戦争映画の一方的評論
 
「炎の戦線エル・アラメイン 評価★★☆ アフリカの砂漠に取り残されたイタリア師団
EL ALAMEIN
  2002 イタリア 監督:エンツォ・モンテレオーネ
出演:パオロ・ブリグリア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノほか
113分 カラー


 第二次大戦の北アフリカ戦線、エル・アラメインの戦いを描いたイタリア映画。エル・アラメインの戦いは、ロンメル率いるドイツ・イタリア連合のアフリカ 軍団(枢軸軍)が、英軍の守備するエル・アラメインの奪取を目論んで総攻撃を図るが、死守した英軍が次第に枢軸軍を押し返し(ライトフット作戦、スパー チャージ作戦)、ドイツ・イタリア軍が敗走する戦いである。本作は、組織的に撤退するドイツ軍とは裏腹に、前線に取り残されたイタリア軍の奮戦ぶりと悲壮 さを、学徒志願の新兵の姿を通して描いたもので、意気高らかに志願した新兵が見た現実と、戦場の友情とエゴイズムが生々しい。
 同様のシチュエーションを描いた作品として「砂 漠の戦場エル・アラメン(1968伊)」があるが、良く似た雰囲気である。どちらもイタリアお得意のマカロニコンバット調ではなく、シリアス調の ヒューマン重視の構成となっている。ただし、イタリア映画特有の間延びした間の取り方は健在で、いささか冗長なイメージが強い。また、資金をかけていない らしく兵器や戦闘シーンの貧弱さを誤魔化すためであろうか、映像に暗転を多用しており、これもまた眠くなる要素を提供している。
 ストーリーそのものは、きちんと練られており、オチもきちんとあるのだが、ハリウッド映画のような起伏のあるものではない。ゆったりと流れていくストー リーは、やっぱりヨーロッパテイストだ。役者は全く見た事のない人たちばかりだが、イタリア人の髭の濃さだけは目立つ(爆)。演技は、イタリア人独特の無 気力さや失望に対する怒り方など素晴らしい(当たり前か)。
 イタリア軍は食料も弾薬も乏しく、しかもドイツ軍に置き去りにされる可哀想な役回り。しかし、本作では、随所に格好良いイタリア兵が登場する。ちょっと 美化しすぎだろうとも思うが、イタリア映画なので仕方がないか。もちろん、それがストーリーのシリアスさを損ねてはいる。主役の部隊はパヴィア師団で、こ の他ファルゴーレ師団も登場する。いずれも、水や食料・弾薬に事欠き、英軍の爆撃に頭を抱えるばかりで、敗走して全滅するイタリア第10軍団の窮乏と悲壮 感を十二分に味わう事が出来る。また、ラストシーンで戦闘で亡くなった無名戦士の墓標映像が出てくるが、イタリア人にとっては涙なしには見られないであろ う。イタリアに とっては、いわゆる、戦後総括的な位置づけの映画なのかも知れない。
 先にも述べたが、登場する兵器類はほとんどない。車両はキューベルワーゲンと軍用トラック程度で、戦車も出てこない。英軍砲弾の弾着シーンは多いが、砲 そのものは登場しない。昼間の弾着シーンは砂埃などの演出でなかなか見応えがあるが、夜間のものは花火程度でいかにもしょぼい。しかも、戦闘の激しさを夜 間映像の光(フラッシュ)で誤魔化そうとしているのか、夜間映像が実に多い。このあたりは金かけてないのがよくわかる。ただし、近年の映画だけあって、砂 漠のシーンのスケール感はしっかりしている。
 全体として、映画としては完結しているのだが、戦闘シーンがしょぼいこと、イタリア兵を美化しすぎな点でやや減点要素かな。 

(参考)
エル・アラメンの戦い
1942年10月23日から11月4日まで
枢軸軍側 戦死者9,000名、負傷者15,000名、捕虜35,000名
連合軍側 戦死者4,600名、負傷者8,500名

 
興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★

炎の戦線エル・アラメインオフィシャルサイト 

(以下 あらすじ ネタバレ注意)

  1942年10月北アフリカ。砂漠に設けられたイタリア軍パヴィア師団第28中隊フィオーレ中尉の陣地に一台のバイクに乗った新兵セッラ が到着する。セッラは大学を中退し学徒志願してきた兵で、たった一人の交代要員であった。戦局は連合軍が優勢となっており、イタリア軍陣地は英軍の砲撃に より、日に日に消耗していた。水も弾薬も尽きかけており、セッラが本国で聞いていた話とは全く異なっていた。
 セッラの到着当日、リッツォ曹長のもとに案内してくれた伍長も英軍砲撃の直撃を受け、耳たぶだけを残して砂に帰った。リッツォ曹長らの分隊には無気力な ムードが漂っている。 攻撃する砲もなく、ただ英軍の砲撃を待っているだけだからだ。ここで、セッラは古参兵から、1常に頭を下げろ、2赤痢にかかっても皆かかっているから申告 するな、3サソリに気を付けろと教えられる。
 ある日、陣地内に潜入した英軍の狙撃兵にイタリア兵がやられる。救助に行った看護兵も狙撃され、ついに迫撃砲手のタロッツィが呼び出され、狙撃兵を撃退 する。夜 になって、地雷を踏んだ英軍車両から物資を調達するため、セッラらは出かけるが、セッラは地雷を踏んでしまう。しかし、それは対戦車地雷であり命は助かっ た。古参兵士は「三度まで奇跡は起こる物だ。おまえは最初の砲撃、そして地雷と2回まで使ってしまった」とセッラをからかう。
 セッラは水の補給に向かうが、もはや水は油のような水しか補給されなくなっていた。
 いよいよ、英軍の総攻撃が近づいてきたため、リッツォ曹長とセッラは二人でカッターラ低地の偵察に出かける。延々と歩き続け、二人は以前偵察に出て行方 不明となったイタリア兵の遺体を見つける。
 英軍の攻撃は北部と予測され、南部の第28中隊はルスポリ戦闘団のファルゴーレ師団の支援に向かう。そこで、激しい英軍の攻撃を受け、第28中隊の兵士 も負傷する。英軍の攻撃は北部で激しく、アリエテ師団は全滅し、ドイツ軍指揮官ロンメルは撤退を始める。第28中隊にもカレット・エル・カディムまで後退 して防御戦を敷けとの指令が来る。しかし、後退用のトラックはあてがわれず、徒歩での後退となる。
 ようやくカディムに到着するが、そこは野戦病院であり、さらにフーカへ後退する命令が出ていた。そこの野戦軍医は居残る意志を固めている。
 フィオーレ中尉ら中隊は、負傷者を乗せたトラックに便乗して後退するが、途中、従兵の墓を掘る将軍に出会う。手伝いを名乗り出るが、自分に15年仕えた 従兵の墓は自分でと断り、将軍は自決する。
 さらに途中で、英軍の戦闘機に銃撃を受け、トラックは炎上。再び徒歩での後退となる。しかし、フーカはすでに英軍の手に落ちていた。一行はマルサ・マト ルーへ集結する事となった。しかし、徒歩の中隊に英軍が追いつき、投降を呼びかける。
 ついに、フィオーレ中尉、リッツォ曹長、セッラの3名だけとなり、砂漠を歩き続けるが、ついに中尉が倒れる。セッラはそこにあったバイクをなんとか動か し、共に乗る事を勧めるが、中尉と曹長は、セッラ一人で行くように指示するのであった。
 映像は、エルアラメインの戦死者の墓標を写す。名前のある兵士から・・・無名の兵士へ。

 (2005/06/06)

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