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戦争映画の一方的評論
 
「魔王 評価★★☆ ナチスドイツをネタにした宗 教 色強い贖罪映画
THE OGRE / DER UNHOLD
1996 ドイツ・フランス・イギリス  監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演者:
ジョン・マルコヴィッチ、ゴットフリード・ジョン、ディー ター・ラーザーほ か
118分 カラー 

 
 幼少期に受けた 心の傷から、大人へのトラウマを持ったフランス人の大男が、第二次世界大戦のドイツとの戦いの中で、様々な善悪の出来事の中で翻弄されながらも、本意では ないにも関わらず結果的に生き残っていく姿を描いたヒューマンドラマ。しかし、ベタなヒューマンドラマと言うよりは、幻想的でややオカルト的な要素の強い 映画である。その背景にはキリスト教の信仰的な部分が色濃く、原作が子供(キリスト)を背負って河を渡ったという大男聖クリストフォロスの伝説を題材に作られた、ミシェル・トゥルニエの小説「魔王」というだけのことはある。私はキリスト教の教義的なことは全くわからないのだが、きっ とキリスト教の信仰者の人にとっては、随所で納得のいく場面があるのだろう。善人の無知たる悪、そして贖罪、と難しい表現の中、主人公は神の子なのか、魔 王なのか、神に問うていくシーンが印象的である。主人公がユダヤ人の子供を肩に背負って沼地を渡っていくラストシーンは、まさに聖クリストフォロスの伝説 なのだそうだ。聖クリストフォロ スは、王や悪魔に仕えたあとにキリストに仕えたということだが、王はフランス、悪魔はナチスドイツということになるのであろうか。
 それでいて、映画のストーリーとしては、決して非現実的でもなく、いかにもあ り得そうなものとして進んでいく。時期的にはドイツ軍のフランス侵攻からソビエト軍によるドイツ占領までで、ドイツ軍元帥ゲーリングが登場したり、ヒト ラー暗殺未遂事件やアーリア人種優性実験が関係したり、私的幼年士官学校が舞台となったりと、戦史的にも興味深い。登場する人物は比較的善玉、悪玉がはっ きりしており、ドイツ軍(人)でも両者が存在し、人間的な部分の表現が繊細である。もちろん、ゲーリングは見事な悪玉だが。また、純真なはずの幼年兵たち が頑なまでにナチスに毒されていく姿は誠に哀れである。

 撮影はポーランド、ノルウェイ、フランス。幼年士官学校の舞台となる貴族の城はフランスなのかな。街並み、湖沼、城などそれぞれのシーンで上手にロケ地 を使い分けている感じがする。
 登場する兵器としては、ドイツ軍の88高射砲(本物かどうかよく分からないが(汗))とソヴィエト軍の戦車T34/85が数台。ロケ地の関係から言うと ポーランド陸軍の所有しているものだったのだろうか。一応稼働しているように見えた。このほか、パンツァーファウストの訓練風景も登場し、噴射ガスで事故 が発生するシーンはちょっと衝撃的。

 とにかく、見ているだけで現実と非現実がわからなくなるような不思議な映画だ。芸術映画とも言えるかもしれないが、どちらかというと宗教映画のような印 象が強い。本映画を見て、自分の過去の贖罪を考えてみるのも一興かもしれない。

