戦争映画の一方的評論
 
「バッファロー・ソルジャー 評価★★★ 奴隷から解放された黒人部隊 
BUFFALO SOLDIERS
1997 アメリカ 監督:チャールズ・ハイド
出演:ダニー・グローバー、ミケルティ・ウイリアムソンほか  
94分 カラー

 テレビ放映用に製作された映画で日本では未公開。スカパーのスーパーチャンネルで放映したものを視聴。1866年南北戦争終結後にアメリカ合衆国陸軍は 第9,第10騎兵連隊組織のために黒人兵の募集をかけるがその黒人部隊がバッファロー・ソルジャーと呼ばれる。彼らの奴隷からの解放に喜びを感じつつ、相 変わらずの差別と自立へのとまどいが描かれている。テレビ用のためかあまり予算はかけられてはいないが、ストーリー重視でチープ感はない。戦闘シーンにや や物足りなさは感じるが、全体として満足感は得られる。史実に乗っ取りながらもストーリーそのものはフィクションのようだ。

 (以下ネタバレ注意)
 1880年、登場するバッファロー・ソルジャー(黒牛兵士)は第10騎兵連隊のH中隊に所属している。連隊中このH中隊が黒人部隊となっているよう だ。連隊には、編成時から目をかけてくれるグリーソン大佐がいるが、中隊指揮官は白人の士官が交代でついている。連隊長はパイル将軍で黒人部隊に強い偏見 を持っている。
 バッファロー・ソルジャーの黒人トップはワイアット曹長。歴戦の勇士を取りまとめる頼りがいのある男だが、下士官のため指揮権を持たずに上司からの偏見 に耐えている。あくまでも軍規に徹し、部下や他のものからは奴隷のままではないかと陰口も叩かれている。
 第10騎兵連隊はテキサスのアパッチ居留地の警護に当たっている。将軍は黒人とアパッチのハーフである偵察兵を使い、抵抗するアパッチ、メスカレロ族の ビクトリオが 管内で、祈祷師ナナをトップとする地元アパッチと合流を図っているとの情報を得る。C中隊とH中隊に出動命令が出る。H中隊は黒人に理解のある若い白人中 尉の指揮で出動する。出動の際街を通る際に馬を下りるのを見て中尉は驚く。黒人は街中で馬に乗ったまま通過してはいけないことになっているのだった。
 H中隊は敵の待ち伏せに会い、中尉は戦死してしまう。指揮を引き継いだワイアット曹長はアパッチの首領ナナを捕らえることができた。そこに、C中隊に随 行していた偵察兵から「至急C中隊に合流支援するように」との伝令が届く。しかし、曹長はナナの護送を優先して帰隊する。将軍らはナナの捕縛を喜ぶが、間 もなくひどい被害を受けてC中隊が戻る。C中隊の指揮官で偏見の強いカー少佐が「曹長は我々を見捨てた」との進言で、曹長は頭ごなしに罵倒される。偵察兵 の取りなしも あったが、曹長は何一つ弁明しないのだった。こうした姿を見て、部下も偵察兵も「奴隷のままなのか」と曹長を責める。
 間もなく、アパッチのビクトリオらが泉に向かっているとの情報を得る。泉で待ち伏せするH中隊は、アパッチを包囲することが出来た。首領と話をする曹長 だが、ビクトリオに「奴隷時代の主の命令にどうして従うのか」と詰問され答を出せない。ついに、投降を拒否するビクトリオに対して曹長は全員射殺を命じ る。躊躇する部下たち。そこに、アパッチの子どもが一人曹長の前に歩んでいく。曹長は引いた劇鉄を戻し、アパッチに国境を越えてメキシコへ逃げるよう命じ るのだった。
 結果的にアパッチを逃したH中隊は帰隊する。しかし、そこには街中を通っても馬を降りない黒人兵達があった。白人の市民も行進に拍手で迎えるのだった。

 奴隷から解放され、組織されたばかりの黒人部隊の混乱と苦悩は、想像に難くない。様々な活躍もあったようだがアメリカ国内ではタブー視されており、あま り語られることがなかったようだ。本作は、その一部を垣間見ることができる良作であり、奴隷の心をひきずりながらも徐々にアメリカ国民とての誇りと自覚を 得ていく過程をうまく描いている。ただ、エピソード的には、かなり限定しており、アメリカ社会全体の背景など歴史的なものを知るにはちょっと物足りない。

(2004/09/10)

興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★★★
感涙度★★