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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「太白山脈 評価★★☆ 共産化を巡る朝鮮人同士の骨肉の争い
THE TAEBAKE MOUNTAINS
1994 韓国  監督:イム・グォンテク
出演者:アン・ソンギ、キム・ミョンゴン、オ・ジョンヘ
ほ か
151分 カラー 

 
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 戦後まもなくに行われた朝鮮人による共産主義と資本主義の骨肉の争いを題材にした、在日一世小説家、金達寿の原作「太白山脈」の映画化。共産主義と資本主義(地主)の両者に分かれ、憎悪にまみれた争いを繰り広げる兄弟、中道として両陣営を冷静に見つめる教師を中心にした歴史的ヒューマンドラマだ。
 朝鮮半島は、
1945年日本が敗戦すると、いわゆる38度線を境として、ソヴィエト・中国庇護下の北朝鮮とアメリカ庇護下の韓国に分断される。すぐさま共産主義者らは共産党を立ち上げるが、韓国領内では朴憲永を中心に南朝鮮労働党が活動を始める。しかし、1948年に正式に韓国が独立し、李承晩が 大統領に就任すると、アカ狩りが厳しく行われ、主要人物は北朝鮮に逃げ込むこととなる。その一方、麗水(ヨス)順天(スンチョン)反乱事件など国軍第14連隊が関与した共産パル チザン(反乱軍)の活動も行われ、1950年6月の北朝鮮南侵事件を機に北朝鮮労働党と合体し朝鮮労働党となっている。 
 本作は1948年10月
の麗水順天反乱事件から始まり、北朝鮮の韓国侵攻(朝鮮戦争)を経て、1953年の停戦までを描く。共産主義者は南朝鮮労働党の(全羅南道)道党構成員及び小作農を中心とした武闘派パルチザンで、 マルクス主義の高い理想を掲げつつも、その矛盾と北朝鮮共産党の独裁的な支配に翻弄されていく。一方、資本主義者は地主や警察、軍からなり、政府の政策に 従ってアカ狩りを行っていく。両者は血を血で洗うような粛正やリンチを互いに繰り返し、復讐や報復心で民衆が支配されていく。本作がどこまで史実に沿っているのかは不明だが、北朝鮮南侵時に同様の事態が多数勃発したことはよく知られており、本作の舞台となる全羅南道は、韓国内の南西部に位置し、辺鄙な農村地帯として共産化浸透教育の影響が強かった地域でもある。
 革命とは往々にして血によってなされるものだが、本作は実にリアルで衝撃的な内容を映像化している。生き延びるために最悪の手段に手を下してしまう人間の性、そして、動き出した復讐の流れは決して止めることが出来ないという恐怖を、嫌という程見せつけられる。

 とにかく、見ていて辛くなってくる映画だ。何が辛いって、罵倒、殺人、強姦、密告、裏切り、粛正と次から次へと極悪非道の行いばかりが続くのだ。人とし てあるべき道徳心も博愛の精神もそこにはないに等しい。その根底にあるのは共産主義と資本主義の戦いであり、元を正せば日本(日帝)が押しつけた土地制度 (地主・小作制度)にある、と映画中では日本に責任を押しつけている。まあ、そう思っているなら勝手に思っているで構わないが、同じ民族でありながら血で 血を洗うような抗争の歴史は、日本が押しつけたものではあるまいに。
 映画全般にわたって繰り広げられる抗争の姿を見ていて辛いのは、何と言ってもその理由が理解できないことなのだ。確かに、日本人にも極悪非道な輩はいる が、それは一部の犯罪者でしかないし、戦前の全体主義的な統制下においてさえ、韓国のような殺し合いの歴史はない。最も近しいものとしても、過激派の内ゲ バとヤクザの抗争ぐらいのものであろう。本作を見ていて、日本人とはいかに大人しい民族なのだろうとつくづく思った。朝鮮人はとかく、感情的、激情的と揶 揄されるが、まさにそれを映画で実証して見せたようなものだ。全編をとおして、女性の目をむいた金切り声や男性の怒号が飛び交い、いい加減気持ちが鬱に なってくる。
 唯一主人公のみが日和見主義と揶揄されながら中道を歩んでいくのだが、その冷静さや道徳的な行いだけが救いとなっている。本作が結局何を表現したかった のか良く分からなかったが、個人的には、自身の行動を熟考することなく、刹那的、感情的に行動・発言することの愚かしさというものを感じ取った。昨今の日 韓摩擦もそうだが、未来のあるべき道を思慮することなく、現状の怒りをぶちまけることでは何も解決につながらないということを、韓国映画がしっかりと示し ているのである。本作を見て過去の過ちを繰り返さない努力は果たして行われているのだろうか。

 映画として見た場合、やや冗長な印象はあるが、朝鮮戦争前から停戦後まで描いたものとすれば致し方ないだろう。ストーリー構成も、人物設定もわかりやす く、完成度という点では結構良い。ただ、複雑な政治的歴史背景をテロップで随時流してくれてはいるのだが、南朝鮮労働党や農地改革などの制度や内容につい てもう少し説明してくれると有り難かった。さらに、南朝鮮労働党と北朝鮮の関係、悪名高い北朝鮮義勇軍(志願兵)、農地改革の功罪などはもっと深く掘り下 げてくれると、ずっと深い映画になったと思うのだが、それだとちょっとやりすぎかな(笑)。
 映像的には撮影セットが狭い印象があり、スケール感はあまり感じられない。市街地などはいかにもセットぽい。兵器類もほとんど登場せず、高速で飛び去る国連軍航空機が一瞬出てくるのみ。まあ、ヒューマンドラマ中心なので仕方ないが。

