「ウェルカム・トゥ・サラエボ」 評価★★★ 内戦を取
り上げた名作だが、やは
り記者は好かん
1997 イギリス 監督:マイケル・ウインターボトム
出演:スティーブン・ディレーン、ウディ・ハレルソン
105分 カラー
(2003/1月 スカパーにて視聴)
いちはやくボスニア紛争(1992〜1995)、ボスニアヘルツェゴビナの惨状を映画化した名作で、イギリスのテレビ記者の実話をも
とに作られたものである。
ボスニア紛争は、旧ユーゴスラビアからのボスニア・ヘルツェゴビナの独立を巡り、クロアチア人、セルビア人、ムスリム人の3民族の争いが原因である。互
いの民族を虐殺しあう内戦の悲惨さを描いた映画である。
舞台はサラエボ。市内はイスラム系のムスリム人が多く住んでおり、周囲はセルビア軍に包囲されている。毎日のように砲撃や狙撃で市民の命が失われる。そ
んな状況を取材するイギリス人ジャーナリストのマイケルはスクープを狙うため取材を続けるが、限りなく前線に近い村に孤児院があることを知る。なんとか、
危険なこの場所から脱出させようと画策するが、イギリス本土では誰も気にはとめずに、芸能ニュースが一面を賑わせている。マイケルは記者としてすべきこと
ではないとわかりつつも、他人事にはできず9歳の孤児エミラをイタリアへ逃すことにし、自分の養女として育てることとする。
国連やアメリカは内戦に介入してはいるが、武力衝突の元凶と言われたセルビア人はキリスト教徒であり、強硬な制裁ができずにいる背景がある。映画中でも
「UN」のマーク入りの青色の国連軍が出てくるが、完全な治安を握っている状態ではない。市内を抜ければセルビア人支配地であり、検問がある。イタリアへ
の脱出バスにセルビア人が乗り込んで、ムスリムの子を連れ出すシーンは、民族紛争の根深さを感じる。
この映画は、記者のジャーナリズム精神と良心の葛藤を描いたものであるが、たった一人しか救うことのできない虚しさ、しかしそれすらやらずにはいられな
いという一種の脅迫観念的な心情が伺われる。また、実際に用いられたニュース映像を織り込んでもおり、よりそのリアル感は紛争地から逃れることのできない
無数の住民の虚無感というものも強く感じる。なお、映画中から紛争の背景や置かれた状況を理解するのは難しい。十分に学習が必要だ。
(2003/02/09)
興奮度★★★
沈痛度★★★★★
爽快度★★
感涙度★★
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