戦争映画の一方的評論
 
真 実のマレーネ・ディートリッヒ  評価★★★ 伝説の女優の波乱の生涯  
MARLENE DIETRICH: HER OWN SONG
2001 フランス・ドイツ・アメリカ 監督:J・デビッド・ライヴァ
出演:マレーネ・ディートリッヒ、ジャン・ギャバンほか  
105分 カラー

  伝説の女優マレーネ・ディートリッヒの生涯を描いたドキュメンタリー映画。実は、私個人的には外国人女優や俳優の知識が乏しく、なんとなく名前を知っ ている程度でした。マレーネはドイツ生まれのドイツ人でしたが、ヒトラーの施策に反対してアメリカに渡って活躍した女優です。反ナチスの広告塔となるとと もに、第二次世界大戦中の精力的な従軍慰安活動が評価されている人でもあります。しかし、その生涯は決して平坦なものではなく、波乱に満ちた生涯を映画化 したものです。監督はマレーネの孫に当たる人物だそうで、大部分がマレーネらの記録映像と関係者のインタビューで構成されています。

 マレーネは1901年ベルリンで生まれ、演劇学校に通うかたわら舞台に上がるようになる。さほど売れっ子というわけではなかったが、持ち前の退廃的で不 良っぽい魅力がイギリス映画のスタンバーグ監督に見いだされ、「モロッコ」で映画メジャーデビューをする。その後、活動の拠点をアメリカに移し、スタン バー グ監督と「嘆きの天使」「間諜X27」「上海特急」などヒット作を次々と飛ばし、黄金時代を築く。
 ヒトラーはマレーネの活躍を利用するためドイツ国内での映画活動を強要するが、マレーネは拒否し、逆にアメリカ国籍を取得する。既に結婚し一女をもうけ ていたマレーネだが、良き理解者である夫とは離婚せずに自由奔放な恋愛を続けていた。恋人が戦争に赴くと失意と心配から戦争慰問活動に精力を傾けるように なる。前線への慰問も厭わないマレーネの行動により戦後、自由勲章を受けた。
 戦後はジャン・ギャバンとの秘めた恋愛を続けるが、決して結婚することはなかった。最初の夫や、ギャバンらとの深い信頼関係があったからこそだ。戦後も 映画に出演を続けるが、持ち前の毒のある美しさは世間から受け入れられなくなり、世代の交代が進む。失意の中、名曲「リリー・マルレーン」の大ヒットで歌 手として息を吹き返す。世界各国でリリー・マルレーンを歌い続けるマレーネだが、いよいよ祖国ドイツでのリサイタルの機会が訪れる。しかし、観客やマスコ ミの反応は冷ややかだった。祖国を捨てた女という烙印はなかなかぬぐわれないのだった。
 晩年はほとんど人前から姿を消す。衰え、醜くなった姿を見られたくないという気持ちがあったのだろう。1992年人知れずマレーネはこの世を去るのだっ た。

 この映画が戦争系に入るかどうかは若干疑問はあるが、少なくとも第二次世界大戦、ヒトラーの政略に翻弄された人物であることだけは間違いない。ドイツ国 民の多くがヒトラーの恐怖の前に屈服したのに対し、真っ向から対抗したマレーネの心意気は彼女の人生そのものをあらわしている。若き頃の小悪魔的な魅力は 今でも通用するだろう。また、晩年の波乱の人生全てを背負ったような重厚なリリー・マルレーンの歌声。あまり知らなかったとはいえ、私の断片的な知識が一 本の線でつながったドキュメンタリー映画でありました。ドキュメンタリーですが、決して飽きはしません。

(2004/08/27)

興奮度★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★★★

 
真実のマレーネ・ディートリッヒ デラックス版真実のマレーネ・ディートリッヒ デラックス版