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かぽんの戦争映画一方的評論
 
「ケドマ 戦禍の起源 評価★★★ イスラエル建国に向けたユダ ヤ人の戦争
KEDMA
2002 イタリア・フランス・イスラエル  監督:アモス・ギタイ
出演者:
アンドレイ・カシュカール、エレナ・ヤラロヴァ、ユーセ フ・アブ・ワルダ、モニ・モシュノフほ か
94分 カラー 

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  第二次世界大戦後、ドイツの収容所などから解放されたユダヤ人は帰る場所はおろか、住む場所さえなかった。やっとドイツから解放されたにも関わらず、ユダ ヤ人は再びイギリスやアメリカの手によって収容所に入れられ、共産主義国からは排斥され、ポーランドでは虐殺事件まで発生する。こうした戦勝国の施策に 業を煮やしたユダヤ人は、シオニスト運動に傾倒し始め、イギリスが武力統治するパレスチナへの移住を強行し始める。1948年になってイスラエル建国宣言 がなされるが、本作はそ の1948年のパレスチナを舞台に、建国・独立戦争に巻き込まれていくユダヤ人の姿を、様々な問題提起をしながら製作されている。監督のアモス・ギタイは イスラエル建国後の生まれで、イスラエルが抱える諸問題を独特の映像観で描く。
 アモス・ギタイの手法は極めて抽象的、客体的であり、言わんとする意図をくみ取るのはなかなか難しい。映像も無言のシーンが延々10分近く続くなど冗長 なシーンがあるかと思えば、哲学的で難解な言葉が朗々と語られる饒舌なシーンもある。それだけに、心に響く深遠なインパクトはあるのだが、内容が理解でき なければ、ただ鬱陶しいだけでしかない。さらに、本作は登場人物の性格付けや時代背景などの説明が全くと言っていいほどない。ユダヤ人問題、パレスチナ問 題、イスラエル建国などの歴史についての知識がなければ、ほとんど理解できないだろう。 
 その難解さゆえ、同年に日本人監督藤原敏史によって「インディペンデンス アモス・ギダイの映画「ケドマ」をめぐって」というドキュメンタリー映画も製 作されている。こちらもなかなか難解なのだが、本作を理解する上で、先に「ロングウェイホーム 遙かなる故郷 イスラエル建国への道(1997米)」 を視聴することをお勧めする。イスラエル建国に至るユダヤ人の行動、パレスチナ支配に固執しユダヤ人を排除しようとするイギリス、事なかれ主義アメリカ大 統領トルーマンの関与、ユダヤ人とアラブ人との確執などが良く分かる。その上で本作を見ると、描かれている人物や時代背景がくっきりと浮かび上がってく る。

 1948年当時、パレスチナは石油資源を掌握したいイギリスによって武力統治されており、イスラエル建国に向けて多くのユダヤ人がパレスチナに密入国を している。本作はケド マ号という密航船による密航シーンから始まる。パレスチナで出迎えるのはユダヤ人地下組織「イルグン」「シュテルン」「ハガナ」のいずれかと思われ、密航 した人々ははかなくも、イギリス軍との交戦に巻き込まれ、さらには先住民のアラブ人との戦闘への参加を余儀なくされる。
 ドイツナチスにあれ程にまで迫害され、生と死というものに特に敏感であったはずのユダヤ人が、何故あえて戦闘という災禍の中に身を沈めていくのか。さら には、現在もなお武力をもって隣国と争うイスラエルの存在とは何なのか。本作はそのユダヤ人による戦禍の起源を紐解こうとしているのだ。ドイツナチスのよ うな独裁者はもとより、共産主義者をも憎むユダヤ人の根底にあるものが、本作のラストに蕩々と語られる。
 「ユダヤ人は歴史のない民族となった」「ユダヤ人は国から国へと流れ、流浪する」「苦難がユダヤ人を作り、ユダヤ人には苦難しかない」
 痛々しいまでの絶望感と虚脱感に支配されるユダヤ人だが、裏を返せば、永住の地、永遠の歴史を求めて異常なまでに固執しているともとれる。何故ユダヤ人 が世界各地で嫌われたのか、武力に訴えてでもイスラエルに固執するのか、その答えの一端を本作で垣間見ることができる。

 なお、戦闘シーン自体はなかなかリアル。小銃と機関銃程度しか登場しないが、アラブ人との交戦シーンは飛び交う銃弾、倒れ行く戦友など、下手な戦争映画 よりもずっと良くできている。特に、アラブ人家屋への攻撃は、イラク戦争のテロリスト掃討作戦を見ているようで、手に汗握った。

 映画として見た場合、非常に難解で分かりづらいため、評価自体は高くできないが、ユダヤ人、イスラエルというものを理解する上では重要な作品だと言え る。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1948年5月7日(イスラエル建国宣言の7日前)、ケドマ号に乗った ユダヤ人の一行がボートに乗り移り、パレスチナの海岸に密入国する。密入国した一行の中には、初 老のヤヌシュとローザ夫婦?、歌手のメナヘム夫婦などがいた。いずれも家族を強制収容所等で失い、命からがら逃げてきた者ばかりだ。パレスチナはイギリス 軍によって武力統治されており、上陸にあたってはテロ活動を行うユダヤ人地下組織リーダーのムサ、元教師で共産主義のクリバノフ、ミレク、女性戦士のヤル デナらが手引きしていた。
 上陸して間もなくイギリス軍の攻撃を受け、ユダヤ人らは地下組織の案内で分散して移動を開始する。メナヘムはクリバノフの案内で行動するが、途中で土地 を追われて逃げるアラブ人の一行に出会う。彼らはユダヤ人のせいで逃げなければならないと罵る。
 ヤヌシュは一時ローザとはぐれるが、合流して露営テントにたどり着く。地下組織の兵は密入国したユダヤ人たちに銃の取り扱いを教える。クリバノフはコ ミューンのあるキブツへ行こうとメナヘムを誘うが、メナヘムは国のために戦うといって聞かない。
 アラブ人部隊との交戦が始まり、ヤヌシュの脇でエステルが死亡。アラブ人が立てこもる住居の交戦でヤルデナをはじめ多くのユダヤ人が戦死する。ヤヌシュ は累々と転がる死体を見て呆然とする。さらに、メナヘムが狙撃されて重傷を負う。ムサはアラブ人の老夫婦を拘束して、アラブ部隊の根拠地を聞き出そうとす るが、アラブ老人は「我々はここに壁のように留まる」「この地から出て行け」といって叫ぶのみだった。
 負傷者をトラックに積んで、ユダヤ人地下組織が移動する。ヤヌシュは戦闘の意義を見いだせずに混乱し始める。
「ユダヤ人は 歴史のない民族となった」「ユダヤ人は国から国へと流れ、流浪する」「苦難がユダヤ人を作り、ユダヤ人には苦難しかない」と。


(2007/06/26)