとなるのを知り、クラーク大尉は上官命令を無視して、15年ぶりの操縦となるヒューイを操縦して中佐の救出 に向かう。迫る北ベトナム軍からなんとかギリギリで着陸し中佐を乗せるが、途中被弾し不時着する。中佐と大尉が陸路で逃げる中、米軍の北爆が始まる。爆撃 の中を逃げる二人。爆撃が終わった後、なんとか命を長らえた二人は河川パトロール部隊に無事収容される。

(2005/11/15)

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