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戦争映画の一方的評論
 
ブコバル(ブコバルに手紙は届かない)」 評 価★★★ 激戦の地ブコバルの悲劇
VUKOVAR: POSTE RESTANTE
1994 アメリカ・イタリア・ユーゴ  監督:ポーラ・ドラシュコヴィッチ
出演者:ミリャナ・ヤコヴィッチ、ボリス・イサコヴィッチほか
96分 カラー

 
 1991年8月から1992年1月にかけて、ドナウ河畔の風光明媚な町ブコバルの地で行われた、クロアチア独立勢力とユーゴスラビア連邦軍(セルビア 人)が戦ったクロアチア紛争を題材にしたもの。旧ユーゴ関係の紛争はクロアチア紛争、ボスニア紛争、コソボ紛争いずれをとっても残忍で悲惨な結果をもたら しているが、本作も密告、脅迫、差別、レイプ、掠奪ありの凄惨な内容となっている。
 そもそもユーゴ紛争は、民族、宗教などを拠り所に領土争いに起因しているのだが、他国から見ると実にその理由が理解できにくい。ブコバルの地でもそれま ではクロアチア人とセルビア人の結婚など日常的であったとされるが、民族意識の高まりから一気に憎しみ合いに転換していくのだ。人間とはここまで残忍に憎 しみあえるのか、という程に変容する感情と規制されていく行動規範に怖ろしさを感じる。いわゆる平和主義運動家に問いたい。「平和を」と連呼して、ユーゴ 紛争をどう沈静化させることができただろうか。人間の本質とはそんなに甘チョロく単純なものではないのではないか。

 本作は平和なブコバルの町が戦闘に巻き込まれ、町の建物は2%を残して壊滅するまでに破壊され尽くすまでを描いているが、戦闘シーンやレイプなどのシー ンもあることはあるが、実はそれほど過激な映像にはなっていない。視覚的な残酷シーンは少なく、むしろ精神的にダメージが与えられるタイプだ。映画はかな りスローテンポな作りになっており、戦争映画としては間延びした印象が強い。しかし、それもクロアチア人の妻とセルビア人の夫が幸せな絶頂から離ればなれ になり、苦難の日々を生き延びるという、切なく苦しい精神的苦悩を描き出すという点ではかなり効果的になっている。平和であったはずの世界が、理由もわか らないまま憎しみ合いに変わっていく説明のつかない戸惑いが、ゆっくりとした情景の中で、民族とは何か、生きるとは何かということを考えさせる。多分、当 事者たちは本作を見て、それなりに思うことがあるのだろうが、我々非当事者には本当に不可解なことばかりである。本作は、その不可解さこそが戦争の火種で あり、戦争の是非云々を超越したところに人間の性があるということを示しているのだと理解した。これこそ、紛争の当事者へのレクイエムなのだろう。
 人間関係という視点では、クロアチア人とセルビア人の夫婦愛、そして友情が見物だ。それに反して、異人種への虐めや差別に至る人間性の脆さにも注目だ。

 主人公の妻アナ役はユーゴ出身のミリャナ・ヤコヴィッチ。惜しげもなく美乳ヌードを披露し、目は釘付けだ。しかし、しばらくはそればかり気になって、ス トーリー展開どころではない(笑)。果たしてそこにヌードは必要だったのかは疑問。さらに、夫トーマ役も「珍」にボカシが入って目障り千万。

 戦闘に用いられる兵器はソ連製が多く、銃はカラシニコフ銃。さすがに動いてはいないが、T34/85が数両映っているのにも驚いた。この他、BOV装甲 車、M60BP装甲兵員輸送車が登場する。いずれもユーゴ軍所有のものであろう。
 また、映画の最後にブコバルの空中撮影俯瞰映像が写されるが、実は本作の撮影は1993年8月から11月までブコバルその地で行われている。この当時ボ スニアで紛争が続いており、1995年には再びクロアチア紛争が勃発する最中での撮影であるから、実に生々しい。
 
 全体としては良くできている映画だとは思うが、やはりユーゴ紛争は複雑で難しいため、映画に入り込むことはなかなかできなかったのが残念。


  

興奮度★★★★
沈痛度★

爽快度★★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1991 年、ユーゴスラビアの静かな河畔の町ブコバルで、クロアチア人女性のアナはセルビア人男性のトーマと結婚する。セルビア人トーマの両親と同居するが、その 結婚式の最中からクロアチア独立運動が騒がしくなってくる。
 クロアチア人とセルビア人の対立が顕在化してくるが、ブコバルでは異民族間の婚姻はごく当たり前のことであり、二人はさほど心配もしていなかった。しか し、次第に、ブコバルの町でもクロアチア独立運動派の差別工作が激しくなってくる。さらに、トーマはユーゴスラビア連邦軍の召集されて入隊してしまう。
 トーマとの新居を守っていたアナであったが、セルビア人への迫害が強くなってトーマの両親が移住。アナもやむなく実家に戻ることに。
 トーマはユーゴスラビア連邦軍で各地を転戦、次第にセルビア勢力側となりアナとの連絡が取れなくなる。アナは妊娠しており、トーマの消息を知るため父親 と連邦軍基地を訪ねて回るが、クロアチア義勇兵に包囲された連邦軍基地には近づけない。
 アナの父親も無理矢理クロアチア義勇軍の徴兵で銃を持たされるはめに。そして、ユーゴスラビア連邦軍(セルビア軍)とクロアチア政府軍は全面的な戦闘に はいる。ブコバルの地は激戦の拠点となり、トーマもブコバル攻撃部隊に配属される。
 連邦軍の爆撃で、アナの両親は死亡。心身創痍となったアナはトーマとの新居に呆然と立ち戻る。そこで親友のラトカ母子と逢い、生活し始める。しかし、家 に乱入してきた掠奪盗賊犯の男たちにラトカともどもレイプされてしまう。
 一方、トーマは隙を見て実家に戻り、アナと再会を果たす。しかし、再会も束の間、クロアチア軍の攻撃で単身命からがら脱出。再びアナと離ればなれになっ てしまう。アナのいる実家はクロアチア勢力の拠点となり、セルビア軍はそこに砲撃をかける。「撃つなー」と絶叫するトーマ。逃げ出すアナ。
 アナは気づくと地下室の避難所に寝かされていた。親友のラトカもいた。そこにあの盗賊レイプ犯が逃げてくる。ラトカはナイフでその男を刺し殺す。アナは 地下室を抜け出し、雪降る中、空き家で子供を出産する。
 結局、ブコバルはセルビア軍に占拠される。移送バスに乗り込むアナと子供。隣のバスにはトーマが乗っている。目と目が合う二人だが、バスは別々の方向へ 走っていく。


(2006/09/19)

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