戦争映画の一方的評論
 
S.A.S英国特殊部隊(世界最強特殊部隊 S.A.S 第1シリーズ)  
 評価 ★★★☆ S.A.Sレッドチームの命がけミッション

ULTIMATEFORCE
2002 イギリス 監督:トム・グレッグ
出演:ロス・ケンプ、ジェイミー・ドレイヴァン、トニー・カランほか
269分 カラー


 イギリスのテレビドラマシリーズで、DVD版では「S.A.S英国特殊部隊」、スカパーのPPVでは「世界最強特殊部隊S.A.S第1シリーズ」として 放映された。第1シリーズは全5話で第1話「Killing House」が75分、その後の4話は 各50分になっており、DVDは3巻構成となっている。2004年現在第3シリーズまで製作されている。
 S.A.Sとは英軍特殊空挺部隊のことで、その初源は1940年の特殊空挺部隊に始まる。厳しい選抜と訓練に裏付けされた戦闘力により、軍事作戦はもと よりテロや犯罪の際にも出動する。
 本作は、S.A.S(第22部隊?)のレッドチーム(小隊単位)を主人公に数々のミッションを描いていく。第1話「Killing House」、第2話「Break out」、第3話「Natural Sellction」、第4話「The Killing of a One-eyed Bookie」、第5話「Something to do with Justice」。
それぞれが一応一話完結となっているが、隊員の入除隊のからみがあるので、やはり最初から見た方がいい。
 かなり激しいアクションと血なまぐさい映像もあり、S.A.Sの活動ぶりを堪能する事が出来るが、それは僅かなミスさえ許されない極度の緊張と重圧が全 てである。それ故、本作のレッドチームは仲間の死さえ日常と受け止め、異常なほど冷静かつ冷徹な側面を強調している。従って、犯人射殺シーンには情のかけ らは微塵もなく、S.A.Sは殺戮マシーンかといった印象を持つ人もいるかもしれない。また、登場するレッドチームの隊員も容赦なく負傷・死亡していくの で、まったりとアクションを楽しみたい人には心臓に悪いかも知れない。
 一方、冷酷な任務に対しての隊員の葛藤ももちろん描いている。隊員の家族も登場し、ヒューマンドラマ的な要素もないわけではない。女性隊員の存在も一つ の清涼剤になってはいるが、全体のバランスから言ってちょっと微妙。

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

第1話「Killing House」
 S.A.Sのレッドチームに二人の新人隊員アレックスとジェイミーが入隊する。チームの長はドーニー中尉だが、事実上のリーダー、ヘンノ・ガルビー軍曹 以下ジェム・ポイントン、リッキー・マン、サム(アレックスの異母兄弟)、ピートら部下は信用していない。しかし、ヘンノ以下の結束力は何もにも勝る。
 アレックスとジェイミーは手荒い歓迎を受ける。ジェイミーの母の容態が急変し姉がやってくるが、ヘンノは隊の結束のため帰宅を勧めない。しかし、ドー ニー中尉が許可を与えてジェイミーは帰宅する。ジェイミーは義父と確執があり、そこでも言い争いを始めるのだった。その時、銀行強盗犯の立てこもり事件が 発生し、ジェイミーも招集される。ジェイミーがS.A.S隊員であることを信じない義父だったが、自宅にまでやってきたS.A.Sのヘリを見て驚きを隠せ なかった。
 銀行強盗は元警察官ら4人の犯行だった。運転役のミスから人質をとって銀行に籠城する犯人は、逃走用車両を要求する。しかし、警察は車両を用意せず、犯 人は一人を射殺する。ただし、射殺されたのは人質ではなく、ミスを犯した犯人の一人であった。しかし、事態を重く見た政府はS.A.Sの出動を許可する。
 逃亡用車両に身を隠したS.A.S隊員は銀行に突入。次々と犯人を射殺するが、隊員のサムが負傷。ジェイミーはそれを報告してさらに奥に進む。ヘンノは 未成年の犯人の一人を発見するが、未抵抗にも関わらず射殺する。
 サムは死亡。任務の掟とはいえ見捨てて任務を遂行したジェイミーは罪の意識にさいなまれる。一方義理の弟のアレックスは平然と酒を酌み交わしているの だった。理解できないジェイミーだったが、ヘンノはこれがチームのやり方だと言う。除隊を考えるジェイミーだったが、やっぱり隊に戻ってくる。

