「U-571」 評価★★★ 最新技術駆使のUボート映
画
U-571
2000 アメリカ 監督:ジョナサン・モストウ
出演:マシュー・マコノヒー、 ビル・パクストン、ハーヴェイ・カイテルほか
116分 カラー
映画館で見てきが、アメリカ型勧善懲悪で、しかもずるいだましうちのアメリカ映画(笑)。ドイツ軍の暗号機「エニグマ」奪取の設定も、それに至る過程の
戦闘シーンも現実味に欠ける。だが、背景にある歴史や、戦闘としてのリアル性を完全に排除して、アクションとして見るならば激しさや勢いがあって、さすが製作
120億円だという感はある。
そもそも、史実ではエニグマ暗号機の解読に成功したのはイギリス軍であり、アメリカ海軍があたかもエニグマを奪取した功績のような本作は、英国議会をも巻
き込んでイギリスから相当な非難があったようである。さらに、Uボートが撃沈された輸送船船員を銃撃するシーンもまた、ほとんどのUボート乗り組み員はし
なかった行為と物議を醸した。軽い気持ちで格好良いアメリカ軍を描いたつもりであろうが、とんだ方向に火種が飛んだ作品でもある。ストーリーは全くのフィ
クションながらも、英軍によるU−110・U−559からの暗号解読書回収の一件やアメリカ海軍が乗っ取ったU−505の史実を参考にはしているらしい。
登場するアメリカ潜水艦はS−33と呼ばれる旧式のS型潜水艦なのだが、実在のS−33は1922年に就役しパナマ・北大西洋の哨戒任務にあたり戦後まで
活躍している。一方、ドイツ軍のU−571もまた実在だが、こちらは1944年空爆により撃沈されている。いずれも、史実とは全く関
係ない架空の存在と言うことだ。映画中で使用されている潜水艦は、なんと実物大のレプリカで、マルタにあるMediterranean Film Studios (MFS)というところで2隻が製作されている。S−33に化けた方は何をモチーフにしたのか不明だが、実際のS型とはかなり異なり、上部構造はガトー級のバラオ型にも似ているような気がするがどうなのだろう。U−571に化けている潜水艦はVIIb
型をモデルにしているようだ。いずれにしても、実物大の潜水艦を使用しているだけあって迫力は十分。また、潜水艦内部の映像も、ちょっと部屋数が少ないな
という印象はあるものの、しっかりと作り込まれているようで頼もしい。爆雷時や漏水等の艦内アクションも良い。爆雷に呼応した振動するカメラワークや水兵
の動きをなめらかに写すスピード感も好感。これまでの数ある潜水艦名作映画の良い所を
吸い取ったような感じ。ミニチュア特撮、CGにしても出来は良い方で、背景にある歴史性や史実は一切無視して、潜水艦アクションに特化して見るならば、か
なり楽しめるのではないだろうか。
ただ、やっぱり史実に沿っていないという非リアル感が終始つきまとうし、戦闘シーンにはいくつかいただけない点も見られる。ドイツ語も読めないようなア
メリカ兵が、しかも数少ない兵員でいきなりドイツUボートを操鑑できるはずがないし、ドイツ兵ですら修理できなかったエンジンをアメリカ兵が短時間で修理
できるのは不条理。また、機銃や機関砲で蜂の巣のように撃たれたUボートがまともに潜水できるのか。たった1発の魚雷が艦首に当たっただけでドイツ軍の駆
逐艦が大爆発を起こすなど、あまりにご都合主義的戦闘シーンはしらけた。特にこれらのシーンは後半に集中しており、前半の緊迫したムードが一気に台無しに
なってしまったのは残念。どうしてもハリウッド的ヒロイズムに終結させたかったのだなという印象。
派手な潜水艦アクションを楽しむにはちょうどいいかもしれないが、リアルな潜水艦映画を求めるのならば趣意違いと言えるだろう。
(2003/02/08、2006/11/06追記)
興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★★
感涙度★
(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください)
大西洋では輸送船がUボートによって大量に沈められていたが、連合軍はドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読に成功していなかった。
1942年4月、ドイツ軍の潜水艦Uー571は商船を撃沈するものの、連合軍の攻撃を受け、燃料漏れから機関室に火災を起こし、ディーゼルエンジンが二基とも停止してしまう。緊急にベルリンにSOSを打電する。
アメリカ海軍旧型の潜水艦S−33副長タイラー大尉は、まだ冷静な決断ができていないと、ダルグレン艦長(少佐)からの推薦を得られず、艦長に昇進でき
なかった。それを不服に思うタイラー大尉だったが、S−33に急な作戦命令が下る。しかし、潜水艦は急な改装を施され、司令部にドイツ生まれの通信士ウェ
ンツを連れて来いと言われたり、ドイツ語の堪能なハーシュ大尉や海兵隊のクーナン少佐が同乗することとなるなど、通常とは異なる様相だ。
出航して作戦の内容が明かされる。S−33はドイツ補給潜水艦のふりをしてU−571に接近し、ドイツ軍のエニグマ暗号機と暗号書を奪取せよというもの
だった。敵艦奇襲作戦はクーナン少佐の指揮のもとタイラー大尉、エメット大尉、ハーシュ大尉にウェンツら水兵9名となる。
S−33はU−571に接近し、ドイツ軍のふりをしてボートで接近。ドイツ語で話しかけられ、ハーシュ大尉が返答しなければならないが緊張のあまり声が
出ない。すんでの所でウェンツが返答し急場を凌ぐが、やがてドイツ兵に見破られる。激しい銃撃戦の末Uボートを制圧。エニグマ暗号機も無事捕獲し、S−
33に捕虜を移送している最中に別のUボートにS−33は撃沈されてしまう。ダルグレン艦長も戦死し、タイラー大尉は数少ない水兵らとともにU−571に
残される。いきなり指揮官となったタイラー大尉は、兵曹長の助けを借りてなんとか敵Uボートを撃沈する。しかし、タイラー大尉はフランスのランズエンド岬
に向かうべきか、イギリスに向かうべきか決断が下せないでいる。そんなタイラー大尉に兵曹長は威厳を持てと諭す。
エンジンの修理を行っているうちに、ドイツ軍機が飛来する。タイラー大尉は撃ち落とそうとする兵を押さえて友軍のふりをしてやり過ごす。しかし、その後
すぐにドイツ軍駆逐艦がやってくる。もはや騙し続けることは不可能となり、修理の終わったエンジンで急速潜航を始める。深く潜航したU−571だったが、
駆逐艦の激しい爆雷の嵐に損害を受け始め、浮上するしかなくなったタイラー大尉は残った1発の魚雷で起死回生の攻撃を仕掛けることを計画する。艦内に一人
いたドイツ兵捕虜に殺された水兵マッツォーラの死体とゴミを噴出して敵駆逐艦の注意を惹き、一気に浮上して攻撃するのだ。ところが、その魚雷発射管の圧搾
空気が漏れていて魚雷が発射できない。小柄なトリガーが水中に潜ってバルブを閉めに行くが手が届かない。水面に浮上する寸前にようやく空気漏れが停まり、
見事に駆逐艦の艦首に魚雷を命中させるのだった。しかし、トリガーの命も失われていた。
U−571も破損がひどいため、タイラー大尉らは退艦しボートで漂流を始める。もちろんエニグマ暗号機をもって。
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