戦争映画の一方的評論
 
「ラスト・バトルライン(ファイブ・デイズ・ウォー)」 評価★★★★★ ドイツ軍の包囲か らの生還 
THE LOST BATTALION
2001 アメリカ テレビドラマ 監督:ラッセル・マルケイ
出演:リッキー・シュローダーほか  
93分 カラー

 アメリカのテレビドラマ。スカパーのスターチャンネルで放映。ぱっと見、「バンド・オブ・ブラザーズ」に似ている。どちらもテレビ用だから画像の質のせ いかな、テレビ用って何 かちょっと違う。
 史実に基づいた映画で、第一次世界大戦1918年10月のフランス、アルゴンヌの森で米第77歩兵師団308連隊の大隊約600名がドイツ軍の包囲から 生還する逸話である。弁護士出身の大隊長ホイットルシー少佐は彼のような文民出身を毛嫌いする職業軍人アレグザンダー大将の無謀な突撃命令を受ける。無謀 な命令に反発しながらも、勇敢にドイツ軍陣地へ突撃し、ア ルゴンヌの森内部に潜入する。相当の被害を出しながらも所定の占領目的「シャレヴォー・ミルの森」を確保したが、両側衛で連動しているはずの米、仏の師団 が退却をしてしまう。もはや援軍はなく、伝令に よる連絡もつかず、大隊はドイツ軍に四方を包囲され、孤立してしまう。同じく迷っていた307連隊のホルダーマン大尉ら80名も合流した。次第に、負傷兵 も増え、食料・水が乏しくなってきたところで、ようやく伝書鳩で大隊が孤立していることを司令部に伝えることができた。司令部は空軍の協力で空から大隊を 捜索する。発見された大隊支援のため、砲撃を開始するがそれは味方の上にだった。再び伝書鳩で砲撃中止を連絡したときには大隊は甚大な被害を被っている。 それでも繰り返されるドイツ軍の攻撃。包囲したドイツ軍から「降伏か死かどちらかを選択せよ」との使いが来る が、彼等は第3の選択である生きて戦うことを選ぶ。彼等がようやく は包囲から脱出することができた時には生存者は200名に過ぎなかった。
 この戦いの直後の1919年には戦った本人達が出演した映画も作成されているようだ。しかし、当時では真実をあからさまにすることも出来ず、むしろ英雄 としての映画だったようだ。本作はかなり事実に忠実に描いているようで、一人一人の登場人物像にかなりの焦点をあてている。主人公のホイットルシー少佐は この後 に勲章を授与されているが、彼が単に勇敢な英雄だったというだけでなく、文民としての苦悩をうまく表現している。部下の職業軍人であるマクマートリ大尉も 頑なではある が、戦闘に関しては勇敢で忠実な姿を描いている。同じく職業軍人のゲディキ軍曹も無感情だが頼りになる男である。この連隊はニューヨークの兵士が主体であ るが、田 舎出身でバカにされていた兵卒に射撃がうまいヨーダ、足が速いリパスティなど頼りになっていく兵士の姿も描かれている。部下の頑張りを率直に評価する少佐 と、少佐を職業軍人以上に信頼していく部下たち。ラストのシーンで、アレグザンダー将軍がやってきて自分の指揮ミスを棚に上げて「この損害は全体の利益か ら必要だった」との言葉に反論する少佐を見て、部下たちが上着の第1ボタンを閉めるシーンは堅い信頼を物語っている(真面目な少佐は常日頃身だしなみを注 意していたから)。
 映画のほとんどが塹壕戦や白兵戦のシーンで迫力十分。やはり第一次大戦の小銃中心の戦いは本当に迫力があるし、恐ろしい。しかし、ただ激しいだけでな く、ドイツ軍側も取り上げるなど ストーリーもしっかりしているし、先に挙げたように登場人物の心の動きも良くわかる。映画でないのが残念なくらいである。
 このロストバトリアン(失われた大隊)は、アメリカ陸軍史では英雄の証でもあるが、裏を返せば、無謀な指揮官によるミスで多大な損失を出した失敗例でも あり、戦後のこの時期だからこそこいう描き方が出来たのではないかと思う。見る機会があれば是非お勧めしたい。というわけで久しぶりの5つ★
 なお、砲撃中止を伝えた鳩はスミソニアン博物館に展示されているらしい。
(2004/05/30)

関係するサイト
The Lost battalion of WWI 
AETV.com On TV

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★★
爽快度★★★★
感涙度★★

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