第2話「Break out」
 英国のある細菌研究所にチェチェン人3人組がセルゲイ・ポリアコフ博士への面会を装って押し入る。研究所は口てい病の研究を装っていたが、実は炭疽菌兵 器の研究を行っていたのだ。ロシアの開発した炭疽菌に対抗してチェチェン勢力も炭疽菌を入手しようとしたのだ。セルゲイ博士とチェチェン人は面識があった が、セルゲイ博士は協力に積極的ではなかった。
  実験室で実験中の炭疽菌が漏れ、犯人の一人が取り残されて死亡する。S.A.Sは炭疽菌を取り戻すために投入される。しかし、犯人は炭疽菌の入った瓶を 持ち歩いており、安易な突入は周辺への汚染を引き起こす。そこで、S.A.S唯一の女性士官キャロラインが医師に化けて内部に潜入する。しかし、外部にス パイがおりキャロラインとともにヘンノまでもが人質となってしまう。犯人に撃たれたヘンノは出血がひどい。S.A.S部隊はやむなく屋上から強行突入。な んとか炭疽菌の瓶を確保し、犯人を射殺するが、アレックスはポリアコフ博士までも射殺する。ジェイミーはその行為に不快感をあらわすのだった。

第3話「Natural Sellction」
 新しくS.A.S隊員になるための最後のサバイバル訓練が行われていた。ヘンノ軍曹が試験官となり、4名単位の候補隊員が訓練場に放たれる。それを落下 傘部隊員が大挙して追いかけるのだ。制限時間内に集合場所に来なければ食事はおあずけ。落下傘部隊に捕まれば拷問が待っている。
 ジェイミーの友人ミックは、ルーク、トレンティらと組んで訓練に参加していた。足を負傷したルークが遅れ始め、姿が見えなくなる。後方から迷彩服の謎の 男がルークを殺害したのだ。続いて、トレンティが川縁で殺される。ヘンノは闖入者がいると知り、ジェイミーらS.A.S隊員を派遣する。その結果、かつて S.A.S隊員になりそこねたビリーが犯人であると判明。ヘンノ、ジェイミーらはビリーを捕獲する。一方、落下傘部隊に捕まったミックは厳しい拷問に耐 え、晴れてS.A.S隊員になるのだった。

第4話「The Killing of a One-eyed Bookie」
 S.A.S隊員はグレイシーという男の警護任務についていた。グレイシーは勤王準軍事家で、英軍諜報部のジャック・コレンの情報により、IRA組織に狙 われていることがわかったのだ。ジェイミーはグレイシーに化けて車で移動中に、警察の検問に化けたIRAに拉致される。後方から追跡していたヘンノとキャ ロラインが応戦するも、ジェイミーは連れ去られてしまう。S.A.S隊員はジェイミーの救出を望むが、行方もわからずジェイミーの命は絶望視された。しか し、命令違反を覚悟で、ヘンノとキャロラインはアイルランドに潜入し、実はIRAと二重スパイのジャック・コレンのもとに向かい、コレンからジェイミーの 居場所を聞き出すのだった。一方ジェイミーは厳しい拷問を受けていたが、IRAの行動が父親の復讐であることを知り、次第に犯人と心を通わせ始めるのだっ た。
 ヘンノはジェイミーの隠れ家に突入し、ピートらも駆けつけてIRA戦士、コレンを射殺し、ジェイミーは救出されたのだった。

第5話「Something to do with Justice」
 第4話の命令違反の角でヘンノとピートが除隊処分を受ける。一方、レッドチームは新リーダーとミックらを迎える。ヘンノとピートは、ヘンノの旧知が経営する人材派遣会社のつてで、ボスニアのセルビア軍の軍事教官として15週間の契約を結ぶ。
 S.A.Sレッドチームはハーグの戦犯グラスノビッチの確保のためやはりボスニアに派遣される。ターゲットの潜む軍事キャンプを偵察したレッドチームは キャンプ内にヘンノとピートの姿を見つける。実は、除隊処分は敵を欺くためであり、二人は潜入調査の任務を負っていたのだ。ヘンノとピートの内偵によりグ ラスノビッチ確保の作戦が決まる。スウェーデンのテレビクルーに化けたジェイミー、キャロラインらが突入してグラスノビッチを確保する。しかし、セルビア 軍女性に対し一瞬ヘンノが躊躇したため、ピートが撃たれる。ジェイミーによってなんとか救出されたものの、ピートは意識不明の重体となった。ピートが重体 ながら、ピートの奥さんらとS.A.S隊員は酒を酌み交わすのだった。それしか気を紛らす方法がないのだ。さらに家族のことを考え、アレックスが除隊する のだった。

(2005/07/01)

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