戦争映画の一方的評論
 
「ザ・パイロット 評価★☆ オーストラリアからの義勇兵パイロット 
FOR THE MOMENT
1995 カナダ 監督:アーロン・キム・ジョンストン
出演:ラッセル・クロウ、クリスチャンヌ・ハートほか  
120分 カラー 

  確かに第二次世界大戦時のパイロットの話なのだが、戦争映画とは言い難い典型的恋愛映画。しかし、恋愛ものとしても今ひとつ歯切れが悪い感じが残るのは、 戦争物なのに、その悲壮感をあえて描写していないためとも言える。本来ならば、もっと感動的に泣ける映画に仕上げることも可能であったろうが、時代背景 (戦 争)を省略しすぎたために招いた非現実感のせいだ。
 対ドイツ戦で窮地に立たされているイギリス軍を助けるために、イギリス配下の各国(カナダ、オーストラリアなど)から多くの義勇兵パイロットが参戦した が、カナダにあったその訓練基地を舞 台にしている。主人公ははるばるオーストラリアからやってきた青年で、陽気で開放的な性格で自由奔放な恋愛を展開していく。対するカナダ人女性は決して美 人ではないが、愛嬌のある顔立ちが印象的。田舎町の木訥とした美女という設定か。 このオーストラリア人パイロットと、カナダ人婦人の禁断の愛がテーマとなっているのだが、禁断だけあってなかなか思い通りにいかないのだ。やや複雑な恋愛 の絡まり合いで、今ひとつ恋愛関係がつかみきれない部分があるのだが、この映画の場合、娼婦役が一つの重要な歯車になっているような気がする。この娼婦は パイロットだった夫を亡くした未亡人で、生活のために娼婦になっているのだが、はかない命の若きパイロットたちと、夫を戦場に送り帰りを待ち続ける女たち の心の隙間を埋める貴重な存在なのだ。
 映像的には、カナダの田舎町を舞台にしている点もあり、スケールの大きい自然が堪能できる。映画冒頭からの飛行シーンも、一部やや稚拙なCG映像を除け ば、実機からの鳥瞰映像などが楽しめる。
 戦闘シーンや戦死シーンはないが(事故死はある)、幾分かの飛行訓練シーンが登場する。登場する航空機は全て黄色に塗装された英軍マークの練習機だが、 複葉機のデハビランド・タイガーモス2、単葉機AT-6Aテキサン、双発機アブロ・アンソンが輸送機、爆撃機バージョンで登場する。他の戦争映画ではあま り見かけない機種である点は興味深い。複葉機の牧草地への着陸、離陸シーンはなかなか見物だ。


(以下ネタバレ注意)
  1942年、ドイツ軍の攻勢に窮地に立たされた英軍を助けるために、英国傘下の各国(カナダ、オーストラリア、フランス、オランダなど)から義勇兵パイ ロットが志願した。その訓練基地の一つがカナダマニトバ州にあった。カナダ人ジョニーはオーストラリア人のラクランとともに、マニトバ州の農場に複葉機で 降り立った。恋人のケイトと逢うためである。ケイトの姉リルは夫フランクがやはり飛行兵となって出征していた。初めはリルは人妻でもありラクランと距離を 置いていたが、次第に親密感を強めていく。ジョニーとケイトは婚約し、その間ラクランとリルは密会を重ねる。
 一方基地の教官ジーク上等兵曹は、未亡人で密造酒作りや娼婦として生計を立てているディッパーに恋心を寄せ、結婚を申し入れる。そんな中、訓練生の一人 が恋人にふられた乱心で、無茶な飛行をして地上に激突死する。そして、リルのもとに一通の戦死通知が届く。それは、出征して間もない弟デニスのものだっ た。しかし、リルは心の中でフランクのものであることを願った自分を悔い、ラクランとの恋に終止符を打つとともに、真実を夫フランクにも打ち明けること に。
 さらに、ジーク上等兵曹は航空機の故障で事故死してしまう。ラクランはディッパーのもとを訪れ、慰め合う。そして、いよいよジョニーやラクランが一人前 の飛行兵として出征する日が来る。そこには目と目で互いに愛しみあうラクランとリルがいた。


(2005/02/07)

興奮度★★
沈痛度★★
爽快度★
感涙度★

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