 本作は単に、歴史的、政治的ヒューマンドラマというだけではなく、道義的、道徳的なアンチテーゼとして視聴するのが良いだろう。ただ、視聴し終わった後には、何とも言えない虚脱感が襲うことは間違いないが。少なくとも、残酷な虐殺は日本のせいではない。

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  1948年10月20日、全羅南道のポルギョ警察にクァンジュ警察から、ヨス(麗水)の第14連隊と共産党パルチザンが反乱を起こしたと報が入る。すでに スンチョン(順天)が陥落し、警察は鎮圧部隊を送る。しかし、反乱軍は翌21日にはポルギョにも侵入し、ポルギョの地主を粛正して殺し始める。
 22日になり、鎮圧軍がスンチョンを奪還。反乱軍はパルチザンとなってチリ山に退却していく。共産主義者でポゾン郡党の指導者サンジン、小学校教員のア ン・チャンミン、ハ・デチ、カンらが家族らを置いて山に籠もる。サンジンの弟ヨム・サングはアカを取り締まる監察部長で、サンジンとは犬猿の仲だった。
 10月24日、ポルギョも鎮圧部隊が奪還し、鎮圧隊長イムヒが着任する。イムヒ隊長はナム警察署長の意見も聞かずに、アカ協力者を独自にあぶり出し、戒 厳令のもと活動家と協力者を逮捕し、次々に処刑していく。そんな中、裕福な造り酒屋社長の息子チョン・ハソビは、労働党道党委員であり、巫女のソファのも とに匿って貰うが、ソファを無理矢理に犯してしまう。一方、監察部長のサングはカン同志の妻を無理矢理に襲って自分の女にしてしまう。街には「反共団」が 大手を振ってはびこり、やりたい放題だった。この状況に苦言を呈した教師のキム・ボムは反共団に襲われる始末だった。
 12月1日、国家保安法が公布される。中央からチェ議員が訪れ、造り酒屋の社長に逮捕状が出る。理由はと言うと、先の選挙に投票しなかったからであり、世間に不正な密告と摘発が吹き荒れる始末だ。
 1949年1月8日、反民特別委員会が発足。パルチザンは寒い山中で越冬を余儀なくされる。鎮圧隊長には物わかりの良いシム中尉が着任し、キム先生と連 携して治安の維持に努めようと試みる。キム先生は、この混乱は日本が残していった土地小作制度にあると説く。しかし、パルチザンは小作人をけしかけて地主 を襲わせ、青年団長になったサングは取締を厳しくする。
 アン同志が負傷して病院に担ぎ込まれる。医者は恋人のイ先生を呼び輸血をする。イ先生は医者にも戦うべきだと責めるが、医者は人を救うのが道だと断る。 また、カン同志は自宅に戻り、妻を寝取ったサングを撃とうとするが取り逃がす。夫にばれたカンの妻は実家に戻るが、サングは結婚しようと追いかけ金を渡 す。
 ポゾン郡のパルチザンが総動員され、ユロが占領される。パルチザンのリーダーサンジンは、公平分配の地上の楽園を標榜し、多くの住民や小作人が同調しはじめる。しかし、両者への密告が相次ぎ、住民らは互いを信用できず戦々恐々とする。
 6月5日、国民補導連盟ポルギョ支部が発足し、政府は農地改革法を公布する。鎮圧軍はパルチザンのアジトを急襲し、パルチザンは窮地に追い込まれる。カン同志は好色の女を色仕掛けで利用して薬を届けさせるが、女の裏切りで多くのレジスタンスが殺される。
 キム先生は、良心的な地主として無償で土地を解放するよう求められるが、拒否する。共産主義の分配とは、国に全部渡して公平に分配することであり、努力や成果は反映されないのだと説く。
 巫女ソファがパルチザン内通者として逮捕され、拷問で身ごもっていたハソビの子を流産する。ハソビの母親は黙っていろと釘を刺す。
 1949年11月、左翼鎮圧が開始される。パルチザンはペグン山に移動するが、90%までが殲滅される。本屋のムン・ギスはパルチザンのスパイだったと自首をする。さらに農地改革法が施行され、地主の土地は有償分配されはじめる。
 1950年6月、北朝鮮が38度線を越えて侵入。一転して共産主義者は勢いを取り戻し、町を支配下に置く。カンは密告者の女を殺害し、補導連盟が集団処 刑される。北朝鮮軍が到着し、サンジンは人民委員会を開催しようとするが、北朝鮮労働党は南朝鮮労働党など信用していないと一蹴されてしまう。さらに、理 想と現実を混同するなとまで言われ、相手にされない。北朝鮮軍は韓国人から人民義勇軍を志願させる。
 8月末、優勢だった北朝鮮軍だったが、ナクトン川で戦況が逆転。北朝鮮の物資強制供出や高額の税などで民衆の不満も噴出する。カンの妻が服毒自殺を図 る。巫女のソファは共産主義体制で禁止されているお祓いで霊を清める。サンジンは実家に隠れていた弟サングを発見。銃で撃とうとするが、見逃してやる。
 9月15日、国連軍が仁川上陸。道党は後退を命じ、地下組織でゲリラ戦に転じることとなる。街では共産党の撤収に当たり、報復攻撃と称した殺人が行われ る。キム先生はサンジンに止めさせるよう怒る。サンジンはその光景を見て、自分の理想が非現実的であったことを実感するのだった。


(2007/05/28)