興奮度★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1925年のフランス、パリ郊 外。少年寄宿舎に入っていた孤児のアベルは、級友からのいじめ、校長である聖クリストファーの体罰を受けながらも、唯一の友人ネスターの助けを借りながら なんとか生活していた。ネスターの父親は用務員であり、寄宿舎においては特権階級であった。そのネスターはアベルの不注意から火事で死亡してしまう。寄宿 舎など火事になってしまえばいいと心に念じていたアベルは、自分が神に頼んだためにネスターを殺してしまったと自戒の念を抱く。
 アベルは大男に成長し、自動車修理工となるが、周囲から は不気味がられており孤独であった。大人への不信感が強く、子供の写真を撮るのが唯一の楽しみであった。そんな中、上流階級の女の子マルティネが接近し、 二人は仲良しになっていく。しかし、カメラに触らせることを拒んだため、マルティネはアベルに強姦されそうになったと狂言を言い放つ。その結果、アベルは 逮捕され、刑のかわりに対独戦の前線に出征させられてしまう。
 フランス軍で通信兵となったアベルは伝書鳩の管理をまか されていたが、脳天気に食事とワインを楽しむ大尉ともども、電撃侵攻してきたドイツ軍の捕虜となってしまう。アベルは大事に鳩を持ち込み、収容所内で鳩を 飼育する。収容所は比較的管理の杜撰な所であり、アベルは監視の目を盗んでは無人の山小屋へ抜け出していた。その山小屋で目の見えない老ヘラジカと出会 う。また、山小屋で収容所所長のドイツ軍大佐とも遭遇するが、見逃してくれる。
 収容所では脳天気な大尉が鳩を食べてしまう。気落ちした アベルだったが、ドイツ軍大佐から呼び出しをうけ、ゲーリング元帥の狩猟用山荘の助手に抜擢される。山荘では雑務のほか、狩猟の助手を務めることとなり、 次第にドイツ兵やゲーリングの信頼が厚くなってくる。ゲーリングは盲目の老ヘラジカを撃ちたがったが、大佐がそれをなんとか止めていた。しかし、自分の城 を幼年士官学校として使わせているカルテンボーン伯爵がヘラジカを撃ってしまう。カルテンボーン伯爵はナチスドイツにやり方に不満を持っていたのだ。怒り 狂ったゲーリングは大佐とカルテンボーンを前線に送ってやると言い放つが、その時スターリングラードから手紙が届く。ドイツ軍が劣勢に陥り、ゲーリングも 大佐も皆東部戦線に駆り出されることになったのだ。
 残されたアベルはカルテンボーン伯爵の幼年士官学校で働 かせてくれるように頼む。子供が好きなアベルにとっては楽しい場所であったのだ。城には200人の少年がおり、すぐにアベルは人気者となる。ある日、湖で 旅をする少年たちの一団を発見し、城に連れてくる。軍医で遺伝学教授のプレトヒェンは連れてきた少年の骨格等からアーリア人優性遺伝を認め、アベルの勧誘 を高く評価する。実は、幼年学校は地元の母親たちには不評であり、なかなか生徒が集まらなかったのだ。アベルは意気揚々と少年たちの勧誘のために村々を回 る。アーリア人優性主義者の軍医は北欧系以外の少年はいらないと言うが、他の教官は誰でもいいとして入学させた。次第に、村々ではアベルのことを「鬼」と 呼ぶようになる。
 そんな風評にとまどいを覚えながら、アベルはローターと いうか弱い少年に特に目を配っていた。そのローターはパンツァーファウストの後噴射ガスで大やけどを負って死亡。自分が連れてきた少年の死にアベルは罪の 意識を強く感じるようになる。
 ヒトラー暗殺未遂事件が起きる。カルテンボーン伯爵は事 件の黒幕として逮捕される。さらに、東部戦線の戦況悪化で年長の生徒や教官たちが出征してゆき、学校には数人の軍人と年少の生徒、アベル、食事係の婦人だ けが残される。ソヴィエト軍の接近を知り、軍医のプレトヘェンはアベルの馬を使って逃亡していく。しかし、避難する住民たちの車列の中で軍医は事故死す る。また、ソヴィエト軍に解放されたという、かつての収容所にいたフランス人捕虜とも出会うが、子供たちのことが心配なアベルは一緒に行くことはできな い。さらに、その帰り道で弱り切ったユダヤ人の少年エフライムを拾う。学校に戻ったアベルはエフライムを匿って介抱しながら、幼年学校の生徒らに逃げるよ う諭す。アベルの言うことを聞こうとする少年も多かったが、一部の少年が徹底抗戦すべきだと言いだし、それまでに洗脳されたナチスの絶対信奉のために城に 立てこもることとなる。
 いよいよソヴィエト軍が城を包囲する。戦車など圧倒的な 兵力のソビエト軍の前に倒れていく少年兵たち。その哀れな姿を横目にアベルはエフライムを連れて城を脱出する。肩に少年を乗せて湖沼を渡るアベルは、ユダ ヤ人少年を救うことでこれまでの罪を贖罪していると感じるのだった。

(2007/04/11)

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